瀬名

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心地よい琴の音が部屋に響きわたる。我ながら上出来だとほんのりと笑みを浮かべた。
「さすがですわ。瀬名様、お美しい。」 下心丸見えの醜い笑みを浮かべるこの女はどこの家の姫だったかと思考を巡らせる。
「いえ。そんなことは・・・」
十二単の袖で顔をかくしながら答える。
いい加減この意味のない茶会に参加するのも疲れた。女たちの醜い争い、だれが帝の息子の心を射止めるのかという、そんなものに興味は無い。大体私の家はもう安泰なのだ。お父様はもとよりそんじょそこらの貴族が失脚させようとすることのできる身分じゃない。貴族の中でも屈指の名家の長男なのだから、いや今はもう当主か。お母様は神職の出だ。いわゆる陰陽師という類の。その実力は帝のお墨付き。一昔前まで大きな祭事の際は必ず母が占いをしていたそうだ。今はもう引退しているが。そしてたった一人の私の兄上様。妹の私から見ても端正なお顔だちをされている。何よりご聡明なのだ。きっと帝の右腕となる父上の後をもうすぐ継ぐのだろう。だから私は母の後を継ぐと決めている。陰陽師になるのだ。政のために政略結婚などごめんだ。私は自由に生きたい。幸いにも陰陽師としての才能は自分で言うのはどうかと思うががはっきりいうと母にも負けていないと思う。今まで必死に術の組み立てかたに、妖刀の使い方と貴族らしくないことを頑張ってきた。
それにこんな妹を、娘を家族は後押ししてくれるのだから。
「それでは私はこれで・・・」
  無意味な茶会も今日はこれで終わりだ。
あまりにも疲れてしまった。必死に張り付けた笑顔が剥がれるぬよう細心の注意を払い私は茶会の開かれていたその場を後にした。
「はぁーーー。疲れた。」
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