あのときは泣きたかった。

エピソード139

「ワンアウトー。」

季節も野球シーズン、年代の入れ代わりがあるが、選手同士、春までの努力を気にする季節だ..。

そんなとき、不思議と雨が降ってくる..。

「あー、2ミリ超えたか..。」

北し羅監督は雨空を見ながら言う。

「遠藤は上がってくれ。」

新監督の掛け持ち選手への天候的配慮だ..。

今月で、もう二回目..。

「では、お先に失礼します。」

遠藤は去る..。


「あの人、二年まで続けるって言うから無理してんじゃないの?」

「いや、陸上的な運動との兼ね合いで、道内の選手だ..。」

「気温の上がり下がりで彼女のタイプからして、野球との掛け持ちが一番、結果を残し、そのあとへ続く人生に繋げる、９人のスポーツを選んだと言うわけだ..。」
「さすが、恋する相手のことを話すと、違うな..言葉の芸術性溢れる中学生..。」
「ホリー、雨空悲しいな。」
「..山口、最速を出してから言うな..。」
「思いが重なってしまうだろ..。」
「それが野球だよ。堀。」

「あー、よく気持ちがわかる..何でもプラスマイナスに例える天才ピッチャー君の最高であり、最低の癖..。」


「ボールが決める試合に14歳の女子選手..。」

「俺の遠藤さんのイメージはそうだ..別にホリーとは重なっていない..。」

(挑発..ではないな..。)

「よし、ホリー、ショートの位置についてくれ。」
休憩後、北し羅監督が言う。
「はい。」

「しまってこー。」
ショートに入ってグランド全体に声を出すホリー。さすが、一年生、先輩への顔入れも抜け目がない..。
 

..あーあ、今月に入って二度目の雨か..。
山口は少しむなしくなっていた..。