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跡継ぎ選別
33話
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バンガード邸へ戻ると、クレアは執事を問いただした。
「これはどういうことだ!」
「どうといわれましても……」
「男はお前から聞いたと言っていたぞ!」
「証拠もありませんし……それに仮にもバンガード家の方なのですから、あまり大声を出すのはお止めになったほうがよろしいかと。はしたないですよ?」
「グッ……」
クレアは黙ってしまった。
「話は以上ですか。では、これで」
「全然話聞いてくれなかったな」
「全くだ! 何とも腹立たしい限りだ!」
「やっぱり選別で勝つしかないな」
「ああ。明日が楽しみだ」
クレアは怒りと闘志に燃えていた。
翌日、敷地内の広場にて選別の説明が行われた。
「よくぞ集まってくれた。本日、予定通り選別を開催する。選別内容を説明すると、候補者同士総当たりで試合をし、一番勝ち星の多いものを次の頭首とする。試合終了ごとに回復魔法で治療するため、殺傷以外は何をしてもよいとする。なお、勝敗は降参の宣言か、気絶においてのみ決するものとする。武器は各々が所持しているものを使用すること。以上だ」
「何とも解かりやすいな」
「けど刀が真剣かぁ。ルナの言った通り、念のため清光を持ってきておいてよかった」
「だが清光はボロボロのはずだろう?」
「ええ。ですがさすがはエスティアス村に伝わる剣です。詩音さんの時は何も起きませんでしたが、この刀、魔法に反応するみたいです」
「そこ! 私語を止めんか!!」
マックロイが怒鳴りつけた。詩音たちもびっくりして黙った。
「全く……クレア、邪魔をするなよ。……では、このたび選別に参加する者たちを紹介する。前に出てこい」
選別候補者たちが壇上に上がっていった。
「まずはバンガード家の長男にしてドミスク国の騎士団長を務めているこの男、アーサー・バンガード! 続いて次男。幼少期はバンガード家一の剣才を見せており、現在は異世界の少女の護衛として魔王軍と日々戦っている、ガウェイン・バンガード! そして三男! 冒険者として名をはせ、数々の高難易度クエストを達成している、ランスロット・バンガード! 次は長女! 女剣士でありながら男剣士をことごとく打ち破り、数多の賞金首を討ちとっている、モードレッド・バンガード! そして五男! ほかの兄妹たちが各地で活躍する中、この男は家に残り行く日も行く日も剣の修行に励んだ。剣の実力ならほかの兄妹の何歩も先を言いっている、ベディビエール・バンガード! 六男は、気性は荒いがその破壊力は抜群。魔王軍との戦いでも数々の功績を残している、トリスタン・バンガード! 七男、この男は唯一の大盾使いで、魔王軍との戦いにおいて幾度も兵を守ってきた、ガラハット・バンガード! そして最後に、次女、クレア・バンガード。以上が今回の参加者だ」
候補者たちは壇上から降り、マックロイは次の説明に入る。
「この表のとおりに試合を開催する。この後、候補者と関係者は闘技場へ来るように。以上」
マックロイは説明を終えると、その場の者たちを解散させた。
「いよいよだな」
「ああ。この日の為に死に物狂いで努力したのだ」
「では早速闘技場へ向かいましょう!」
闘技場では早速第一試合が開催されようとしていた。
「まず一試合目。対戦者はランスロット対ガラハット! 両者、前へ!」
詩音たちは観客席で観戦している。闘技場は地面が土であることをのぞけば、巨大な体育館の様なつくりである。
「これで他の候補者の実力が分かるな。さて、どれほどのレベルなのか」
「では第一試合、始めぃ!!!」
合図とともにランスロットが走り出す。
「うおりゃああああ!!!」
ガラハットへ剣を振りかざす。一撃一撃がとてつもなく重く、速い。しかしガラハットは涼しい顔で攻撃を受け止める。
「どうしましたか兄上。こんなものではないはずでしょう?」
「言うじゃねえか。ならこれはどうだ!!」
ランスロットはラッシュから、高速移動へ攻撃方法を変えた。そしてガラハットの背後から襲い掛かった。
「甘い!」
ガラハットは速反転し、盾を構える。
「ハッ!」
ランスロットは斬りつけるふりをして飛び上がった。そして高速回転しながら、遠心力でガラハットに斬り下ろす。
ガラハットはこれも反応して、盾を上方へ持ち上げ、受け止めた。
ちなみに、ここまでで10秒少々の出来事である。
「速すぎて何も見えませんでした!」
「ああ、このレベルだったとは……」
「決着をつけるぞ!」
「望むところです!」
ランスロットは剣に魔力を込め始める。刀身が淡い紫色に発光しだした。
対するガラハットも魔力を込め、大盾とショートソードが緑色に発光しだす。
「行くぞ! ライトニングソード!」
「アースザウォール!」
二つの魔法が激しくぶつかり合う。相当な衝撃波を放ったが、まだ両者ともに傷一つついてはいなかった。
「なんだあの技」
「あれは魔法剣技といわれる技で、刀身に魔力を込め、火や水など属性の攻撃や、身体能力のアシストなど、普通では不可能な剣術を魔法で補助することによって可能にする、バンガード家の最も得意とするものの一つだ」
「なるほどねぇ」
両者、今度こそ次の一撃で決めるつもりでいた。だから、自分のもてる技で最強かつ最適な剣技を繰り出す。
「この剣は、我が魔力、我が魂、我が修練において解き放たれん。我が剣に宿り、姿を変え、この地に限界せよ! アロンダイト!!」
ランスロットの剣が突如光に包み込まれる。そして形を変え、別の剣が出現した。
「兄上の聖剣召喚、アロンダイト。流石です。ですが私のを破れますか!?」
「盾は我が心。故に我崩れぬ限りこの盾は全てを守り抜くだろう。顕現せよ、アリマタヤヨセフ!!!!」
ガラハットの盾も同様に姿を変えた。
「行くぞ!」
「いつでもどうぞ!!」
二つの聖剣がぶつかり、目が見えなくなるほどの発光と衝撃波が詩音たちを襲った。
そして、目が見える様になったころには、倒れているランスロットと、盾を掲げ勝利を宣言するガラハットの姿があった。
「勝者、ガラハット!!」
観客席から歓声が沸いた。
「中々すごい戦いでしたね」
「詩音さん、クレアさんは大丈夫なんですか? あの、詩音さん? クレアさん?」
「このレベルだったとは……」
「やはり、厳しいのでしょうか」
「まあ、二人しか見ていないから何とも言えんが、あの二人のレベルがずっと続くのであれば……」
二人は図らずして同じタイミングで言った。
「この程度のレベルだったとは……」
「これはどういうことだ!」
「どうといわれましても……」
「男はお前から聞いたと言っていたぞ!」
「証拠もありませんし……それに仮にもバンガード家の方なのですから、あまり大声を出すのはお止めになったほうがよろしいかと。はしたないですよ?」
「グッ……」
クレアは黙ってしまった。
「話は以上ですか。では、これで」
「全然話聞いてくれなかったな」
「全くだ! 何とも腹立たしい限りだ!」
「やっぱり選別で勝つしかないな」
「ああ。明日が楽しみだ」
クレアは怒りと闘志に燃えていた。
翌日、敷地内の広場にて選別の説明が行われた。
「よくぞ集まってくれた。本日、予定通り選別を開催する。選別内容を説明すると、候補者同士総当たりで試合をし、一番勝ち星の多いものを次の頭首とする。試合終了ごとに回復魔法で治療するため、殺傷以外は何をしてもよいとする。なお、勝敗は降参の宣言か、気絶においてのみ決するものとする。武器は各々が所持しているものを使用すること。以上だ」
「何とも解かりやすいな」
「けど刀が真剣かぁ。ルナの言った通り、念のため清光を持ってきておいてよかった」
「だが清光はボロボロのはずだろう?」
「ええ。ですがさすがはエスティアス村に伝わる剣です。詩音さんの時は何も起きませんでしたが、この刀、魔法に反応するみたいです」
「そこ! 私語を止めんか!!」
マックロイが怒鳴りつけた。詩音たちもびっくりして黙った。
「全く……クレア、邪魔をするなよ。……では、このたび選別に参加する者たちを紹介する。前に出てこい」
選別候補者たちが壇上に上がっていった。
「まずはバンガード家の長男にしてドミスク国の騎士団長を務めているこの男、アーサー・バンガード! 続いて次男。幼少期はバンガード家一の剣才を見せており、現在は異世界の少女の護衛として魔王軍と日々戦っている、ガウェイン・バンガード! そして三男! 冒険者として名をはせ、数々の高難易度クエストを達成している、ランスロット・バンガード! 次は長女! 女剣士でありながら男剣士をことごとく打ち破り、数多の賞金首を討ちとっている、モードレッド・バンガード! そして五男! ほかの兄妹たちが各地で活躍する中、この男は家に残り行く日も行く日も剣の修行に励んだ。剣の実力ならほかの兄妹の何歩も先を言いっている、ベディビエール・バンガード! 六男は、気性は荒いがその破壊力は抜群。魔王軍との戦いでも数々の功績を残している、トリスタン・バンガード! 七男、この男は唯一の大盾使いで、魔王軍との戦いにおいて幾度も兵を守ってきた、ガラハット・バンガード! そして最後に、次女、クレア・バンガード。以上が今回の参加者だ」
候補者たちは壇上から降り、マックロイは次の説明に入る。
「この表のとおりに試合を開催する。この後、候補者と関係者は闘技場へ来るように。以上」
マックロイは説明を終えると、その場の者たちを解散させた。
「いよいよだな」
「ああ。この日の為に死に物狂いで努力したのだ」
「では早速闘技場へ向かいましょう!」
闘技場では早速第一試合が開催されようとしていた。
「まず一試合目。対戦者はランスロット対ガラハット! 両者、前へ!」
詩音たちは観客席で観戦している。闘技場は地面が土であることをのぞけば、巨大な体育館の様なつくりである。
「これで他の候補者の実力が分かるな。さて、どれほどのレベルなのか」
「では第一試合、始めぃ!!!」
合図とともにランスロットが走り出す。
「うおりゃああああ!!!」
ガラハットへ剣を振りかざす。一撃一撃がとてつもなく重く、速い。しかしガラハットは涼しい顔で攻撃を受け止める。
「どうしましたか兄上。こんなものではないはずでしょう?」
「言うじゃねえか。ならこれはどうだ!!」
ランスロットはラッシュから、高速移動へ攻撃方法を変えた。そしてガラハットの背後から襲い掛かった。
「甘い!」
ガラハットは速反転し、盾を構える。
「ハッ!」
ランスロットは斬りつけるふりをして飛び上がった。そして高速回転しながら、遠心力でガラハットに斬り下ろす。
ガラハットはこれも反応して、盾を上方へ持ち上げ、受け止めた。
ちなみに、ここまでで10秒少々の出来事である。
「速すぎて何も見えませんでした!」
「ああ、このレベルだったとは……」
「決着をつけるぞ!」
「望むところです!」
ランスロットは剣に魔力を込め始める。刀身が淡い紫色に発光しだした。
対するガラハットも魔力を込め、大盾とショートソードが緑色に発光しだす。
「行くぞ! ライトニングソード!」
「アースザウォール!」
二つの魔法が激しくぶつかり合う。相当な衝撃波を放ったが、まだ両者ともに傷一つついてはいなかった。
「なんだあの技」
「あれは魔法剣技といわれる技で、刀身に魔力を込め、火や水など属性の攻撃や、身体能力のアシストなど、普通では不可能な剣術を魔法で補助することによって可能にする、バンガード家の最も得意とするものの一つだ」
「なるほどねぇ」
両者、今度こそ次の一撃で決めるつもりでいた。だから、自分のもてる技で最強かつ最適な剣技を繰り出す。
「この剣は、我が魔力、我が魂、我が修練において解き放たれん。我が剣に宿り、姿を変え、この地に限界せよ! アロンダイト!!」
ランスロットの剣が突如光に包み込まれる。そして形を変え、別の剣が出現した。
「兄上の聖剣召喚、アロンダイト。流石です。ですが私のを破れますか!?」
「盾は我が心。故に我崩れぬ限りこの盾は全てを守り抜くだろう。顕現せよ、アリマタヤヨセフ!!!!」
ガラハットの盾も同様に姿を変えた。
「行くぞ!」
「いつでもどうぞ!!」
二つの聖剣がぶつかり、目が見えなくなるほどの発光と衝撃波が詩音たちを襲った。
そして、目が見える様になったころには、倒れているランスロットと、盾を掲げ勝利を宣言するガラハットの姿があった。
「勝者、ガラハット!!」
観客席から歓声が沸いた。
「中々すごい戦いでしたね」
「詩音さん、クレアさんは大丈夫なんですか? あの、詩音さん? クレアさん?」
「このレベルだったとは……」
「やはり、厳しいのでしょうか」
「まあ、二人しか見ていないから何とも言えんが、あの二人のレベルがずっと続くのであれば……」
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