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弟の連れてきた恋人が男子高校生だった話

デレッデレにデレとるやんけ

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 「ご…ごめんね。つい興奮しちゃって…。とりあえず、晩ごはんまだでしょ?みんなで食べようよ。お勘定は、アタシに任せて。こんな事もあろうかと、バイト代降ろしてきたから。あ、店員さーん!ドンペリ持ってきて!」

 「サイゼリ屋に、ドンペリとかねーから。ってか、そもそもオレら未成年だしな」
 「あはは、そうだっけね。えと、加藤くんだっけ?弟と仲良くしてくれて、ありがとうね」 
 そう言うと彼はいかにも陰キャらしく、聞き取れないような声でモゴモゴと挨拶をした。また、髪の毛が鬱陶しく覆い隠しているので顔を伺い知る事は出来なかったけど…。
 分かるわ。その前髪の奥には、さぞかし絶世の美少年が隠されているんでしょう?どうせ、アレでしょ。デレた時にだけ、突然春風でも吹き荒んでお顔が見えるとかそんなんでしょ。こちとら幼少期より、BL本と言う名の聖典に慣れ親しんで全て知ってんのよ…。
 「聞いてると思うけど、アタシっていわゆる腐女子だから。だから男同士でも大歓迎…いいえ、偏見はないつもり。だけどさ、本当にコイツなんかでいいの?我が弟ながら、人の都合とか無視してグイグイ引っ張ってく奴だから。もし困ってるなら、無理して合わせなくても…」
 「そんなことないです!」
 アタシの言葉を遮って、陰キャの加藤くんが突然叫んだ。そこまで張り上げていた訳でもないと思うけど、よく響き渡る声だわ。ってかこの年で声変わりもしていない、高くて女の子みたいな声なのね。素敵…。
 「あ、ああ…すみません。お姉様に対して、つい失礼な事を。でも、ボクが無理して付き合ってるとか…。そんな事は、決してないです。確かに、レオ君は人をグイグイ引っ張ってくタイプです。知り合った当初は、それを嫌だとも思いました。だけど携帯の機種変だったり、カラオケでの出来事だったり…。彼は、ボクの知らなかった色んな世界へと連れて行ってくれます。彼がいるから、億劫な電車通学や学園生活が楽しくて仕方ない。だから彼と付き合っているのは、ボクの意思であって。その、彼が好きだからしている事です…」
 お、おおう。結構、言いたい事はハッキリ言うのね君。そしてすでに、デレッデレにデレとるやんけ…。新学期に、知り合ったばかりって言ったよね?何週間も経っていないと思うんだけど、ここまで陥落させるとは。我が弟ながら、恐ろしい子…!

 「そ…そうなのね。こっちこそ、ごめんなさい。アタシは何の役にも立てないけど、もし今のあなた達にアドバイス出来るとしたなら…」
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