あのときは泣きたかった。

さとなか達也

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エピソード18

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「はい。左でも打つようになって、ショートからの遠投が早くなりました・・。これはすごい発見です。」

「そうだな・・。確かにホリーは内野手だけではなく、スイッチの投手としてもできるかもしれない・・。しかし、5年生のプレーにしては中々良かった・・。それが、表に出るかはまだわからないが・・。」

「ただ、私はこうして、春を過ぎても、桜が散っても、チームの勝利を望んでくれる選手がいてありがたいよ。」

 監督は言った。
「さて、まだ、身体が冷えきっていないうちに、整理運動だ。」
「そして、うちに帰ろう。」
「ただいま。」

 山口は自宅に帰った。もちろん、応援の母も一緒だ・・。

「ああ、康太・・。おかえり。夕食は作っておいたから・・この時期野菜高いんだよなあ・・。」

「年中野菜料理もちょっと嫌だけどね。」

「何言ってるんだ、康太・・。野菜料理は・・野菜料理は、男のやさしい料理だ。」

「炒めるのが簡単なだけでしょ・・。」母は少し笑って言った。

「風呂沸かしておいたぞ。全く、月一回は康太を北海道の温泉施設に入るようにって、監督、監督しかしてないんじゃないの?」
 父親はせっかくの休日だが家のことで忙しかったらしい・・。
「まあ、こうして一室で食べられるだけいいでしょ・・。友達と一緒に食事するのはこのチームでは禁止だから。」
「康太もそのうち、家の食事が野菜炒めになるぞ・・そりゃ、高めが好きなんだからな。同級生からヒットが出ないんだから・・。たんぱくと言うのは様々な種類がある。補給する者。貯めておくもの。身体にとどめる物・・日曜の夜は、肉と親父の優しい、野菜料理と・・風呂だな。風呂だ・・・・。」
「あなた、それ一般的よ。」

「じゃあ、俺は少し寝とくわ。洗濯物乾いて、買い物もしておいた。1週間分、家計簿にも付けておいたから・・ああ、10時まで寝てたのにまた疲れてきちゃったよ。」

「お疲れ、父さん。じゃあ、俺汗流すから。」

「ああ。お疲れさん。」
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