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35話
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突然、魔法陣が展開され、7色に光るビームが俺らめがけ飛んでくる。
驚きつつも条件反射で奏斗さんを抱えながら避ける。
「なんだあれ?」
ビームを撃ってきたのは夕貴と同い歳ぐらいの少女。俺は夕貴に目を向けると呟くようにしてポツリと言葉を漏らす。
「・・・魔術師ね」
「魔術師!?って、なんだ?」
「魔法を使って戦闘する人の事よ!」
「魔法って・・・ホントにあったのか・・・てか、敵意剥き出しだな」
敵からはさっきが見るからに溢れ出ている。
「2人を抱えて戦うのは無理そうね・・・」
「こっち!」
俺らがどう逃げるか考えていると廃ビルから響く1つの声。そちらを向くと19歳ぐらいの女の人がいた。手招きをしているあたり、着いてこいということだろう。
俺と夕貴は数秒見つめ合い、頷く。そして彼女の方に走り出す。
更地にただずむ廃ビルの角を何度も曲がるが、未だに魔術師は追いかけてくる。
「もう無理ね・・・・戦うしかない」
「・・・・そうだな。悪いがこの人たちを匿ってくれないか?」
アメリカ英語で誘導してくれている少女に言うと「OK」と、返された。そこから推測するにここはまだアメリカなのだろう。
奏斗さんとエマを少女に任せ、俺と夕貴は少し開けた場所に出る。着いてきた魔術師と対面する。
剣を抜き、剣を握る左手に力を込める。その瞬間、ほんの少しだけ頭痛がした。だが、一瞬で治まり、特に身体に異常はない。・・・・でも、夕貴は違う。
頭を抱えながら膝をおり、地面に崩れ落ちた。
「夕貴!?」
数秒間、俺が夕貴に話しかけるが帰ってくるのは唸り声。そして、その唸り声がすっと止んで、夕貴が立つのを確認し、胸をほっと撫で下ろすのもつかの間、本来仲間である俺に夕貴は殴りかかってきた。
視界の端に動く者を理解した俺は直ぐに避ける。
「夕貴どうした?」
殴り掛かる夕貴の攻撃を躱しつつ、そう問いかけるが言葉は帰ってこない。
夕貴の目からは生気が失われていて、まるで死体を相手にしているかのような感覚だ。
「おい!お前、何をした?」
声を張り上げ、魔術師に問う。
「ハハッ、ただ禁忌の能力者2人相手にするのはちょっと骨が折れるからね。少し洗脳しただけさ。てか、あの魔術をいとも簡単に破壊するとは流石としか言えない」
魔術が能力に似ているのなら洗脳ができても不思議ではない。
クソが!夕貴を殺すことは出来ない。俺が本気で1発殴れば、骨が砕かれ、内蔵が傷つき死ぬだろう。と言っても手加減すればワンチャン俺が殺される事もある。
「・・・っく!マジかよ・・・・それは笑えないぞ」
飛んでくるビームを躱しながらそう言う。
夕貴の攻撃を捌きながら魔術師の攻撃も避けるのか・・・・無理ゲーだろ。
そう思いながらも避けながらも俺は戦う・・・いや、これは一方的な攻撃か。
夕貴の右ストレートを躱し、どこからともなく魔法陣が現れ、そこから放たれるビームも躱す。
防戦一方・・・・今以上にその言葉が似合う場面はないだろう。
そんな中、1つの声が反響する。
「危ない!」
その言葉は日本語で、え?、と思っていたら世界が反転した。
誰かに押し倒されたのだろうか?
俺の頭上にビームが通過する。助かった・・・いや、まじで!
「悪魔の能力者、前村歩希・・・お前はどうしてTHSの誘いを断った?」
俺を押し倒したであろう男が日本語でそんな事を言う。太陽とその男が重なり、すごく神々しく見える。でも、その男が着ている防弾チョッキの右腰の辺りに小さくTHSとプリントされていることだけは見えた。
「てかさ、あんた誰?」
俺の名前を知っていて、日本人。その上THSの隊員となると、和志さんぐらいしか知らない。
「俺か?・・・そういや、自己紹介してなかったな。・・・・俺の名前は波崎寛多。THSのファーストクラスだ」
ファーストクラスってのは分からないが、その前の言葉に俺は冷や汗がドバドバ出る。
「・・・あそこで洗脳されてる夕貴の兄だ」
・・・・・歩希は考えるのを放棄した。とはいかない。
マジで!?マジで夕貴のお兄さん?なんで?俺最初は夕貴には家族がもう居ないと思ってたよ!
「まままままままじっすか?」
「うん」
マジだーーーー。俺の粗相は夕貴経由で伝わってないよな?待って?俺は夕貴に粗相なんてしていない・・・・いや、対能力者撲滅局に入ったばっかの時に先輩と快知の4人で風呂覗いだわ・・・・詰んだ。殺される・・・いや、待てよ。俺は悪魔の能力者。一般人に殺される程度の雑魚じゃない!
そう思いながら、もう1度ゆっくりと寛多さんの顔を見る。
ダメだーーー!顔が怖い。ヤクザ顔負けだよこれは!それになんかオーラ出てるよ。圧倒的強者のオーラ。絶対に俺より強い!
とりあえず・・・・
「すみませんでしたああああああああぁぁぁ」
土下座をする。
「え?え?」
戸惑う様子を見せる寛多さん。これはもしやセーフ?
「ま、なんでもいい。今はこいつらに勝つぞ。てか、夕貴はやっぱり精神力が弱いな・・・・俺は魔術師のハンニ・ナンカーを相手する。前村歩希、お前は夕貴の意識を失ったら、こちらに加勢しろ」
「了解っす」
そして俺は心強い仲間が出来た。
驚きつつも条件反射で奏斗さんを抱えながら避ける。
「なんだあれ?」
ビームを撃ってきたのは夕貴と同い歳ぐらいの少女。俺は夕貴に目を向けると呟くようにしてポツリと言葉を漏らす。
「・・・魔術師ね」
「魔術師!?って、なんだ?」
「魔法を使って戦闘する人の事よ!」
「魔法って・・・ホントにあったのか・・・てか、敵意剥き出しだな」
敵からはさっきが見るからに溢れ出ている。
「2人を抱えて戦うのは無理そうね・・・」
「こっち!」
俺らがどう逃げるか考えていると廃ビルから響く1つの声。そちらを向くと19歳ぐらいの女の人がいた。手招きをしているあたり、着いてこいということだろう。
俺と夕貴は数秒見つめ合い、頷く。そして彼女の方に走り出す。
更地にただずむ廃ビルの角を何度も曲がるが、未だに魔術師は追いかけてくる。
「もう無理ね・・・・戦うしかない」
「・・・・そうだな。悪いがこの人たちを匿ってくれないか?」
アメリカ英語で誘導してくれている少女に言うと「OK」と、返された。そこから推測するにここはまだアメリカなのだろう。
奏斗さんとエマを少女に任せ、俺と夕貴は少し開けた場所に出る。着いてきた魔術師と対面する。
剣を抜き、剣を握る左手に力を込める。その瞬間、ほんの少しだけ頭痛がした。だが、一瞬で治まり、特に身体に異常はない。・・・・でも、夕貴は違う。
頭を抱えながら膝をおり、地面に崩れ落ちた。
「夕貴!?」
数秒間、俺が夕貴に話しかけるが帰ってくるのは唸り声。そして、その唸り声がすっと止んで、夕貴が立つのを確認し、胸をほっと撫で下ろすのもつかの間、本来仲間である俺に夕貴は殴りかかってきた。
視界の端に動く者を理解した俺は直ぐに避ける。
「夕貴どうした?」
殴り掛かる夕貴の攻撃を躱しつつ、そう問いかけるが言葉は帰ってこない。
夕貴の目からは生気が失われていて、まるで死体を相手にしているかのような感覚だ。
「おい!お前、何をした?」
声を張り上げ、魔術師に問う。
「ハハッ、ただ禁忌の能力者2人相手にするのはちょっと骨が折れるからね。少し洗脳しただけさ。てか、あの魔術をいとも簡単に破壊するとは流石としか言えない」
魔術が能力に似ているのなら洗脳ができても不思議ではない。
クソが!夕貴を殺すことは出来ない。俺が本気で1発殴れば、骨が砕かれ、内蔵が傷つき死ぬだろう。と言っても手加減すればワンチャン俺が殺される事もある。
「・・・っく!マジかよ・・・・それは笑えないぞ」
飛んでくるビームを躱しながらそう言う。
夕貴の攻撃を捌きながら魔術師の攻撃も避けるのか・・・・無理ゲーだろ。
そう思いながらも避けながらも俺は戦う・・・いや、これは一方的な攻撃か。
夕貴の右ストレートを躱し、どこからともなく魔法陣が現れ、そこから放たれるビームも躱す。
防戦一方・・・・今以上にその言葉が似合う場面はないだろう。
そんな中、1つの声が反響する。
「危ない!」
その言葉は日本語で、え?、と思っていたら世界が反転した。
誰かに押し倒されたのだろうか?
俺の頭上にビームが通過する。助かった・・・いや、まじで!
「悪魔の能力者、前村歩希・・・お前はどうしてTHSの誘いを断った?」
俺を押し倒したであろう男が日本語でそんな事を言う。太陽とその男が重なり、すごく神々しく見える。でも、その男が着ている防弾チョッキの右腰の辺りに小さくTHSとプリントされていることだけは見えた。
「てかさ、あんた誰?」
俺の名前を知っていて、日本人。その上THSの隊員となると、和志さんぐらいしか知らない。
「俺か?・・・そういや、自己紹介してなかったな。・・・・俺の名前は波崎寛多。THSのファーストクラスだ」
ファーストクラスってのは分からないが、その前の言葉に俺は冷や汗がドバドバ出る。
「・・・あそこで洗脳されてる夕貴の兄だ」
・・・・・歩希は考えるのを放棄した。とはいかない。
マジで!?マジで夕貴のお兄さん?なんで?俺最初は夕貴には家族がもう居ないと思ってたよ!
「まままままままじっすか?」
「うん」
マジだーーーー。俺の粗相は夕貴経由で伝わってないよな?待って?俺は夕貴に粗相なんてしていない・・・・いや、対能力者撲滅局に入ったばっかの時に先輩と快知の4人で風呂覗いだわ・・・・詰んだ。殺される・・・いや、待てよ。俺は悪魔の能力者。一般人に殺される程度の雑魚じゃない!
そう思いながら、もう1度ゆっくりと寛多さんの顔を見る。
ダメだーーー!顔が怖い。ヤクザ顔負けだよこれは!それになんかオーラ出てるよ。圧倒的強者のオーラ。絶対に俺より強い!
とりあえず・・・・
「すみませんでしたああああああああぁぁぁ」
土下座をする。
「え?え?」
戸惑う様子を見せる寛多さん。これはもしやセーフ?
「ま、なんでもいい。今はこいつらに勝つぞ。てか、夕貴はやっぱり精神力が弱いな・・・・俺は魔術師のハンニ・ナンカーを相手する。前村歩希、お前は夕貴の意識を失ったら、こちらに加勢しろ」
「了解っす」
そして俺は心強い仲間が出来た。
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