あのときは泣きたかった。

さとなか達也

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エピソード1。

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 あのときは泣きたかった。
                 さとなか 達也





 山口康太、現在5年生。
 北海道、足賀田地区。
 6月、北海道。

 「プワワー。」
  船が港に着く。
 「おはよう。」
 アパートの一室の朝が始まる。
 「おはよう、康太。」
 「父さん、もう出たの?」
 「足賀田の土産がないからね。」
 「さすが、康太。」
 「朝ごはんの前に少し、身体を整える精神統一の6対4の割合か。」
 「もう、2分30秒前よ。」
 「だから起きたんだよ、母さん。」
 「やっと、身体が動いてきたんだ。」
 「それは起きてから?それとも6月になってから?」
 「両方だよ。」
 
 母と康太の朝はこんな感じだった。無論、そんなにも裕福な家庭ではないけれど、それなりに楽しい母親だったし、父親は1月半に一度は関東に出向に行くし、全く意味のわからない家族・・。それが康太の生活だった。

 「では、いただきます。」
 「ヘルシーだねえ。」
 「野菜は多めと言うのよ。」
 「全く、彼女ができたら大変だわ。野菜を多くするのに、ヘルシーだなんて、笑いを起こそうとするなんて、朝から新しい旦那相手にしてるみたいよ。」
 だから、俺の母親なのだ。

 俺はこの時、既に、初恋の幼馴染みと別れを告げていた。だから、連絡をくれる春の日が涼しい夏を過ごす俺にとって、まさに至福だった。ぶっちゃけ、なんて今は言うのだけれど、少し暑くなる彼女との、野球遊びや、思い出はきつくなるこの夏の前に感じる、″初恋″だ。

 山口康太は野球好き、現在はリトル北海道ホエールズに所属する、中学生並みの体力を持つ、今は北海道足賀田のエースだ。康太は硬式野球のチームに所属していて、チームの信頼も厚い。これは真面目な話で、本当に康太は、その″初恋″の相手と結ばれるよう願って、何とか、中学生になって、北海道ホエールズの投手で、プロ野球に入りたかった。いや、彼女との約束を果たしたいのではない。ただ、約束を果たしているだけなのだ。だから、俺は生活と野球を全く別々にしたわけでもないし、それだけの数の仲間がいた。
 別に幻でもない。ただ、その約束の一本上の道で現在が起きている・・そんな感覚だったのだ。

 別に野球ばかになりたいとか保持したいわけでもないけど、でも、きっと野球が自分の道だと思っていた。
 北海道に白雪が降ってくるのと同じように・・。こういえばもっと具体性があって聞きやすいのだろう・・。
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