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第二章★
061:立心館高校に帰る。
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■校庭(霜月 零)
私は、屋上から降り、校庭で消えゆく海王星を見送っている植村と合流をする。
植村は私が降りてくるのが見えたのかホッとしたような表情で私に反応する。
「会長ー!勝ったんですねー!怪我は大丈夫ですか?」
「そういうあなた達も少し怪我してるじゃないの」
植村は頭から血を流していて、腕からも流血している。絶対防御の植村がここまで怪我をしているのは初めて見た。
海王星もやはり只では終わらなかったのね。いくつか技を使っているのを私は冥王星と戦いながら横目に見ていた。
後は、冥王星が口にしていた【彗星】の存在が気になる。学校代表を倒したから、学校間大戦は立心館の勝利で終わっているが、冥王星は言っていた。
彗星を私達の高校に向かわせたと…。
草壁達は無事かしら。すぐに戻らないと。
「植村付いてきなさい。すぐ帰るわよ」
私は八蛇の鏡に存在力を込め、移動準備をする。植村は私にしがみつき、やがて私達の身体は発光する。
移動先はひとまず草壁のいるところにした。彼なら地下施設にいるはず。
◇◇◇◇◇◇
――線路――
移動が完了すると徐々に視界がクリアになってくる。足元には線路があり、遠くまで続いている。私の後方には駅のホームがあった。
少し明るくなってきた空に照らされ、線路の下に敷かれている小石がテカっている。
「会長? ここはどこなんです? 」
「草壁のいる場所にセットしたはずなんだけどどうしたのかしら……?」
私と植村は辺りを捜索し始める。
弱々しいが明るい朝日が2人を照らす。
「妙にここら辺、全体がテカテカしてません? 」
植村がキョロキョロと見回しながら呟く。頭から流れていた血が固まり、髪が頬にへばりついていた。
私はしゃがみ込み、地面を観察する。確かにこの辺りぬかるんでいる。
「おかしいわね。雨なんか降ってなかったはず。……まるでここら地域全体が水で敷かれていたみたいだわ」
私はふと、立ち上がり近くにある駅のホームへ線路伝いに向かう。植村も私についてくる。
なんか嫌な予感がするわね。冥王星が言っていた彗星のこと。三種の神器の持ち主のこと。鼓動が速くなる。
私はホームによじ登り、辺りを見回す。
「会長、どうしたんで…」
「…!! 」
そこには既に白い煙を出し、消えかけている上杉と少し離れたところに横たわる草壁がいた。
2人は辺りの惨状と草壁達の死にかけに絶句した。
私と植村は慌てて上杉と草壁のところへ駆けつける。
弱々しく上杉は慌てる私を見て言う。
「すんません。俺はもう手遅れです……草壁さんを治療してください」
上杉は腹部にはでっかい血のシミができていた。目が見えていないのだろうか、視点があやふやで焦点が定まっていない。
「いや、いやです!上杉さん死なないでください !」
植村は上杉の上半身を抱き締める。
「上杉……。そんな……」
上杉までも……。なんで……。
涙で頬が濡れていた。絶対にみんなを守ると決めたのに。そのためにも立心館には最初の群勢以外は簡単に入り込めないようにシールドも張っていたのに……それを簡単に突破したってこと?
しかもここまでは草壁の技で連れてきたのかしら?それとも彗星が……?状況が掴めない。
そして現状を受け入れることすらできていなかった。
「いやです! いやです! 上杉さんは死んじゃだめです! なんとかならないんですか??相坂さんの治癒能力で!!」
「いや、無理だ……。内臓がほとんどなくなっている。…相坂でもこれは無理だ…」
上杉は吐血を繰り返し、植村の制服に血が付着する。植村はただ、泣きながら必死に上杉を読んでいた。
多分もう耳も聞こえていない。
それはもう、意味をなさない。
「……悪いな。柚子。あの時の約束は守れないみたいだ…」
上杉が消えていく、半透明になり、何もかもが消えていく。
「……いや、でずっ……ウチを1人にしないでください……ぐずっ」
「すまねぇ」
上杉は消えていく。まるで初めから上杉は存在していなかったかのように。
私は涙目ながらもヨロヨロと草壁の方に歩く。
植村は上杉が今まで横たわっていた場所を見つめていた。コンクリートの地面が植村の涙で染みていく。幾重にも重なり、大きな染みになっていく。
「…約束したじゃないですか……」
最後だけど上杉は植村を『柚子』と呼んでくれた。死ぬ間際になって言うなんて卑怯です……
私はこれからどうやって生きていけばいいんですか?上杉さんと生きていくために私は少し強くなったんですよ。
私は草壁の容態を調べる。
草壁はそこまで重症ではなかった。これくらいならなんとか治ると思う。もしかして上杉が庇ったのだろうか。その証拠に、上杉の指輪の残骸が草壁の傍に落ちていた。
私は膝を地面につき、空を見上げてしまう。大切な人が、守りたかった人がどんどん消えていく。
守るって決めたのに……。
「……………」
しばらくし、私はまだ意識のない草壁の身体に腕を回し持ち上げる。
「戻りましょう。私達の学校に」
「……上杉さん」
植村は呆然としたまま、立ち上がるが目に光がない。
私は分かっているからこそ何も言わなかった。いや、言えなかった。好きな人を失う辛さはとてつもないもの。
苦労して得た勝利なのに誰も喜べなかった。重い空気の中、私は一言。
「帰りましょう」
3人は光に包まれ移動が始まる。
移動が完了し、目を開けると目の前には立心館高校がある。もはや家でもあるこの場所に3人は帰還した。
…………
……
…
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