その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

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学園編

85 子ドラゴン

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『やっほぉ~、森の王様プロンちゃん登・場~』
『我もいるぞ』

ふわりと宙に浮かぶ妖精王が、二人。
静かに子供ドラゴンを見つめている。

「お久しぶりですわ、プロンさん、ルリミアさん」
ドレスではないので、会釈で済ます。
『うむ、くるしゅうない』
『久しぶりねぇ~、いつもお菓子ありがと』

プロンは髪や服のいろが森の色の保護色になっているが、人を惹き付ける力が強く、存在感はいつもと変わらない。
引き込まれそうな翡翠色の瞳だけが、いつもよりキラキラしている気がした。

「どうされましたか?」
『ふふふ、この子のことよ』
プロンは微笑みながら子ドラゴンを指差す。
ーーーなんか、嫌な予感……。
妖精王たちのお菓子以外のお願いは大半がなにかに巻き込まれる可能性が高い。
私はここ十年で痛いくらいにそれを身に感じていた。

『サラ、大分我々のことを分かってきたではないか』
ルリミアの台詞はそれを裏付けるのに十分だった。
嬉しくない。

『実はこのドラゴン、聖竜ファーファニールの子だ』
『それでね、サラちゃんにこの子の子育てを頼もうと思って!』
プロンはふふっと両手を合わせて笑う。

「……」
聖竜ファーファニール。
五百年前、魔王を討伐したという勇者パーティー、聖者アティナス・ハーピックと共に活躍したという伝説のドラゴンのことである。
その正体を見たものは少なく、おとぎ話かなにかかと思っていたが、実在していたとは。

『子育てを頼もうとーーー』
「いえ、聞いてましたよ……。わかりました、引き受けますわ」
『ホント?やったぁ!この子に森の魔力を吸われて、もう少しで私にまで被害が及ぶところだったのよぉ!』

そして、とんでもないことを言う森の妖精王。
はい?今、魔力を吸うって言いましたか?

『おい、折角頷いたのに、断らせる口実を作るんじゃない』
ルリミアははしゃぐプロンを小突いた。
「……それって、一日どれくらいしょうか?」
『うーん、サラちゃんが言うところの五十万くらいかなぁ?サラちゃんなら全然余裕でしょ?』

確かに、今の私の総魔力量は一億。
四歳のときからずっと鍛練していたおかげて、すっかり前世のときと同じ魔力量を取り戻していた。
現在進行形で増加中である。
いやー、この体の限界値はいかほどなのかね?

ちなみに、限界までくるとピタリと成長が止まる。
順調に成長すれば、二十前後で止まる場合が多い。
つまり、まだまだいけるということだ。

「まあ、今の生活でなら全然賄える量ではありますが……」
『なら、かまわないだろう?サラは聖者ではないが、光属性を持っているし、我が美味と感じる魔力なのだからこやつにとってもそれは変わらないだろうしな。ペットとでも思っておけ』

しっかし、学園でペットにドラゴンを飼うってのはいかがなものだろうか?
鳥や猫を飼う人はいるためペット禁止というわけではないのだが、聖竜の子とはいえ、ドラゴンである。
ドラゴンはどれも魔物として認識されているので、許可が下りるかがわからない。

ルリミアは輝く金の瞳で私の心を見透かすように見つめる。
『……たまには頼るということをしてみたらどうだ?今、サラが悩むよりも近道だと思うが』
「ーーーもしかして、お兄様のことを言っていますか?やっぱり、見てましたの」
『うむ、最近の我は暇人だからな。同じくルスピニー闇ノも見ているぞ』
暇人って言ったよ、暇人って。

自然から生まれるだけあって縛られることもなく、自由気ままに生活するらしい妖精たちは、大抵が遊んで暮らしているか人間たちを見て楽しんでいる。
後者は生まれてからしばらくたち、普通の遊びに飽きたものたちが多く、刺激を求めて活発的に活動、成長していく人間の様子を観察しているらしい。
闇と光の妖精は、感情というものが他の妖精たちよりも発達傾向にあるらしく、特に人間と強くかかわっている。
それは目の前の妖精王も同じなのだろう。

私は何を考えているのかわからない妖精王を見て、しばらくぶりの深いため息をつくのであった。
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