俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

文字の大きさ
55 / 58
6章ーMr.Freedom

55話

しおりを挟む
55話

 開始の合図と同時に詩音がバルクの顔面に蹴りを入れる。続けてボディーブロー、横蹴り、飛び膝蹴りなど連続で叩き込んだ。

 しかし回し蹴りを繰り出したところで足が捕まってしまう。

 その足を軸に蹴りを繰り出すもバルクは全く効いた様子が無い。

 バルクは片手で詩音を持ち上げる。そのまま地面に振り下ろした。

 詩音は地面に叩きつけられ大きくバウンドする。

 そこに追い打ちの大振りアッパー。詩音の腹部を打ち抜き、あまりの威力に詩音は空高く飛ばされた。

 バルクの少し前方に落ちる。これはもう勝負が決まったかのように思えた。だがバルクの表情は勝利を確信したものではなく、一切の油断なくただ倒れる詩音を見つめていた。

(痛てぇ……思いっきり叩きつけやがって。…………でもこの感じ、なんかいいかも……痛みと一緒に体の隅々まで浸透していくなにか……ああ、どんどん頭が澄み渡っていく……………………)

 急に詩音が立ちあがった。その佇まいは一切の隙が無く、脱力している身体から闘気を感じた。

「ふぅん……これが所謂悟りを開いたというやつか。中々とんでもないものを目覚めさせてしまったかな?」

 そう言うがバルクは笑っていた。好奇心で心底愉快だった。

 詩音は短く息を吸って、一歩踏み込み加速する。そして瞬きする間にもうバルクの懐に到達していた。

「島原流、閃拳」

 超高速でバルクの腹部に突きを放つ。これまでの閃拳と違い、速度、攻撃の精密性、力の伝わる鋭さが飛躍的に向上し、圧倒的な威力を発揮していた。

 だがバルクにとってはただ速いだけ、威力もあるが自身の腹筋を破る事は出来ないものだった。 
 詩音はそれを承知していた。これは単なる次の技へのつなぎ、ジャブのようなものだった。

「島原流、撞木」

 そしてこれが本命の技、撞木。ありったけの力と闘気を乗せ、バルクの腹筋めがけて放った。

 ゴーンと鐘を打ったような音が響く。そして詩音の拳はなんの外傷も無し。対してバルクの腹筋には拳のめり込んだ後ができていた。

 バルクは吐血し後ずさった。

「それが君の強さの秘訣か……たしかシマバラリュウとか言ったな」
「島原流だ。発音が違うぞ」
「ああ、すまない。だが所詮技、古くから弱きものが強きものから生き延びるための小手先の術に過ぎない」
「何が言いたい」
「これを見ろ」

 バルクは全身に力を入れると、筋肉がみるみるパンプアップしていった。そして詩音や観客に見せつける様にポージングする。

「これだよ君。筋肉だ。技だの脱力だの言ってはいるが筋肉本来のパワーには全くの無力。これを持たぬものが考えた苦肉の策よ」
「つまり武は弱いって言ってんのか?」
「そうだとも。たとえパンチに工夫を凝らして、鳩尾、顎、金的といった急所を狙ったとしても、この厚い腹筋、固めた大殿筋と四頭筋、全身の圧倒的な筋肉の前ではすべてが無意味となるのだ」
「なるほど、それは困るなぁ。島原流って、一応最強の武術で通ってるんだけど。ってことは最強の武と最強の肉体の対決になるってことだよな」
「いいや。何度も言うが武は私の前では無力だ」
「その割にはさっきの結構聞いてるみたいだがなぁ。それにここで俺に負ければお前の言う無力な武に負けることになるよな」
「あり得ないとも。そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ることではない」
「じゃあ武の凄さってのをしっかりと見てな!!」

 詩音は再度距離を詰める。先ほどのバルクの言葉は本心であるが詩音を挑発するために言った言葉だ。だが今の詩音は驚くほど冷静で、挑発であると見抜き、感情に任せず油断なくバルクに接近していく。

 バルクは掛かったと思った。安直に詩音が詰めてきたからだ。冷静さを欠いている状況で前に進み続けているベクトルを急に変えることはほぼ不可能、そう判断したバルクは迫りくる詩音に向かって思い切り左でパンチを繰り出した。

 大振りで軌道がバレバレのパンチだが、バルクには必中の確信があった。

 しかし、詩音はこの展開を読んでいた。詩音の顔面を狙ったパンチの下には大きなスペースができており、詩音はそこに滑り込んだ。

「島原流、つち

 そのままバルクの腕をつかむと、巨体を軽々投げる。そして回転しながら落ちていくバルクの顎に手を添え、思い切り地面に叩きつけた。投げた威力、叩きつける力、そしてバルク自身の体重で相当な破壊力を生んだ。

 島原流、槌。これは投げ技の一種で殺人拳の一つである。相手を掴んで背負い投げるところまでは他の技や武術において共通する。だが違うのは投げた後だ。投げ、相手が自分の正面まで来ると、相手の顎を持ち、頭部を地面に叩きつける。この技は投げるだけでは確定で頭部をぶつけて殺傷できない為、自分から思い切り叩きつけてやることを目的とした技である。古来、この技は有名で、戦場におい首が不自然に折れ曲がり頭蓋骨が割れた死体を見れば島原流が来たと分かるほどだった。ちなみに顎を持つと言ったが、これは槌を使ったものがよくやっていたからそういう教えになっただけであり、主眼である地面に頭を叩きつけることができるのであれば何をやってもいい。

 だがここまでの技でも、大ダメージは負ったものの、首も頭も折れたりしていなかった。

 
 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

処理中です...