30 / 58
跡継ぎ選別
30話
しおりを挟む
エスティアス村から帰還して、2か月ほど経った。この2か月間特に何もなく、平和な時間が過ぎていた。
クレアと詩音は毎日の日課である剣術の練習を今日もしに公園まで来ていた。
「ハッ! ヤァ!!」
「いいぞ! もっとだ!」
木刀が衝突する音、風を斬る音が公園に響く。
30分ほどやったところで、詩音たちは休憩することにした。
「いい感じだけど、まだ剣の振りが遅いな」
「そうか。結構難しいな」
「うん。クレアは剣を腕で振ってるからだな。ロングソードは重いから、そのまま振ると遅いし疲れやすい。だから1つ剣の型を教えるよ」
詩音は木刀を持つ。そして少し助走をしながら腰をひねり、戻しながら木刀を振る。そこからは、剣の流れる勢いを利用して連続で斬りつける。力の流れに逆らわず、流れるような足さばき。まるで川上の水流のように加速しながら流動する。
「こんな感じ。島場流奔流の型って言って、運動量が多くて疲れそうだけど、剣の重みに逆らわず、逆に利用して振ってるから普通にやるよりずっと疲れない。更に振ればふるほど速さが増していくんだ。他にも瞬発力に特化したものや破壊力が凄いのとかもあるけど、たぶんこれが一番やりやすい」
「なるほど。ぜひ教えてほしい」
「じゃあ早速やってみようか。一番大事なのは足さばきで………………」
詩音たちはその後、日が暮れかかるまで練習に励んだ。
詩音たちが屋敷に帰ると、もう夕食の支度が整っていた。
「あ、お帰りなさい。詩音さん、クレアさん。もう夕食ができているので手を洗って配膳をお願いします」
「りょーかい」
配膳を済ませ、4人は席に着いた。
「では、たべましょうか」
「いただきまーす!」
「詩音さん、いつも食事の前に言ってるそのいただきますとは何ですか?」
「あー。これは俺がいた国では食事前にやるんだ。生物や作ってくれた人とかに感謝するんだよ」
「何かの宗教ですか?」
「そんなかんじかな。よく知らないけど」
「なるほど。でしたら私たちも真似てみましょうか」
「「「いただきます」」」
3人も詩音を真似ていただきますをしてから食べ始めた。
そして食事中、クレアの稽古の話題になった。
「クレアさん、今日の練習はどうでした?」
「ああ。今日もとても実りのある練習だった」
「うん。クレアやっぱり上達が早いや。これで才能がないとか、見る目がないだろ」
「そうなんですか?」
「ちょっと教えたらすぐできる様になるんだ。まだあらいとこもあるけど、初めて教えたことほとんど使いこなせてる。これは才能でしょ」
「こ、こら。恥ずかしいからあまり言うな!」
クレアは赤面しながら怒った。
「おそらく詩音の教える剣術が私にあっているだけだろう。家で習っていたときはこうはいかなかった」
「なら自分に合うのが見つかってよかったってことだな!」
「ああ。私は幸運だった」
そんな会話をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。誰でしょうこんな時間に」
ルナは玄関へ向かっていった。しばらくすると、便箋をもってかえった来た。
「手紙の配達でした」
「また手紙か。今度は何だろうなぁ」
ルナは差出人を確認する。
「マックロイ・バンガードさんからですね」
瞬間、クレアが青ざめた。
「父上からだ………………」
「え!?」
「と、とにかく中身を確認しましょう!」
ルナは便箋を開け、中の手紙を取り出した。
「どれどれ。クレアへ。お前も一応はバンガード家の一員であるから知らせる。初秋にバンガード邸にてバンガード後継者及び家の聖剣の継承者の選別を行う。お前に期待はしていないが来たければ選別に来なさい。だそうです」
「期待してないって、そんなはっきりと書くかねぇ」
「なんか怖そうなお父様ですのね」
クレアは椅子に座り、頭を抱えた。
「選別が始まるのか……」
「なんだよそれ」
「代々バンガード家は兄妹同士での総当たりで試合をして、一番勝利数が高いものがバンガードのあとを継ぐ。そういう決め方で跡継ぎを決めてきた」
「長男が、とかじゃないんですね」
「バンガード家は最強でなくてはならなかったからな。それに次男以降にもチャンスがあるという方が兄弟たちも稽古を頑張るからな。現に父上は三男だったはずだ。それで跡を継ぐ者には代々伝わる聖剣キャリバーンが継承される」
「なるほどなぁ。で、クレアは行くのか?」
クレアは更に頭が下がっていく。
「私なんかが行っても意味がないだろうし」
「言い方変えるわ。クレアは勝ちたいのか? あとを継ぎたいのか?」
「それはそうだ! 私は勝って認められたいしバンガードの名は好きだから私が継承したい! だが……」
「ルナ、初秋ってあとどのくらい?」
「えーと、あと2、3か月くらいでしょうか。選別の日でしたらあと2か月と半分ですね」
「よし、クレア。間に合わせるぞ。選別までに島原流剣術をマスターするんだ!」
「ま、待ってくれ! いくらなんでも無理があるだろう! 仮にできたとしても兄たちに勝てるのか……」
「島原流はそんなやわなもんじゃないし、クレアの上達速度なら。それに何もしないであきらめるのは一番もったいないだろ。クレアが頑張るなら、俺が完璧になるまで仕込んでやる!」
「クレアさん。確かにすぐあきらめるのは脳筋のあなたには似合いませんよ?」
「頑張ってください! クレアさん!」
「クリスタは一言余計だが……分かった。私、やってみる。よろしく頼むぞ、詩音!」
「おうよ!」
こうして、クレアの猛特訓が始まったのだった。
バンガード邸では、マックロイと部下たちによる選別の会議が行われていた。
「クレアは来ないでしょうから、今回は7人での選別になりますね」
「ああ。我の子供たちは一人を除いて優秀な子たちばかりであるからな。誰になってもおかしくはない」
「特に最近異世界の女の部下をやっているというガウェインは有力候補でしょうな。なぜ部下なんかをやっているのか疑問ですが」
「何をやっているかは問題ではない。確かに有力候補なのは間違いないだろう。ああ、選別が楽しみだ」
マックロイと部下たちは愉悦を感じていた。
クレアと詩音は毎日の日課である剣術の練習を今日もしに公園まで来ていた。
「ハッ! ヤァ!!」
「いいぞ! もっとだ!」
木刀が衝突する音、風を斬る音が公園に響く。
30分ほどやったところで、詩音たちは休憩することにした。
「いい感じだけど、まだ剣の振りが遅いな」
「そうか。結構難しいな」
「うん。クレアは剣を腕で振ってるからだな。ロングソードは重いから、そのまま振ると遅いし疲れやすい。だから1つ剣の型を教えるよ」
詩音は木刀を持つ。そして少し助走をしながら腰をひねり、戻しながら木刀を振る。そこからは、剣の流れる勢いを利用して連続で斬りつける。力の流れに逆らわず、流れるような足さばき。まるで川上の水流のように加速しながら流動する。
「こんな感じ。島場流奔流の型って言って、運動量が多くて疲れそうだけど、剣の重みに逆らわず、逆に利用して振ってるから普通にやるよりずっと疲れない。更に振ればふるほど速さが増していくんだ。他にも瞬発力に特化したものや破壊力が凄いのとかもあるけど、たぶんこれが一番やりやすい」
「なるほど。ぜひ教えてほしい」
「じゃあ早速やってみようか。一番大事なのは足さばきで………………」
詩音たちはその後、日が暮れかかるまで練習に励んだ。
詩音たちが屋敷に帰ると、もう夕食の支度が整っていた。
「あ、お帰りなさい。詩音さん、クレアさん。もう夕食ができているので手を洗って配膳をお願いします」
「りょーかい」
配膳を済ませ、4人は席に着いた。
「では、たべましょうか」
「いただきまーす!」
「詩音さん、いつも食事の前に言ってるそのいただきますとは何ですか?」
「あー。これは俺がいた国では食事前にやるんだ。生物や作ってくれた人とかに感謝するんだよ」
「何かの宗教ですか?」
「そんなかんじかな。よく知らないけど」
「なるほど。でしたら私たちも真似てみましょうか」
「「「いただきます」」」
3人も詩音を真似ていただきますをしてから食べ始めた。
そして食事中、クレアの稽古の話題になった。
「クレアさん、今日の練習はどうでした?」
「ああ。今日もとても実りのある練習だった」
「うん。クレアやっぱり上達が早いや。これで才能がないとか、見る目がないだろ」
「そうなんですか?」
「ちょっと教えたらすぐできる様になるんだ。まだあらいとこもあるけど、初めて教えたことほとんど使いこなせてる。これは才能でしょ」
「こ、こら。恥ずかしいからあまり言うな!」
クレアは赤面しながら怒った。
「おそらく詩音の教える剣術が私にあっているだけだろう。家で習っていたときはこうはいかなかった」
「なら自分に合うのが見つかってよかったってことだな!」
「ああ。私は幸運だった」
そんな会話をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。誰でしょうこんな時間に」
ルナは玄関へ向かっていった。しばらくすると、便箋をもってかえった来た。
「手紙の配達でした」
「また手紙か。今度は何だろうなぁ」
ルナは差出人を確認する。
「マックロイ・バンガードさんからですね」
瞬間、クレアが青ざめた。
「父上からだ………………」
「え!?」
「と、とにかく中身を確認しましょう!」
ルナは便箋を開け、中の手紙を取り出した。
「どれどれ。クレアへ。お前も一応はバンガード家の一員であるから知らせる。初秋にバンガード邸にてバンガード後継者及び家の聖剣の継承者の選別を行う。お前に期待はしていないが来たければ選別に来なさい。だそうです」
「期待してないって、そんなはっきりと書くかねぇ」
「なんか怖そうなお父様ですのね」
クレアは椅子に座り、頭を抱えた。
「選別が始まるのか……」
「なんだよそれ」
「代々バンガード家は兄妹同士での総当たりで試合をして、一番勝利数が高いものがバンガードのあとを継ぐ。そういう決め方で跡継ぎを決めてきた」
「長男が、とかじゃないんですね」
「バンガード家は最強でなくてはならなかったからな。それに次男以降にもチャンスがあるという方が兄弟たちも稽古を頑張るからな。現に父上は三男だったはずだ。それで跡を継ぐ者には代々伝わる聖剣キャリバーンが継承される」
「なるほどなぁ。で、クレアは行くのか?」
クレアは更に頭が下がっていく。
「私なんかが行っても意味がないだろうし」
「言い方変えるわ。クレアは勝ちたいのか? あとを継ぎたいのか?」
「それはそうだ! 私は勝って認められたいしバンガードの名は好きだから私が継承したい! だが……」
「ルナ、初秋ってあとどのくらい?」
「えーと、あと2、3か月くらいでしょうか。選別の日でしたらあと2か月と半分ですね」
「よし、クレア。間に合わせるぞ。選別までに島原流剣術をマスターするんだ!」
「ま、待ってくれ! いくらなんでも無理があるだろう! 仮にできたとしても兄たちに勝てるのか……」
「島原流はそんなやわなもんじゃないし、クレアの上達速度なら。それに何もしないであきらめるのは一番もったいないだろ。クレアが頑張るなら、俺が完璧になるまで仕込んでやる!」
「クレアさん。確かにすぐあきらめるのは脳筋のあなたには似合いませんよ?」
「頑張ってください! クレアさん!」
「クリスタは一言余計だが……分かった。私、やってみる。よろしく頼むぞ、詩音!」
「おうよ!」
こうして、クレアの猛特訓が始まったのだった。
バンガード邸では、マックロイと部下たちによる選別の会議が行われていた。
「クレアは来ないでしょうから、今回は7人での選別になりますね」
「ああ。我の子供たちは一人を除いて優秀な子たちばかりであるからな。誰になってもおかしくはない」
「特に最近異世界の女の部下をやっているというガウェインは有力候補でしょうな。なぜ部下なんかをやっているのか疑問ですが」
「何をやっているかは問題ではない。確かに有力候補なのは間違いないだろう。ああ、選別が楽しみだ」
マックロイと部下たちは愉悦を感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる