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第一章★
007:大戦準備と組分け作業②
しおりを挟む――全校集会から1時間後
■商店街(大和 真)
雲ひとつない青い空。天気は快晴。肌寒いが日射しがあるから少しだけ暖かく感じる。
――カラン、カランッ
寂れた商店街の地面に空き缶が風に押され、転がる。俺達三人は学校の近所の商店街に来ていた。ここまでの道のりも何もかもが現実世界とそっくりだった。電柱、街頭、建ち並ぶお店も看板も全部同じ。
あれから校外に出ても問題ないことが分かったので、俺たちは食料や日用品の確保のために外に出てきた。そして、ここが本当に異世界なのか確認のためでもある。
「本当に無人なんだな真……」
「そうだね。ゴーストタウンみたいだね。なんか寂しい」
「てか寒くない?男の子はズボンだから羨ましいよ」
沙也加が俺のズボンを見ながら言う。あげないよ?俺も女子は冬もスカートなのはすごいと思う。スースーして絶対に寒い。
「そういや着替えの衣類やせめて寝泊りするための毛布が欲しいな 」
恭二がぼやく。
それに沙也加が同調する。
「私は枕も欲しいなー!後、温かい飲み物も飲みたいからポットとか欲しいよね」
「確かに。そこら辺のスーパーからかき集めれば、全部揃いそうだね」
俺達は歩きながら話しつづける。
ここに来るまでに何人か、立心館の生徒や他校の生徒を見かけている。その人達もきっと俺達と目的は同じだろう。変に関わりたくないのがお互いの心境なのか目も合わさなかった。
不意に沙也加が俺達に言う。
「ねぇ、二人とも?私は服を見に行きたいから食料の方は任せていい?」
「構わんぞ。一人で大丈夫か?」
「大丈夫だよ!すぐそこだしちょっと行ってくるー!」
沙也加はすぐに走ってどこかに行く。
俺達は沙也加とは違う道を歩く。
商店街でも外れの方面に向かう。
「別に服なんて三人で行けばいいのにね」
俺は空を見上げ、歩きながら言う。
「いや、見られたくないものだから一人で行ったんだろ」
「あっ…もしかしてパンツとか」
「気になるなら直接聞いてみてはどうだ?」
聞けるかよ。聞いたら多分俺は無事に済まないだろう。
商店街がもうそろそろ終わりになる。目線の先にはそれらしい建物が見えてくる。白い看板にユーザー専用食料庫と黒字で書かれている。外観はコンビニに似ているが壁が黒一色。景色に溶け込めず、目立っている。
近づくと自動ドアが開く。
俺達は中に入るとカウンターにはスーツを着た20代後半の綺麗な人がいた。学生じゃない。食料庫内はシンプルでカウンター以外は特にない。真っ白な床と壁だけ。
《ようこそ食料庫へ。MSPをご提示下さい》
MSPを取り出し、それを確認される。やがて返却すると、店の奥に消えていく。その歩き方がどこかぎこちない。少しするとすぐにカウンターに戻ってきて薄茶色の布の袋を二つ置く。
《一週間分あります。今回は初回なので無料ですが次からは稼いだ賞金から払ってもらいます》
俺はこの人の話している内容よりも、喋り方が気になっていた。どこか機械じみている。
《ここでは食糧のみの取り扱いになっていますがナイトメアの施設も多く点在しておりますのでそちらに行かれることもオススメします》
「それってどんな施設があるんだ?」
恭二が聞くとカウンターのお姉さんは淡々と答える。
《今はまだサービスは開始していませんが、ナイトメアにおける公的機関が存在しています。例えば、全国生徒のLevelランキングや学校戦力ランキングなどの新聞、また武器やアイテムの販売があります。また学校のカスタマイズをする際には、建築屋に行ってみてください》
「新聞?建築屋?それってどこにあるんだ?」
《まだサービスは開始していないのでお答えできません。では、これからの夢の世界をお楽しみください》
もう一度聞いてみる。
《これからの夢の世界をお楽しみください》
「……恭二?」
「…こりゃNPCだな」
「えっ、そうなの?まあ、確かに喋り方が妙だと思ってたけど」
「多分、もう何聞いても同じ言葉しか返って来ないだろうな。とりあえず、外に出るぞ。沙也加と合流しよう」
俺と恭二は自動ドアから出る。そして食糧庫を後にした。
◇◇◇◇◇◇
――同時刻
■商店街の一角(三島沙也加)
私は商店街の街路樹に背をもたれている。流れゆく雲を見つめボーとしている。空には果てしない青空が広がっている。
昨夜の教室での緊張感も今では不思議となくなってる…。昨日まではあんなに怖かったのに。まるでRPGのような世界に急に来てしまったために、未だ理解が追いついていないのか感覚が麻痺しているのか。
大きな街路樹の傍にはベンチがあり、私ははそこに腰を掛ける。休日はここには多くのカップルやファミリーが訪れている。この地域では有名なスポットで元々は寂れた商店街であったが、町おこしの一環で生まれ変わり、商店街×デートスポットというコンセプトでリニューアルされている。
近くのシンボル的な噴水も現実世界とまったく同じように水が湧き出ている。水飛沫の音だけがあたりに響いている。
私は真のことを考えていた。
私にとって特別な親友。
「……………」
私はは一年前、虐めにあっていたことをふと思い出す。噂だと私がその虐めの当事者の彼氏を奪ったらしい。もちろんそんなことはしていないのに。なのに靴には画ビョウ、椅子にはガム、教科書の紛失。
初めてイジメというのを経験した。影で実行されているため誰が中心となってやっているのかも分からない。せめて中心人物でも分かれば何かしらの対処ができたかもしれないけど……いや無理ね……あの頃の私にそんな強さなんてなかった。
ただショックだった。暗闇が私の目を覆う。誰も信用できず誰とも話したくなかった。これは私がの高校一年生の頃のこと。
そんな時に真がさりげなく助けた。シンプルな方法だが、私がが孤立しないようによく話しかけてくれてたのだ。
真が最初に状況に気付き、話し掛けてくれるようになって、恭二もすぐに気づいて会話の和に入って来てくれた。いつの間にか私達三人が一緒にいることが当然のようになり、いじめのことは気にならないくらいになっていた。そしていつの間にかなくなっていた。
二年になる時のクラス替えでまた真と恭二と同じクラスになる。その時は本当に嬉しかったなー。幸せな日々。異常な状況だからこそ今までの当たり前だった日常を思い出す。
「………………」
「…………」
私は空を見上げていた視点を商店街に戻す。
「あー…。服とか…下着とか取ってこないといけなかったんだった。急がないと」
私は街路樹から離れ、移動しようとする。
「ん?なんだろう?」
私はふと街灯が気になった。まだ日は落ちていないのに街灯が薄く灯っている?
よく見ると電球の代わりに蝋燭灯されてるのが分かる。さらに目を凝らしてみると蝋燭から青黒いモヤモヤが薄く出ているような…
なにこれ?現実世界もこんなんだったっけ?
「おーい、沙也加ー! 」
「あ…」
真と恭二だ。二人は私の近くまで来て溜め息をつく。2人に心配をかけちゃってたみたい。ごめんね…。
「沙也加探したよ。てっきり店内にいると思ったのに。どうしてこんなところにいるのさ」
「ごめん!ちょっと考え事してたんだー。えへへ」
「沙也加は服とかは手に入れたのか?」
恭二が私の手元を見て確認する。
手ぶらだ。
「ごめん。まだなんだー」
「まあ、良いさ。一緒に行こう」
真も恭二も本当に優しい。大好きな親友達。私達は近くの大きなショッピングモールに向かう。
………
……
…
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