89歳のワシが若返って、男とフラグを立てる話

あきら

文字の大きさ
27 / 43
笹川縁

オレ様キャラの化身でもあろうか

しおりを挟む
 『…目が覚めたか、岡坂。まさか、奈良漬けであそこまで酔うなんてな。お前と言う奴は、本当に面白い男…』

 …誰かが、ワシのことを見守っておるわい。だから、面白いと言う奴の方がよっぽど面白い男だと言うておろうが。この顔は、かつてワシに告白してきおった男…ではなく…。
 「笹川、縁!?」
 「そうだよ。やっと、お目覚めかい。あの後歌うわ踊るわ、気失うわで大変だったんだぜ」
 そうか。笹川が、ここに連れて介抱してくれたのか。見かけによらず、根が優しいんじゃな…。と、言いたい所じゃが…。
 「なんで、その連れ込む先がいわゆる一つのラブホなんじゃーい!ほ、他になかったのか」
 こんな所、女房とも入った事はないぞい!ちなみに豆知識ながら、最近では風営法の改正とやらで回転するベッドは備え付けておらぬそうじゃな。
 「何でって、まぁ慣れてたから。ここ、フロント無人だしさ。ハヤテちゃんだって、えらく気に入ってたじゃん。備え付けのカラオケで、どどいつ熱唱してさ」
 「ハヤテちゃんって言うな。そしてもう聞きたくもないが、何で裸なんじゃい…?」
 「着てた服が、汚れちまったからだろ?詳しく、経緯を聞きたいか?今、洗濯機で洗って乾かしてっから」
 うぅ。我が人生における、最大の汚点じゃ。ってかこれ男同士がどうこう言う以前に、年齢制限とか大丈夫かの…?ワシの方が89歳であるゆえ、セーフではあろうか。
 「ハヤテちゃん?気分が落ち着いたら、一緒に風呂入らねぇ?綺麗だぜ。ライトが七色に光ってさ」
 はいはい。もう本当に、ご自由にしてくれい。しかし、気を失っている間にひとつ思い出したことがあったぞい。かつて、ワシに告白してきおった男…。先ほどの、夢に出てきた奴じゃな。奴は…若くして、亡くなったのじゃ。ある大雨の日、増水した川に呑まれてな。
 自分から、身を投げたものであろうか…。他ならぬワシに、想いを拒絶されての。ワシは罪悪感から、彼の存在を含めずっと記憶に蓋をしておったのじゃな…。こないだ岩本空くんの遺影を見たあたりから、うすうす思い出してはおったよ。
 「ハヤテちゃん?まだ、気分悪いのか?何で、泣いてるんだ?」
 笹川が問うてきた。そうか、気づかなんだがワシは今泣いておるのか。男が泣いていいのは、人生で3度。生まれた時と、母が死んだ時。そして、自分自身が亡くなる時。そんな言葉を、四角四面に受け止めておった訳でもないが…。
 もっともっと、泣いておけば良かったのかのう。妻が死んだ時、選手生命を絶たれた時。そして、かの男が川に身を呑まれた時…。考えていると、自分でもとめどなく涙が頬を流れるのが分かった。
 「ハヤテちゃん…颯。もう、泣くなって。お前が泣いてたら」
 言うて、笹川がワシに唇を重ねてきた。次いで、舌をば侵入させワシの舌に絡めてくる。いつもなら抵抗の一つもしようが、今日はなぜか身を任せているのが心地よいわい…。
 「…オレまで、悲しくなるから。ハヤテちゃんは、笑ってる顔が一番可愛いよ」
 これまた、『殺し文句』とでも言うのかこっ恥ずかしい台詞を臆面もなく口にしおったわい。まぁ、いいかのう。こやつが口にするのは、似合っておるし。それに、こやつの言葉を聞いておるとなぜか心が落ち着いてくるぞい…。
 そう思ってしばらく舌を絡めあっておると、突然奴の手がワシの身体中をまさぐってきたぞい。
 「ちょっと、待たんかい!なんじゃい、この手は。妙なことをしでかしおったら、巴投げにて一階の地面まで叩きつけてやるからの」
 「どうせなら、寝技の方がかけられてぇけどな。まぁ、いいじやん。せっかくラブホに来たんだら、ヤることヤろーぜ。時間なら、心配しなくていいよ。一泊で部屋取ってるから」
 「ワシの貞操をこそ、心配するわい!…う、うぅ。仕方ないのぉ。キッスまでじゃぞ。それ以上の事をしおったら、目にもの見せてくれるでの」
 何だかんだ、ここまで連れてきて介抱してくれた恩義と言うものがあるでの。それにトオイとこやつをくっつける目的のため、媚を売っておくに越した事はないわい。
 そう思っとったら、何やらワシの首筋に唇を当てこれでもかとばかりに吸ってきおった。
 「ひゃぅっ!?ど、どこを吸っとるんじゃい!」
 「いいじゃん。キスまでなら、どこにしても自由なんでしょ。ハヤテちゃんの身体中に、オレのもんだって印つけとくから」
 あっ。これも、BL漫画の台詞で見た所じゃぞい!何じゃい。こいつは、BLに登場するオレ様キャラの化身でもあろうか…?ワシが黙ったのをいい事に、宣言どおり身体中に印をつけてきおる。この苦行、いったいいつまで続くんじゃ…?

 そして、我が人生で初めての無断外泊じゃ。伊勢嶋の人々、心配しておらんかのう…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

処理中です...