元手大地震~首都災害に大学生が歌い、支え、立ち向かう。~

さとなか達也

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エピソード67

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 証は上手くやっているのだろうか..。

 初孝志は思っていた..。




「それでは、最後のライブを行います..。復興のため、学校を去るのは寂しいですが、それも命のためです..。」

「その皆さんのために聞いてください..。」

 この3人組のライブはネット上で話題を呼び、去る学生や、教授が、取材に答えていた..。

「この震災で10日も、ここにいれたのは、学内一のこのバンドがあったからです..。」

「私もね、災害の時に歌を聞いて励まさせられるとね、聞いてはいたけど、同じ曲で勝負できるっていうのは現代でも珍しいんじゃないかな..。今は、ネットで広がってるんでしょ。」

「..本当に、『親からもらったその命』という歌詞は災害だけじゃない..多くの意味があって、歌ってくれると思うんです..。」

「いやあ、彼らはプロじゃないのにすごいねえ..。」


歌が終わる..。

「ありがとうございます。復興した東京で、また歌いたいと思います..。皆さん、お元気で。」
 
「朝のニュース?」
 彼らのライブは共感を呼んだ..。


「事務次官、息子さん、避難所を去る前に、見事ライブ、成功させたそうです。」

「そうか、それであれば、今後はその映像で十分だな..。別に生で歌う必要はない..。」


「事務次官の息子だから歌う必要もなければ、親が事務次官だからと言って歌う必要もない..。」

「そんなバンドなんだろ。」
「さすが、親御さんだけあって..。」
「そんなやつだと思ってたよ、一年からイタリアに音楽を勉強させてくれって、どうして、経済学部が、音楽で留学するんだよ、意味がわからん最近のやつは..。」

「それも連れがな、俺の連れが音楽歌手だったのも影響してるのだけれどな..。」


「今じゃ、それも歴史の一つ..。」

「さっ、俺も連れの実家に電話するから、頼むよ、副次官..。」

「お疲れ様です..。実はうちの子も、その歌に感動したと..。」
「感涙じゃなくてよかったよ..やはり、今の若者文化は間違ってはいない..。」


 部屋を去る初孝志..。


「ああ、俺です、孝志です。」
「ああ、孝志君、今、証から向かうのに、連絡があった..。正江も、合流したらしい..。」
「はい、家を離れるのは、どうにもできませんが..。色々あるし..でも仕方ないと思っています..。」

「息子と妻を頼みます。」

 
「わかった。そっちも気をつけて..。」

「はい、すいません、これまで、部下の連絡のみで..。」

「いや、離れられない事情の人だっている..私はそう思うよ、孝志君。」

「気を使っていただきありがとうございます..。」

(確かにその通りだな..。)
改めて、義の父からそういう言葉をもらい、何かが変わった気がした..。
多くの人が安全に避難できるように..。
公では確約するようで言えないが本気でそう思った..。

「お疲れ様。」

 そう声を掛けたのは、孝志の部下、木野だった..。

「取りあえず、復興する前の学校で3人で撮ろう..。」

「そんな、ライブの映像で十分ですよ..。」

「若いなあ、それとこれとは違うんだよ..証くん..。」

「名前の通り、何でもかんでも証にするのはストレスがたまって..。」
「学内一のバンドとは思えないな。」
「はいっ、チーズ。」

 写真を3人組で撮った..。
 震災から10日が経過していた..。


 明日から天気もぐずつく..。





 3年後..。


「初事務次官、退職ですか?」
「ああ。息子の大学からな、まっ一応のところ母校なのだけど、教授を任されることになってね..。一年半前、条南大学、東京キャンパスが建て直されることになった..。その頃から、我々管理的立場にある同僚が大学で学生に授業を相次いで来てくれと、言われてね..。もちろん、震災の影響で、東京の大学生を目指す学生が少なくなってね、話題作りということはわかってはいたんだけど..。」
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