あのときは泣きたかった。

エピソード61

　「陸上は心のままに。」
　「ありがと、ホリー。」
　「さっ帰ろう。」
　「ありがとうございました。監督。」
　「これも選手の結束の一つのいい機会だ。せっかくの機会でこっちがありがとと言いたいよ。」
　「後一年、北海道の走者として野球を頼むぞ。」
　「わかりました。頑張ります。」
　ユニホームというのは、大抵掛け持っているスポーツの話をすると、なぜかそのユニホームに見えてしまうものだ・・。
　北の大地の可能性はまだまだある。堀も、山口も、遠藤も・・。
　チームをまとめ上げるのに上川の加入も大きい・・。今はまだスポーツというのを知ってもらう。結果を残して注目されるのは高校に入るその前段階の中学までの指導だ。確かに冬の間、外でプレーできないのはもったいない環境ではあるが、小学生は教育外活動だ。別にアイドルなんかじゃない・・。都会などでは汗をかいてもらうためにも、こうして、掛け持ちの選手を見せたのはよかった・・。
　しかし、まあいい感じに刺激を受けるとは・・。スポーツは垣根を超えるというのは、中学生になると強くなるものだと思った・・。選手達は今度背番号何になるのだろうと言っていたが、私にはどうも陸上のユニホームと野球とでは全く違うと思えざる負えなかった。それもまた古い考えなのかもしれないけれど・・。でもこうして、野球が好きで後輩の力になる選手はそうはいない・・。

　心の中でしっかり指導しなければ。指導はまず気持ちのたてものを建ててからが肝心である。

　昔からのスタンスを変えない。いや、変えることはない・・。指導法や道具が新しくなっても、心は一緒でなければフェアな指導は行き過ぎてしまうのだ・・。

　まずは、野球を好きになってもらわないと・・。本当の意味で・・。

　監督は思っていた。