あのときは泣きたかった。

エピソード144

　６月末、陸上競技場..。道内大会..。

「いや、いいね。皆、軽そうなユニホーム、俺たちも今日はユニホームじゃないし、気が楽だわ..。」

「逆からすれば意外なものだ..。」

「また、ホリー。いいじゃないか、大事な先輩だぜ。チ.ー.ム.にとって。」
「知ってますよ。」

「短距離は最初だからな..。」

「藤岡先輩..。」


「それで、いいのかホリー、自由席で..。」
「学生の陸上競技場に指定席はありません..。」

「表情を変えて欲しかったな。」

「さてと..。」
「山口、ストップウｵッチ..。」


「一応ね、練習だと思って..。やっぱり、ただ見て帰るのももったいないじゃない?陸上にコンバートしたホエールズの皆も出場してるし..。」

この人はきっとどうでもいいと思っている..。←ホリー。

「まっ、野球帽持ってきてないからいっか..。」

「藤岡先輩..。」

「本当は持ってきたかったんだよね..。」
「先輩..。」

 大抵冷やかしが入るはずだが..ん?

 山口はホリーを見つめる..。
「やっぱり、藤岡先輩も思いを..。」
「嫌なこと言うなよチームメートだろ..。」

「男女だって９人でやるのが野球じゃないか。」
「なっ、山口。」
「棒高跳びの走るペースと中距離のタイム、今のところデータ上比例..。」

「すると..注目選手はあの人とあの人だ..。」
「康太話を聞いてるのか。」

「すいません、えっと、二人が恋をして陸上競技場に見に来ると言う厳しい理由の話でしたっけ..。」

「さっ、見ごろだ..。」

「ホリー、先輩を花に例えるな..。」

「花は渡すものだ。」

..。
(こういうときまともなことを言うな)←ホリー。
 
「先輩、違いますよ。」

ホリーは言った。

「おっ。」
ストップウォッチを止める山口。

「座っている場所が特別席なんです。」
ホリーは言った。

「おー。」
山口にもこれは驚いた..。
「いいねえ。背番号から離れられるその気持ち..。」
藤岡は言った..。


「さすが、一年のリーダーだ..。」
「あの皆さん、遠藤先輩のことばかり見つめていますけど、掲示板見えます？」
「100メートル、15分前ですけど。」
「さっ、堀君、見逃さないためにも、トイレ休憩といこう。」

「わかりました..。」

(せっかく、掲示板出てるんだからちゃんと見ろよ。)

「全く..。」


..はあ。こんな直接的環境の恋愛って、何て面倒なんだ..。グランドで違う顔をするなんて..さすがだねえ。

..なあ、真琴ちゃん..。
バックの中に入っている帽子を見る山口..。