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学園編

75 夏休みがやって来た

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七月下旬、遂に夏休みが始まった。
学園生たちは在校か帰宅か選択することが出来る。
私は一週間ほど残り、図書館の本を読み漁った後、帰宅することにした。

本当は二週間いるつもりだったのだが、お父様からの手紙の催促が酷すぎて絶対に読むと決めていたものだけを読み、二十冊ほど借りてきた。
貸し出し禁止のものも多いので、かなり厳選して二十冊である。
一人十冊までしか借りられないので、お兄様にもねだった。
イエスマン兄は快く快諾してくれた。

三日で読み終わる量だが仕方がない。
それでも嬉しくて、亜空間に本を保管した私はほくほく顔だった。

わざわざ馬車に乗る必要もないので、私の部屋からテレポートで移動する。
エントランスでは屋敷総勢で出迎えをしてくれた。

「「「お帰りなさいませ、タファ様、サラ様」」」

やはり、ニコラス家の使用人たち、清々しい挨拶だ。
その中に背の低い八つの男の子が駆けてきた。
「サラお姉様~っ!お帰りなさいー!!!」
まるで弾丸のように飛び付けられ、かといって受け身を取るわけにもいかないので、身体強化を施して迎え撃つ。

「ただいま、ティスタニオ」
「おい、ティス。サラにくっつきすぎだぞ、離れろ!」
「あー、ついでにお帰りタファ様。ぼそっ(帰ってこなくて良かったのに)」
「なんだと!!」

左右から引っ張り合う力に迷うことなくお兄様の方を離す。
勝ち誇った笑みを浮かべたティスと同じ高さまでしゃがんで目を合わせた。

「今日の訓練はお庭百周にしましょうか?」
「ーーー!?」

ティスは渋々私から離れる。
「……僕ね、宿題全部終わらせたよ?だから、一緒に遊びに行こう?」
「ええ、約束通り行きましょう。でも今日は帰宅したばかりだし、それは明日にしましょうか。」
「うんっ!」

ティスとも話が終わると、美しいかんばせの男女がすっと現れる。
「サラ、お帰りなさい」
「お帰りサラちゃん、学園はどうだった?」

「ただいまです、お父様、お母様。学園はうーん、体術が出来ないのだけが残念というところでしょうか?あとはさほど生活は変わりませんの」
行きたくなかったのだが、学園に通うのは社交前の貴族ならば当たり前のことなので、公爵家の私が通わない訳にいかなく、仕方ない面も強かった。

「今からでも戻ってきて良いんだぞ?私がなんとかして……」
ギロリとお母様が静かにお父様を睨む……、いや笑っているけれど、なんとなくそう見える。
お父様はプルプルと怯えて喋らなくなった。
お母様つよい。

「サラちゃんがあの場所で学ぶことなんて数少ないだろうけど、友人ってとても大切だと思うの。貴族であることとしても人としてもね」
「はい、お母様」
本っ当、お母様が人格者で助かるよね。
母の言うことは実年齢お婆ちゃんな私も馬鹿に出来ない。

私は学園にいるであろう友人たちを思い浮かべた。
サウラスは相も変わらず勉強に精を出しており、ロナルディは夏合宿で実質夏休みというものがない。
ジークは……、はぐらかされたので分からないが、なんとなく残る気がする。

皆夏休みは忙しいようだし、うちに招いて茶会という間柄でもない。
ああー、女の子の友達が欲しぃーーー!!!
私は何とかせねばと学園に戻るまでに対策を立てることにした。
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