転生先は、日本!?元英雄幼女、世界平和のために頑張ります

ごーぐる

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私は、えっと……。
ああそうだ。
私は自国に襲ってきたドラゴンを退治するために、仲間たちと共に剣を取り、戦ったけれど、ドラゴンが強くて、このままじゃ全滅しそうで……。
えっと、それで?

私は閉じていた目を開いて辺りを見渡そうとした。
あ、あれ?なんかぼやけるぞ?
しかし、視界が霞んでよく見えない。

「ああ、起きたのね。おはよう結菜ゆうな
誰かが、なにかを言っているが、全く聞きなれない言葉である。
しかし、その声は心地よくてもっと聞いていたかった。

「あー(だれ)」
私は自分の声に驚く。
え、なにこれ!?

「ふふ、可愛い。そのうちママって呼んでくれるようになるのかな~?」
「気が早いんじゃないか?おしゃべりを始めるのは一歳くらいからだろ?後半年はあるぞ」
「そうねぇ、でも楽しみ」

手も足もなにかも動かせないだけどっ!?
もしかして、重症負って外国の病院に……、いや、意味わかんないし!

結局なにも出来なかったのに、急に眠気が出てきた。
なぜか異様に疲れる。
ううぅ、なんなんだ……。
なにが起きているんだぁ……。

私はぐっすりと眠った。



あれから三年、私は三歳になった。
「結菜~、おはよう」
「おはよう、お母さん」
軽い足取りで現れたのは、弟を連れた母、結花ゆかさんだ。
弟は修治しゅうじという、五ヶ月である。

簡潔に説明しよう。
私はどうやら転生したらしい。
しかも、異世界に。

最初は困惑したものだが、優しい両親や可愛い弟に恵まれて幸福だと思わないわけがなく、幸せな日々を送っている。
難関だった言語も、この三年でマスター出来るようになった。
文字も平仮名カタカナ、簡単な漢字までなら書ける。

「ねえねえ、朝ごはんなにがいい?」
「なんでも。お母さんのご飯はどれも美味しいよ」
「まー!可愛いこと言うじゃない!でも、そうじゃないの。ネタが欲しいの!」
「じゃあ、味噌汁と焼き魚とご飯で」
「あーん、健康的~!じゃあそうするね、お父さん起こしてきて~」

ーーーなぜ、味噌汁と焼き魚とご飯か?
作るの楽だからです。
まあ焼き魚は市販の干し魚を使ってこそだけどね。
私は父を起こしに両親の寝室へと無表情で向かった。

しかし、ここで難関がある。
扉がドアノブに手が届かない事件である。
必死に手を伸ばすが、やはり届かない。
ーーーくそっ、あと、あと二センチ、ニセンチ欲しいんだぁっ!!!

しばらく伸びて、足の疲労からもとに戻った私は冷めた目で床を見つめた。
仕方あるまい、あれをやろうか。
私は不思議な力でドアノブを下方向にずらした。
そして、ドアを押して開く。

ちなみにこの力、前世でもあったもので、今世でも使える、物を動かすことができる能力である。
半径一メートルの範囲でしか使えない中途半端な能力だが。
やってから、背伸びの状態でジャンプをすれば届いたかもしれないということに気がついた。
無駄な労力である。

私はまあいいかとお目当てのベッドでぐうすか眠っている父の上にダイブした。
「ぐふぉっ!?」
「おはよう、お父さん。」
上に乗っかられた父はとても苦しそうだ。
父の名は修斗しゅうとという。

「ーーーおはよう、結菜。よっと」
父はひょいと私を抱き上げ起き上がる。
「今日のご飯はなに?」
「焼き魚」
「あー今日は結菜リクエストかぁ。ねぇ、焼き魚以外になにか食べたいものはないの?」
父は渋る。
「じゃあ、ひじきと大豆の煮物」
「それも昨日食べたよね……」

私は和食が好きなので、仕方ない。
前世にも洋食とにたような料理があったから、そっちは食べ尽くしちゃったんだよね。
私は呆れる父に抱っこされながらリビングに向かった。

ご飯を食べれば、昼間では自由時間である。
母は修治のお世話で忙しいだろうし、三歳じゃ家事もろくにできない。
こういう暇なときに真っ先に思い付くことが筋トレなのが、女として足りないところがあると前世で言われた理由なのだが。

ーーーさて、なにしようかな。

文字をすっかり覚えた私はやることがなくて暇だった。
唯一の遊び相手である父はすでに出社しているし、保育園は休み。

とりあえず、三点倒立をしてみた。
……うむ、頭に血が登る。
クラクラしてきたのでやめた。

カーペットの上に転がりながら、なにしようかなーと考える。
ふかふかのカーペットはお布団並みの心地よさで危うく二度寝をするところだった。
「はうっ、このままじゃブタになる……」

私は起き上がってとりあえず新しい何かを見つけようと外に出ることにした。
「お母さん、外で遊んでくるね」
「はーい、お昼までには帰ってきてね。気を付けて~」
母は私の頭をなでなでして台所に戻っていった。

私は自分の部屋に戻って帽子をかぶり、ポケットにタオルとティッシュを突っ込んだ。
「行ってきまーす」
子供用の可愛らしいピンクの運動靴を履いたら、いざ出発である。

外の世界は空が青く澄んで、木々が揺らぐ平和なものだった。
いやー、前世の世界は魔族が侵略を目論んできたり、古代のドラゴンが復活したりと大変だったからねー。

うちは大分田舎らしく、山の中、隣が森な場所に家があるのだが、空気が澄んでいて美味しい。
憧れてた田舎暮らしですよ、最高。

「にゃぁ~」
ふと、足もとから猫の鳴き声が聞こえてきた。
「おー、福さん。元気かい?」
それはうちで飼っている黒猫の福だった。

「にぁぅ~」
福は去年私が捨てられていたところを拾ったのだが、人懐っこくて真ん丸おめ目がキュートな猫さんである。
三歳にとって、猫は結構大きい。
成人してれば手のすぐそばに猫の背がある。

そんな胴体ですりすりとされれば、体は簡単に揺れて、転けそうになった。
「おー、福さん。やめてくれぇ~」
「うにゃ~?」
私は福をグイグイと押し退けて、危機から脱出する。

「はぁはぁ……。よーし、福さん。冒険だぁ!」
「にゃっ」
押されて不満げだった福だが、主人の元気な掛け声に機嫌を取り戻した。

私は福を連れて、どこにいくか散策する。
「うーん、今日は森の方でも見に行こうかな?」
隣の森は正確には隣ではなく、家の続いた三軒隣にある。

その三軒の家はすべて親戚で、お隣は父方の祖父の家だ。
つまり、父方の親戚が建ち並んでいるというわけである。
うちは跡取りの家なので祖父の家の隣に家を建てたみたいだ。

まあ、そういう話はどうでもよく、今重要なことは森へ向かうことだ。
幼児の現在、おそらく三十メートルほどの距離なのに、五十メートルくらい遠く感じる。

ぬう、遠いなぁ……。

「ねえ、福さん。なんでこの世界には魔法がないのかなぁ?」
「なゃう~」

これくらい距離なら、同じく幼少だったあの頃でもひとっとびで瞬間移動できたのに、魔法がないこの世界じゃ歩くしかない。
福たち動物だって、四足でなく二足で立ち歩きして人間の言葉を喋っていたし。

「はぁ、しょうがないよね。無いものはない」
私は歩き始める。
所々割れた箇所のある、整備の行き届かないアスファルトを歩けば、小石がジャリジャリと鳴った。
木の枝や、葉っぱなどが枯れ落ちて、パリパリと音を鳴らすのは楽しい。

第二の人生だからなのか、視点が変わるというのは不思議な感じがする。
着眼点が変わるし、なんというか世界の見方が違う。
大人の頃には荒んでいるように見えていたものが明るくて、眩しい。

ーーー空はこんなに色鮮やかに見えてたんだな……。
周りが良く見えるのは仕事や勉強や人間関係といった大変なことが無くて、余裕が有るからだろう。
長いようで短い散歩道が私の深くに沈んでいた心を癒した。
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