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第1話
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私は、できる子だった。
勉強も運動も特に頑張っていたわけではないのに、人よりもできたものだから苦労して何かを手に入れこともなかった。
だから『頑張る』という言葉をいつしか忘れてしまった。
それは私を孤独へといざなう悪魔の導きだった。
苦労をしなかった私は努力をしなかった。
そんな私を疎んじて、いつしか周りには誰もいなくなっていった。
仲の良かった友達、先生、最後には家族までもが私のもとを離れていった。
誰も私を見ていない、誰も私を知らない。
そんな日々が続いた。
それでも私は滞りなく生活ができて、生きていられたのでこれが最高だとまではいかなくとも、過ごしやすいなとそのままにしていた。
しかし、いつからだったか、世界の中で空気にも等しい私を見つけたやつがいたのだ。
そいつは俗にいう『いじめっ子』というもので、いつも一人でいる私が好都合だとでも思ったのかその標準を私へと移した。
それが丁度中学3年生の頃だっただろうか。
今でもそのいじめは途切れることなく毎日行われている。
私の空気具合があまりにも関心をひかないのか、それともそいつのいじめ方がうまかったのか、そのいじめに誰も気づくことはなかった。
さて、私は不運なことに適当に見繕った近くの高校でそいつとまた同級生となった。
適当に見繕ったといっても、この高校は国立のため偏差値は高い。
つまらないことをする奴でも勉強はできるらしいそいつは、余裕をもって合格したみたいだ。
中学の頃、テニスで全国大会まで行った彼女は、スポーツも万能である。
彼女は私を妬ましく思っているのではなく、ただ感情のままに私をいたぶって楽しんでいるのだろう。
いじめるのはなんでもよくて、ただいじめるのが好きなんだ。
その答えは私の中でストンと落ちた。
結局この人も私を見てくれてはいなかったのだ。
今日も学校へと歩いて向かえばあいつが2人の取り巻きを引き連れてやってくる。
今日は顔にグーで殴られた後に髪を引っ張られる。
力のある彼女は私を満面の笑みで持ち上げて嬉しそうに罵った。
体の重みに髪の毛が耐えられるはずもなく、ぶちぶちと音とともに痛みをもたらしながらたくさん抜けて床に散らばる。
ああ、無残なものだ。
床に這いつくばりながらそう思った。
私は何のために生きている?
頭の中を探してみても答えが見つかる気がしない。
やはり、『私』はいらない子だった?
聞きなれた、もう一人の「私」が問いかけてくる。
ううん、ずっと前から知ってたでしょ?今更だよ。
少なくとも”あの人”に必要とされてるあなたとは違うって。
でも生きてなきゃだめだよ、『私』。
私がちゃんと大きくなるまで。
私はプツリと意識を手放した。
私はのそりと起き上がり、今日のするべきことを頭の中で整理していく。
そういえば今日は金曜日だったか。
夜にはあの人がやってくる。
私は自分のチリチリになっている髪を見てため息をついた。
早くこれをどうにかせねば、人が一人……いや、三人か、この世から消えることになる。
人が三人、少なくとも一人消える面倒と、美容院に行く面倒ははかりにかけるまでもない。
これで今日の放課後は美容院に行くことが決定となってしまった。
チッ、面倒だな。
私は大きくため息をつく。
ため息をついては幸せが逃げるらしいが、あいにく私には逃げる幸せすら持ちあわせてはいなかった。
さあ、今夜もshowtime
勉強も運動も特に頑張っていたわけではないのに、人よりもできたものだから苦労して何かを手に入れこともなかった。
だから『頑張る』という言葉をいつしか忘れてしまった。
それは私を孤独へといざなう悪魔の導きだった。
苦労をしなかった私は努力をしなかった。
そんな私を疎んじて、いつしか周りには誰もいなくなっていった。
仲の良かった友達、先生、最後には家族までもが私のもとを離れていった。
誰も私を見ていない、誰も私を知らない。
そんな日々が続いた。
それでも私は滞りなく生活ができて、生きていられたのでこれが最高だとまではいかなくとも、過ごしやすいなとそのままにしていた。
しかし、いつからだったか、世界の中で空気にも等しい私を見つけたやつがいたのだ。
そいつは俗にいう『いじめっ子』というもので、いつも一人でいる私が好都合だとでも思ったのかその標準を私へと移した。
それが丁度中学3年生の頃だっただろうか。
今でもそのいじめは途切れることなく毎日行われている。
私の空気具合があまりにも関心をひかないのか、それともそいつのいじめ方がうまかったのか、そのいじめに誰も気づくことはなかった。
さて、私は不運なことに適当に見繕った近くの高校でそいつとまた同級生となった。
適当に見繕ったといっても、この高校は国立のため偏差値は高い。
つまらないことをする奴でも勉強はできるらしいそいつは、余裕をもって合格したみたいだ。
中学の頃、テニスで全国大会まで行った彼女は、スポーツも万能である。
彼女は私を妬ましく思っているのではなく、ただ感情のままに私をいたぶって楽しんでいるのだろう。
いじめるのはなんでもよくて、ただいじめるのが好きなんだ。
その答えは私の中でストンと落ちた。
結局この人も私を見てくれてはいなかったのだ。
今日も学校へと歩いて向かえばあいつが2人の取り巻きを引き連れてやってくる。
今日は顔にグーで殴られた後に髪を引っ張られる。
力のある彼女は私を満面の笑みで持ち上げて嬉しそうに罵った。
体の重みに髪の毛が耐えられるはずもなく、ぶちぶちと音とともに痛みをもたらしながらたくさん抜けて床に散らばる。
ああ、無残なものだ。
床に這いつくばりながらそう思った。
私は何のために生きている?
頭の中を探してみても答えが見つかる気がしない。
やはり、『私』はいらない子だった?
聞きなれた、もう一人の「私」が問いかけてくる。
ううん、ずっと前から知ってたでしょ?今更だよ。
少なくとも”あの人”に必要とされてるあなたとは違うって。
でも生きてなきゃだめだよ、『私』。
私がちゃんと大きくなるまで。
私はプツリと意識を手放した。
私はのそりと起き上がり、今日のするべきことを頭の中で整理していく。
そういえば今日は金曜日だったか。
夜にはあの人がやってくる。
私は自分のチリチリになっている髪を見てため息をついた。
早くこれをどうにかせねば、人が一人……いや、三人か、この世から消えることになる。
人が三人、少なくとも一人消える面倒と、美容院に行く面倒ははかりにかけるまでもない。
これで今日の放課後は美容院に行くことが決定となってしまった。
チッ、面倒だな。
私は大きくため息をつく。
ため息をついては幸せが逃げるらしいが、あいにく私には逃げる幸せすら持ちあわせてはいなかった。
さあ、今夜もshowtime
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