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『男らしい』って本当にいい事かなぁ

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 突然だけど、みなさんは学校のプール授業での着替えの時ってどうしてたかな?…ってまぁ、この作品読んでる人はたいがい女性だろうけど。ごめんね、藪から棒に。
 いや大した事じゃなくて、新しい学校でプール授業が始まったんだけど。これでもかって程、隠しながら着替える奴らがいるんだよね。これは、東京の学校の時でも同じ。もう六年生なんで、流石に男女別々の教室で着替えてはいるよ。
 バスタオルを腰に固ーく巻いて、その中で履き替える奴とか。中には、全身が隠せるタイプのタオルでてるてる坊主みたいになってる野郎とか。気持ちは分かるけど、その格好の方が恥ずかしいとは思わないのかね。
 え?雪兎?全身ガッツリ隠して、てるてる坊主になってました…。何でなんでしょうね。彼氏に乳首開発されて、人様に見せられなくなった訳でもあるまいに。
 おれは今更、隠す物なんざ何もねぇよ。サッカーの練習でも試合でも、しょっちゅう人前で着替えてたしね。試合会場によっちゃ、更衣室がないんでグラウンドで着替えたりとか。
 雪兎が自分の手で目を塞ぎながら「大胆だね、あお君…///」とか言って来たんだけど、指と指の隙間からバッチリ見てやがったな。って、いやごめん。それだけの話だよ。

 みなさん、こんにちは。一ノ瀬蒼、12歳ホモだよ。すでに、学校は夏休みになっちゃった。
 いつか雪兎から言われた通り、伊勢嶋家の旅行に誘われたんだ。向かう先は、茅ヶ崎の海水浴場だよ。やっぱり、海と言えば太平洋だよね。
 いや。海開き前の日本海が極寒だったからって、決してディスってる訳じゃないんだ。でも、向こう10年ほどは行く気がしないかな。母さんも、とっくの昔に新しいご主人の所へ引っ越しているし。しばらく…一生かなぁ。新潟の地を、踏む事はなさそう。
 院長の俊樹さんはお仕事で多忙のため、不参加。そのため群馬からは、沙都子さんの運転するミニバンで出発したよ。ちなみに、三男の楓さんは塾の夏期講習につきやっぱり不参加。弟の水着姿をが拝めなかったと、血の涙を流して悲しんでました。人生もっと泣くべき事は、他に山ほどあると思うんだ。
 逆に次男の蛍さんは、ショタ達の水着姿が今から楽しみで仕方ないんだそうで。さっきああ言ったばかりだけど、ちょっと前言撤回するわ。この人の前でだけは、着替えたくないなぁって話。今のうちに、群馬県警だか神奈川県警に身柄を引き渡しといた方がいいかも知んない。
 ミニバンは8人乗りなので、トオイと梢も一緒だよ。それと東京にて、長男の桜さんが合流した。
 どうでもいいけど今回、めちゃくちゃ登場人物多いね。今まで名前が出た人物は、うちの母さん含めて総出演かな?そろそろ、展開に巻きが入っているのかもね。
 どうでもいいついでに、出発時点から気になってたんだけど…。

 ♪森の中の道を抜けて茅ヶ崎へ♪
 ♪ハンドル引いて車は走る夏の道を♪
 ♪森の中の道を抜けて茅ヶ崎へ♪
 ♪ハンドル引いて車は走る夏の道を♪

 これ、車に乗った人物が梢たち含めて全員が合唱してるんだよね。桜兄さんが合流してからは、もちろん彼も一緒にだよ。何これ、群馬に代々伝わる有名な唱歌とかなの?何で同じパートばかり、延々と繰り返してるの?って言うか、サビしか存在しないのこの曲?
 単純な曲調と歌詞なのですぐに覚えられたが、言った通りおれは超のつく音痴だ。この場に生成された「和」をかき乱して、果たして許されるものやら。ここは狸寝入りで、ただただ時間が過ぎるのを待つとしよう。
 そんなこんなで、茅ヶ崎までの道中がかれこれ2時間強。エンドレスリピートで同じ歌を聞き続けて、軽く脳がやられそうだ。こいつら地元の名士ってのは世を忍ぶ仮の姿で、実は邪教を崇拝する一族とかそんなんじゃないだろうな?

 ♪森の中の道を抜けて茅ヶ崎へ♪

 それでも何とか、車は目的地に着いて…。これから一泊する旅館で、足を伸ばす事が出来たよ。あと小一時間ほど聞き続けていたら、いよいよ精神がヤバかったかも知れない。ふぅ、何とか致命傷で済んだぜ。
 おれたちは、小学生四人で一部屋だ。荷物を置く間も惜しんで、水着に着替えたよ。せっかく海に来たんだから、海に行かなきゃな!
 雪兎の野郎、こんな所でもてるてる坊主になってやがる。顔見知りの連中だけで集まってんだから、気にする必要ないと思うんだけどな。ちなみに低学年の梢は当然として、トオイくん意外と恥ずかしがらないのね。乙女みたいな顔しといて、けっこう大胆だわ…!
 全員が着替えたので、早速ビーチに…!と思いきや、雪兎が何やら中腰になって歩けない様子。なので、年下の二人を先に行かせて少し部屋で落ち着く事にした。おれも早く泳ぎたかったが、そんなわがままばかりは言ってられない。一体、どうしたと言うんだろう雪兎。長旅でお腹の調子でも、悪くなったのかな?
 「大好きなチンコを一度に三本も拝んで、勃起が収まらなくなったのかな?」
 「言い方ぁ!ってか、心の声と発言が逆だからね!?うぅ。でも、恥ずかしながらその通りです。あお君って、プール授業の時も恥ずかしがらずに着替えてたよね。いいなぁ、男らしいなぁ」
 「男らしいかどうかは、知らんけど。それに最近、『男らしい』って本当にいい事かなぁ?って、よく考えるんだ」
 「そう言うものかな?ぼくは単純に、いいと思うけどね。そうだ。ぼくも自分の事を、いい加減『おれ』って呼んだ方がいいのかな?もう、六年生なんだしさ。あお君や兄さんたちの呼び方を聴いて、いつもちょっと憧れてたんだ」
 「そうか?そう言う、形から入る所が余計に女子っぽいとは思うけどな。ものは試しに、いっぺん『おれ』って呼んでみれば?」

 「えぇと…それじゃ、行くよ。『みなさん、こんにちは。おれの名前は、伊勢嶋雪兎12歳ホモです』」
 「いいんじゃね?無理して格好つけてる俺女みたいで、可愛いと思うよ」
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