俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

文字の大きさ
41 / 58
跡継ぎ選別

41話

しおりを挟む
 アーサーの剣が振り下ろされた。クレアは半身になり躱す。だが異常なほどの威力で再度吹き飛ばされた。

 うまく着地したクレアは、会場に大穴が空き更にはるか遠くまで地面が削り取られた跡を見た。

 観客は一斉に逃げ出した。こんな威力の攻撃が何度も続けば自分たちも巻き込まれかねないと思ったからだ。そして会場には詩音たちとその他兄妹たちのみが残り、この決戦の見届け人となった。

 クレアはこの一撃を受け、耐える手段が思い浮かばなかった。ただ雷神の型による速さでかく乱する方法しか無かった。

 再度自身の体に雷を纏わせ、身体能力強化を図る。刀は中段に構え、基本姿勢をとった。

 クレアが一歩踏み出した。その瞬間雷鳴とともにクレアは姿を消した。放電と共に移動しているのでかろうじてどこにいるのかは分かるが目では追えない。見えているのは詩音と兄妹たちのみだ。

 アーサーは更に剣を振った。今度は横方向だ。会場の地面を削り取るように爆風とエネルギーのビームが走る。
 
 クレアは背面飛びの要領でこれを回避する。爆風を受け流すように体もねじる。そして着地したらすぐにまた走り出した。

 クレアはアーサーの周りを周回しながら攻撃を避け、機会をうかがう。対するアーサーはすばしっこく動くクレアを火力と手数の暴力で仕留めにかかる。

 アーサーは連続した攻撃のせいで少し疲労し、一呼吸大きく深呼吸を入れた。

 このわずかな隙をクレアは見逃さなかった。クレアはあれだけ動き回っていたが、呼吸法のおかげでアーサーよりは体力に余裕があった。

 クレアは一気に距離を詰める。それに気づいたアーサーは剣で牽制しながら少し距離を取ろうとする。結果クレアは攻撃は出来なかったが肉薄することができた。

「はああああああああああああああああああ!!!!!!」
 
 クレアがラッシュをかける。アーサーは剣で受け止め続けるが、確実にクレアに押されていた。

 クレアが強く地面を踏み、反発力を推進力に変えた。

 クレアが上段に剣を構えた。クレアの魔力に反応して刀身から水流が出現し、背後に山と川の奔流の幻覚が出現する。
「島原流、奔流の型奥義、万水千山ばんすいせんざん!!!!」

 剣を振り下ろした。剣自体は空を斬ったが、背後から視界を覆い尽くすほどの水がアーサーに襲い掛かった。
 
 常人ではまず原型をとどめて死ねないであろう水圧を、アーサーは剣で水を割り、防いだ。

 技を放った後のクレアは物凄く静かだった。さっきまでの勢いが完全に消え、凪の様であった。だが全く隙は無く、まだまだ闘志はある様子だ。

 アーサーはこの瞬間がお互い最後の攻撃になるだろうと直感した。だから剣にありったけの魔力を込め、聖剣の力を最大まで解放させる。

 クレアがアーサーを見た。そして音もなく静かに一歩踏み出した。

 対するアーサーは一気に剣の魔力を解き放つ。

「エクスカリバー!!!!」
「島原流、奔流の型奥義明鏡止水めいきょうしすい

 お互いが技をぶつける。アーサーは金色のエネルギー波を放出した。クレアは一瞬でアーサーの懐に潜りこむ。

 クレアが斬りつけようとする。しかしアーサーの攻撃の爆風に剣が持っていかれ、剣を離してしまう。

 そのままクレアは前方に倒れこんでしまいそうになる。アーサーはそのときちょうど魔力を出し切っていた。

 クレアは最後の力を振り絞り、強引に片足で着地し、飛んだ。

 アーサーの頭よりも高く飛び上がり、体を回転させる。

「あ、あれは!? けど俺は教えてないぞ!!!」

 クレアが遠心力をつけ、アーサーの頭上で蹴りの体勢に入る。

「島原流、炎鉈」

 勢いよくかかと落としを食らわせる。アーサーはとっさに腕で受けた。あまりの威力に足が地面に沈み込んだ。受けた腕も確実に折れているとアーサーは感じた。

 クレアはそのまま地面に落ちる。そして倒れこんだクレアの喉にアーサーの剣の切っ先が当てられた。

「勝負ありだ。クレア」
「ま、参った」

 しばらく、観客席は静まり返っていた。だが、一人がは拍手を始めると。それにつられていき会場に残った全員が拍手を送った。



 会場のクレアのもとに詩音たちが駈け寄る。

「クレア!! 大丈夫か!?」
「ああ。だが負けてしまった。全力を尽くしてもう立つ力も残っていない。全力で挑んだ相手に負けるのは清々しいが同時にこんなにも悔しく思うものなのだな」

 クレアの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「クレアは頑張った。まさか炎鉈まで使えるとは思わなかったけど」
「ああ。あれはお前の技を真似てみたのだ。上手くできていたか?」
「やっぱ天才だぜ、お前」

 アーサーがランスロットとベディビエールに支えてもらいながらクレアに寄る。

「クレア。本当に強くなったな。我とここまで渡り合えるとは、余程修行したのだろう。使う流派は違うがお前は立派なバンガードの剣士だ」
「兄上」
「クレア。お前の師は誰だ?」
「ここにいる男だ」
「右京です」

 アーサーは詩音に手を差し出した。

「お前が師か。なるほど、であればいつかお前ともしあってみたいな」
「いつでも相手になりますよ。俺もあんたとやってみたい」

 詩音はアーサーの手を握り返した。

 そうこうしていると、鞘に入った剣を持ったマックロイがアーサーの元へ来た。

「選別の結果、アーサー・バンガードを正式な跡継ぎとする。アーサー、受け取りなさい」

 アーサーは聖剣キャリバーンを受け取る。

「明日、正式な儀式を行う。それまで皆は体を休めること。以上、皆大変良い戦いだった」

 マックロイはそう言うと去っていった。振り向きざまに詩音とクレアを睨み付けていたことはクレアだけが気付いていた。

 



 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

処理中です...