11 / 19
オルガド一家
6
しおりを挟む
「一気に疲れた」
再びベッドに倒れ込んだ僕は、自分のベッドとは違う、広くふわりとした中にも腰のあるスプリングの跳ね具合に、はぁ~と気持ちよさの息を吐き出す。
横目に部屋を見れば、僕のアパート1棟分位あるんじゃないかという部屋の広さに、よくはわからないけれど絶対高級なんだろうなという家具の数々、そしてこのプロポーション。
「一体何が不満だって言うんだろう? そして、自分で言うのも何だけど、僕の身体やその他の環境の何がそんなに良かったんだろう?」
考えれば考えるほど不思議で仕方ないのだが、なんかもう考えるのも疲れたし、今日はこのまま寝ちゃっても良いんじゃないかなと思っていると、ドアがノックされ、サロメの声がした。
「お嬢様、よろしいでしょうか?」
……。
気分的によろしくないですと言いたかったが、サロメはこの世界で唯一の共謀者であるので、起き上がってベッドの端に腰掛けどうぞと了承する。
ベッドの上に座っている僕を見て、サロメは何かしら察したようだった。
「何かございましたか?」
「あ~、えっと、エマニュエルさんが通信してきて」
「なんと、お嬢様と連絡がとれるんですか?!」
「それが、向こうには魔力というものがないので、魂に残っている魔力で連絡してきてくれんたんですけど、エマニュエルさんの方からはもう出来ないっぽいです。僕が頑張れば僕の方からはできるみたいですけど」
「魂に残っている……。ということは魔力については肉体に準じているということでしょうか」
「まぁ、僕もよくわからないんですけど、エマニュエルさんは魔力の有無について心配はしなくて良いと言ってました。あと、サロメに任せる! と言っていたと伝えてくれと言われました」
「……丸投げですね、お嬢様らしいです。まぁ、魔力についてもその他のことについても色々と検証はしてみないといけませんね。と、その前に、どうしても変えていただきたいことと、どうしても決めておかなければならないことがありまして」
「どうしてもですか?」
「まず変えていただきたいことは、その『僕』というのです。出来れば『私《わたくし》』変えてください。さすがに『僕』はないですから」
「あぁ、たしかに。気をつけます」
「次に決めておきたいことですが、それは設定です」
「設定……、とは?」
さっきも聞いたな……。と思いながらサロメに聞くと、サロメはこほんと咳払いを一つ。
「まず、外見はお嬢様ですが、言動、その他があまりにも違いすぎます。このままでは恐らく何かしらを疑われるか、頭がおかしくなったと思われるでしょう。しかし、今までのお嬢様のように振る舞うのは無理があるかと思われるのです」
「あぁ、まぁ、そうですよね。全くの別人なんですから」
別人でもあるし、性別も違うし、年齢も違うという違いすぎる状態ですからね。うん。
「別人であっても今までのお嬢様を知っていらっしゃるのであれば、ある程度似せることは可能かとおもいますが、貴方は知っているわけではありません。かといって、お教えしたところでできるとも思えません。お嬢様はハイスペックでしたので」
「す、すみません、ロースペックで」
「そこで、設定です。お嬢様は机の引き出しに頭を突っ込んで意識を失われてから5日間を覚ましませんでした」
「え!? そんなに!?」
「はい。そして、お嬢様が倒れられたこと、目を覚まされないことは多くの人に知られています」
「なるほど?」
「つまり、魔力暴走により倒れ、寝込まれたことにより人格変化が起こったと言い切ってしまうのはいかがでしょうか」
「魔力暴走?」
「その名の通り、魔力の暴走です」
「いや、それはわかるんですけど、人格変化が起こるなんてあり得るんですか?」
「……今までそのような事例はありません」
「……。じゃぁ、無理があるでしょ」
まるっきりの別人だから人格変化とも言えなくはないが、今までそんな事例がないのに、このお嬢様に限ってそんな事態になるなんてありえないだろう。
しかしサロメの言う通り、まるで違う人物がこの場所で生きていくには、それなりに設定は必要だと思った。
再びベッドに倒れ込んだ僕は、自分のベッドとは違う、広くふわりとした中にも腰のあるスプリングの跳ね具合に、はぁ~と気持ちよさの息を吐き出す。
横目に部屋を見れば、僕のアパート1棟分位あるんじゃないかという部屋の広さに、よくはわからないけれど絶対高級なんだろうなという家具の数々、そしてこのプロポーション。
「一体何が不満だって言うんだろう? そして、自分で言うのも何だけど、僕の身体やその他の環境の何がそんなに良かったんだろう?」
考えれば考えるほど不思議で仕方ないのだが、なんかもう考えるのも疲れたし、今日はこのまま寝ちゃっても良いんじゃないかなと思っていると、ドアがノックされ、サロメの声がした。
「お嬢様、よろしいでしょうか?」
……。
気分的によろしくないですと言いたかったが、サロメはこの世界で唯一の共謀者であるので、起き上がってベッドの端に腰掛けどうぞと了承する。
ベッドの上に座っている僕を見て、サロメは何かしら察したようだった。
「何かございましたか?」
「あ~、えっと、エマニュエルさんが通信してきて」
「なんと、お嬢様と連絡がとれるんですか?!」
「それが、向こうには魔力というものがないので、魂に残っている魔力で連絡してきてくれんたんですけど、エマニュエルさんの方からはもう出来ないっぽいです。僕が頑張れば僕の方からはできるみたいですけど」
「魂に残っている……。ということは魔力については肉体に準じているということでしょうか」
「まぁ、僕もよくわからないんですけど、エマニュエルさんは魔力の有無について心配はしなくて良いと言ってました。あと、サロメに任せる! と言っていたと伝えてくれと言われました」
「……丸投げですね、お嬢様らしいです。まぁ、魔力についてもその他のことについても色々と検証はしてみないといけませんね。と、その前に、どうしても変えていただきたいことと、どうしても決めておかなければならないことがありまして」
「どうしてもですか?」
「まず変えていただきたいことは、その『僕』というのです。出来れば『私《わたくし》』変えてください。さすがに『僕』はないですから」
「あぁ、たしかに。気をつけます」
「次に決めておきたいことですが、それは設定です」
「設定……、とは?」
さっきも聞いたな……。と思いながらサロメに聞くと、サロメはこほんと咳払いを一つ。
「まず、外見はお嬢様ですが、言動、その他があまりにも違いすぎます。このままでは恐らく何かしらを疑われるか、頭がおかしくなったと思われるでしょう。しかし、今までのお嬢様のように振る舞うのは無理があるかと思われるのです」
「あぁ、まぁ、そうですよね。全くの別人なんですから」
別人でもあるし、性別も違うし、年齢も違うという違いすぎる状態ですからね。うん。
「別人であっても今までのお嬢様を知っていらっしゃるのであれば、ある程度似せることは可能かとおもいますが、貴方は知っているわけではありません。かといって、お教えしたところでできるとも思えません。お嬢様はハイスペックでしたので」
「す、すみません、ロースペックで」
「そこで、設定です。お嬢様は机の引き出しに頭を突っ込んで意識を失われてから5日間を覚ましませんでした」
「え!? そんなに!?」
「はい。そして、お嬢様が倒れられたこと、目を覚まされないことは多くの人に知られています」
「なるほど?」
「つまり、魔力暴走により倒れ、寝込まれたことにより人格変化が起こったと言い切ってしまうのはいかがでしょうか」
「魔力暴走?」
「その名の通り、魔力の暴走です」
「いや、それはわかるんですけど、人格変化が起こるなんてあり得るんですか?」
「……今までそのような事例はありません」
「……。じゃぁ、無理があるでしょ」
まるっきりの別人だから人格変化とも言えなくはないが、今までそんな事例がないのに、このお嬢様に限ってそんな事態になるなんてありえないだろう。
しかしサロメの言う通り、まるで違う人物がこの場所で生きていくには、それなりに設定は必要だと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる