「復讐の相手」

著恋凛

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21話

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「ふぅ」
一度大きく息を吐く。
これは模擬戦、ミスっても死なない。なら、試してみてもいいよな・・・・自分がどこまでできるのかを。
敵が発砲した瞬間、俺は大きな枝をから全力でジャンプして木の陰から出る。空中で敵の位置を確認し、発砲する。敵もほんの0.3秒ほど遅れて引き金を引いた。
身体を思いっきり捻り、銃弾を躱したせいで上手く着地が出来ない。地面に数回バウンドしてから身を起こす。
「いってぇ」
身体を見て、被弾していないか確認する。身体のどこを見ても被弾した形跡がないので、俺はまだ負けてはないのだろう。
そう思った直後、どこからか人造人間が出て、「ランズ負け」と、言い残し、また消えた。
目を凝らし、敵を見てみると眉間が少し赤くなっていた。




戦闘音?がした方に向かって走っている途中、インカムから蓮兎の声が聞こえた。
「勝ちました。これから人の配置などを確認します」
蓮兎が勝って8対7優勢に進んでいるが、この先で戦ってる奴らの結果によっては、また振り出しに戻ることになる。
少し進み、開けた場所に出た。そして、そこには地にしりをつけたアベルとアベルの心臓部分に桜色の装飾が施されている剣を突きつけている敵がいた。
どこからか人造人間が出てきて「アベル負け」といい姿を消した。
「師匠、こいつはヤバいです。逃げた方がいい!」 
見ればわかる、アベルは息切れをしていて、汗も尋常じゃないほど流れているのに対して、敵は汗もかいてない上に息切れすらしていない。
「ハイハイ、死人に口なし。さっさと下山しな」
アベルの手を取り、立たせて背中をポンッと軽く叩く。
ここで逃げてもいいが、空気がそれを許さない。一瞬でも敵に背中を見せたら絶対に殺られる、かと言って背中を見せずに逃げることは不可能。なら、戦う以外の選択肢はない。
「君が前村歩希か・・・DESTROYERSで1番強い禁忌の能力者」
「お、知ってんのか?」
「知ってるも何もあの時の戦闘見てたしね。あと少しだったね。ま、あの時銃弾が手に当たってようが当たってまいが、逃げられてたと思うけど」
普通に会話しているようにみえて、ここにはさっき以上の空気が流れている。一瞬でも気を抜いたら負ける。そんな恐怖で背中に冷や汗がどっと出る。
「んで、お前は誰だよ?」
「俺は888部隊最強と自負しているカノッシュ・ルビンダー」
「じゃ、お前が大将か?」
「違うよ。うちのボスはプライドがバカ高いからね、大将は俺だって聞かないから譲ってやったんだ」
桜色の装飾が施されている剣をこちらに向けてくる。悪魔の能力を使い、呼吸を落ち着かせ、一式と五式を発動させる。
カノッシュが強いのはわかるが、どれだけ強いのかはまだ分からない。1打目を見てそれを確かめる。
見た通り、一撃目は左腰から右肩に一直線に斬ってきた。それをバックステップで避け、反撃をする。
真剣じゃないはずなのに何故か火花が散る。カノッシュは俺の攻撃をあっさり受ける。バケモンだろ?
俺も相当強いと思っているんだけど、たぶん負ける。接近戦はダメか?とりあえず、一度離れることにする。
懐から取り出したグロックをカノッシュに発砲すると同時に後ろに大きく飛ぶ。
あの剣がウザイ、見る限り、カノッシュの武器はあの剣ひとつ。なら、あの武器を壊してしまえばいい。
2本の木々を交互に蹴り、空高く飛ぶ。両手で日本刀の柄を掴む。
あぁ、あの頃以来か両手で柄を掴むのは・・・・・懐かしみながら、俺は身体を捻り、クルクルと回る。
重力に従って落ちていく身体に今出せる力を最大限にだし、カノッシュの頭めがけて刀を振るう。
体重と遠心力がフルに乗ったその一撃をカノッシュはいとも簡単に受け止められた。
ジリジリと音を立てながら震える日本刀、このままじゃ、押し切るどころか押し切られる。案の定押し切られた。もう一度天高く飛んだ俺は意味の無い攻撃をしても無駄なだけなので普通に着地する。
カノッシュに剣を向ける。
「君はやっぱり強いね。だから、俺も本気出しちゃうよ」
「おいおい、マジかよ。今まで本気じゃなかったのか?」
「何言ってんのさ、それは君も同じだろ?」
「まぁな」
「それじゃ、本気出しちゃおうか」
カノッシュがそう言った瞬間、やつが持っていた桜色の装飾が施されている剣を囲むように光の粒子が現れる。徐々に光の粒子は増えていき、完全にやつが持ってる剣を包んだ。そして、光の粒子は一気に吹っ飛びどこかに消えた。
中から出てきたのは日本刀だった。いや、待てよ。あれって・・・・二尺四寸二分、細身で腰反りが高く、刃文は一文字丁字。乱れは八重桜の花びらを置きならべて露をふくませたように美しいその刀は、もしかして菊一文字則宗。真選組一番隊隊長沖田総司が愛用していたと言われる刀だ。
「君が日本刀だったからね、俺も合わせてみたよ。それじゃ、行くよ」
瞬間、俺はオーバーオールを使って集中する。
「それじゃ、第2ラウンドだ」
そうカノッシュが言った瞬間、沖田総司の得意技、三段突きをしてきた。
「・・・ッ!」
やっば!
何とか防いだものの、完全に偶然だ。次来たら100%と言っていいほど防げない。
「クッソ、出し惜しみしてたら負けるな、こりゃ」
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