その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

文字の大きさ
116 / 165
学園編

85 子ドラゴン

しおりを挟む
『やっほぉ~、森の王様プロンちゃん登・場~』
『我もいるぞ』

ふわりと宙に浮かぶ妖精王が、二人。
静かに子供ドラゴンを見つめている。

「お久しぶりですわ、プロンさん、ルリミアさん」
ドレスではないので、会釈で済ます。
『うむ、くるしゅうない』
『久しぶりねぇ~、いつもお菓子ありがと』

プロンは髪や服のいろが森の色の保護色になっているが、人を惹き付ける力が強く、存在感はいつもと変わらない。
引き込まれそうな翡翠色の瞳だけが、いつもよりキラキラしている気がした。

「どうされましたか?」
『ふふふ、この子のことよ』
プロンは微笑みながら子ドラゴンを指差す。
ーーーなんか、嫌な予感……。
妖精王たちのお菓子以外のお願いは大半がなにかに巻き込まれる可能性が高い。
私はここ十年で痛いくらいにそれを身に感じていた。

『サラ、大分我々のことを分かってきたではないか』
ルリミアの台詞はそれを裏付けるのに十分だった。
嬉しくない。

『実はこのドラゴン、聖竜ファーファニールの子だ』
『それでね、サラちゃんにこの子の子育てを頼もうと思って!』
プロンはふふっと両手を合わせて笑う。

「……」
聖竜ファーファニール。
五百年前、魔王を討伐したという勇者パーティー、聖者アティナス・ハーピックと共に活躍したという伝説のドラゴンのことである。
その正体を見たものは少なく、おとぎ話かなにかかと思っていたが、実在していたとは。

『子育てを頼もうとーーー』
「いえ、聞いてましたよ……。わかりました、引き受けますわ」
『ホント?やったぁ!この子に森の魔力を吸われて、もう少しで私にまで被害が及ぶところだったのよぉ!』

そして、とんでもないことを言う森の妖精王。
はい?今、魔力を吸うって言いましたか?

『おい、折角頷いたのに、断らせる口実を作るんじゃない』
ルリミアははしゃぐプロンを小突いた。
「……それって、一日どれくらいしょうか?」
『うーん、サラちゃんが言うところの五十万くらいかなぁ?サラちゃんなら全然余裕でしょ?』

確かに、今の私の総魔力量は一億。
四歳のときからずっと鍛練していたおかげて、すっかり前世のときと同じ魔力量を取り戻していた。
現在進行形で増加中である。
いやー、この体の限界値はいかほどなのかね?

ちなみに、限界までくるとピタリと成長が止まる。
順調に成長すれば、二十前後で止まる場合が多い。
つまり、まだまだいけるということだ。

「まあ、今の生活でなら全然賄える量ではありますが……」
『なら、かまわないだろう?サラは聖者ではないが、光属性を持っているし、我が美味と感じる魔力なのだからこやつにとってもそれは変わらないだろうしな。ペットとでも思っておけ』

しっかし、学園でペットにドラゴンを飼うってのはいかがなものだろうか?
鳥や猫を飼う人はいるためペット禁止というわけではないのだが、聖竜の子とはいえ、ドラゴンである。
ドラゴンはどれも魔物として認識されているので、許可が下りるかがわからない。

ルリミアは輝く金の瞳で私の心を見透かすように見つめる。
『……たまには頼るということをしてみたらどうだ?今、サラが悩むよりも近道だと思うが』
「ーーーもしかして、お兄様のことを言っていますか?やっぱり、見てましたの」
『うむ、最近の我は暇人だからな。同じくルスピニー闇ノも見ているぞ』
暇人って言ったよ、暇人って。

自然から生まれるだけあって縛られることもなく、自由気ままに生活するらしい妖精たちは、大抵が遊んで暮らしているか人間たちを見て楽しんでいる。
後者は生まれてからしばらくたち、普通の遊びに飽きたものたちが多く、刺激を求めて活発的に活動、成長していく人間の様子を観察しているらしい。
闇と光の妖精は、感情というものが他の妖精たちよりも発達傾向にあるらしく、特に人間と強くかかわっている。
それは目の前の妖精王も同じなのだろう。

私は何を考えているのかわからない妖精王を見て、しばらくぶりの深いため息をつくのであった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい

和泉鷹央
恋愛
 王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。  そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。 「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」 「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」 「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」 「えっ……!?」 「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」  しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。  でも、コンスタンスは見てしまった。  朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……  他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...