その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

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学園編

45 なんか呼び出される

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入学式まで後三日といったころ。
私はなぜか学園長先生に呼び出されていた。
もちろん、引きこもっていた女子寮からは一歩も出ていないので手紙が渡されたのだが。
ーーー至急、学園長室までこい。ーーー
とだけ書いてあったので、なにが駄目だったのか分からない。

「チェニー、私なにかしでかしたかしら?」
「そんなことはありま……、いえ、ありすぎてわかりません」
チェニーは言い直してにきやかに微笑んだ。

「え、なに!?私何をしちゃったのかしら!?」
「……」
ちょ、無言やめて。

私は焦って最近やったしでかしを思い出す。
「ーーーあれかしら?お父様のお気に入りの壺を割っちゃって、内緒のまま魔法で作り直しちゃったことかしら?!あ、それともお兄様に作ったプリンを我慢できなくて勝手に食べちゃったことかしら!?」
焦りに焦った私は、その程度のことで呼び出されるなんてあり得ないのに、大慌てした。

(お嬢様、可愛いです)
チェニーは静かにその様子を眺めていた。

少し落ち着いてから、とりあえず急いで本舎の管理区まで向かった。
女子寮から本舎まで結構な距離があるので、久々に馬に乗りたいなと言えば「貴婦人は馬車に乗るものです」と反対された。
なら、テレポートしていこうかなと言えば「やめてください」と言われる。

そういえばと、この世界はあまり魔法に馴染んでいないということを思い出した。
生活において一番活躍してくれる魔法なはずなのに、この世界では戦闘や医療でしか使われていない。
エイブルの授業を聞いていたときにそれが分かった。

それに比べたらチェニーはだいぶ魔法と関係深い生活を送っているのだろう。
そのチェニーが言うなら間違いないなと思い、頑なになるのをやめて大人しく馬車に乗った。
公爵家の馬車ではないからガタゴト揺れるけれどね。

「サラ・ニコラス、参りました」
「入室を許可する」
野太い貫禄のある低い声が聞こえて、私は部屋に入った。
デュークと位を名乗らないのは、学園が実力主義であるからである。
まぁ、表面上の薄っぺらいものだが。

ーーーまぁ、お兄様だわ。
中には、真っ白なお髭の厳つく年と筋肉の量が比例しないおじいさんと、お兄様がソファーで寛ぎ優雅にお茶を飲んでいた。
その他にも先生と思わしき男性が二人いる。

おそらく、筋肉質なこのおじいさんが学園長なのだろうが、ひょろりとした三人の中に混じっていると違和感がすごくする。
強そうだな……。
言いたいことはたくさんあったが、はしたないとされるのでグッと我慢した。

ここでは貴族の位は関係ないが、学校としての上下関係がないわけではない。
確か、今の学園長は侯爵なはずだが、目上の人として扱った。

「ほぉ、さすがあの有名なニコラス家の娘さんだな。母親に似て美人な子だ」
厳ついわりに、親しみやすそうに話すおじいさん。
お兄様の目が少し動いたのを私は見逃さなかった。
「おほめに預かり、光栄ですわ」

どうやらお兄様はお外モードらしい。
昔みたいに口がヒクリと動くことはなくなったけれど、動揺や興奮をすると目がほんのすこし泳ぐようになった。
相も変わらずシスコンを患っているようだ。

「一体どのようなご用件でしょうか?」
学園長が口を開いたので、私も質問をする。
「ああ、それはな……」
「お久しぶりです!先生っ!!!」
学園長を無視して大声を上げたのは、なにか見たことあるような気がするおにいさんだ。

淵が丸いメガネをかけた、深緑色の長い髪をもつ彼は……。
「あ、マースさん……」
よくよく見たら私の生徒だった。
「はい、覚えていてもらえたのですね!感激にございます!」

彼はマース・バロン・ゴスエル。
ニコラス領地内に住む、男爵家の次男だ。
平民向けの学校を作ったとき、教鞭をとってくれる人を探していた私は、公爵家の力を使って募集をかけた。
集まったのは貴族院の教師たちと、若い領地内の次男やれ姉妹の多い令嬢たちで、その中の一人が彼だった。

彼は成績優秀で貴族院を卒業して、王都からも是非にと仕事が来ていたらしいが、なぜかうちに来た。
そしてそれからしばらく、私は教師たちに勉学を教えては送り出しを繰り返し、だんだんと他領の学者たちも集まるようになり。
それから異様に慕ってくれた人たちにしばらくの教鞭を任せて以来会っていなかったのだが。
まさかこんなところで会うなんて。

「まさか先生の教師になるなんて思いもよりませんでした。新入生のリストにあなた様が載っているときにはどうしようかと思いましたよ!」
まぁ、先生の先生だもんね。
マースは数学をこよなく愛する人で、進んだ数学を誰よりもわくわくと聞いていたのを覚えている。

そのせいか、私を神様のように扱うようになって、あのときは困っていたが……。
「ですが、また先生にお会いできるとは、素晴らしい運命です!ああ、ヴェル・ディオ・ハーネストに感謝を!!!」
あまり、お変わりないようです。
私は思わず彼の顔を見ながら、遠くを見つめてしまった。
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