ねぇ、好きになっていい？

第1話 自己紹介

「俺と付き合ってください！」
 威勢のいい声でクラスメートの男子がちょっと可愛い女子に言う。いじめではない。
「また今日もやってるよ、男子の悪ふざけ」
 それを聞いていた周りの人たちがあきれたかのように言う。
 俺もこんな風に言えたらいいなと胸の奥に小さな痛みを覚える。
「あいつにさえ告白できれば俺はいい」
 そんな他愛もないことをボソッと声に出す。
 聴こえていながったのか、俺の周りの子たちはまだ告白タイムを見ていた。

 俺の名前は『結城健』。桃陵学園に通っている2年生だ。
 俺が好きな女子は、俺と同学年の『灘こころ』で某有名雑誌のモデル業もやっているスタイル抜群で可愛い子だ。そのせいでこの学校だけでなく、県内の高校にまでその噂が広まってしまっている。
 そして俺も某有名雑誌のモデル業をしている。週に2回は会員制のジムに通って自分の筋肉をいじめている。そのおかげで上半身は鋼のような筋肉になっている。一方で、下半身は競輪選手のように太い足が目立つ。俺もまた、見た目とルックスから圏内に噂されている。
 『こころ』も俺の存在は知っているはずだ、そう俺は信じている。でもなぜ、『こころ』は俺に近づいてこないんだ？近づいて着てくれたら告白できるのに……
 そういう意味を込めた、大きなため息が出る。

 俺はまだ知らなかった。
 『こころ』に告白するには壮絶な物語が待っていることをーーー