その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

文字の大きさ
118 / 165
学園編

87 夏の終わりは

しおりを挟む
ファニールーチェに屋敷の者たちがだんだんと馴れてきて、一緒に遊ぶようになったころ。
夏休みは終わりを告げようとしていた。

「何用ですか?お父様」
「そこに座れ」

残り少ない夏休みを有意義(ファニと遊ぶために)に使いたいというのに、昼食後の急な呼び出しである。
多少嫌そうな表情をするのは許してほしい。

「すまんな、折角の時間を邪魔してしまって。話というのは今度のパーティーのことでな」
パーティー……。
この時期のパーティーといえばーーー。
「まさか、第二王子のお誕生日パーティーのことですの?」
「当たりだな」

お父様はニヤリと笑った。
「……いつも通り、行きたくありませんわ」
私は毎年、この行事をすっぽかしている。
しかし、お父様がわざわざ言うのだ、今回はきっと……。

「残念ながら逃げられなくてな。王子の婚約者探しのために上位貴族令嬢は全員出席だそうだ。……くそ王め、このままでは息子たちは一生結婚できないとか言って、無理やり事を進めやがって」
お父様は不敬などまったく気にせず愚痴る。
ーーーなんですと!?

まさか、強制出席を強いられるとは思いもよらなかった。
私はいままで心配などしてこなかった社交界のあれこれを考え始める。
……ん、待てよ?

このままじゃ結婚できないのは私も同じではないか?

そう思い至って、冷や汗をかく。
やばい、また独身生活……というか、貴族令嬢なのに結婚できないとかニート同然じゃん!?

「お、お父様っ!私、大変なことに気がつきましたわ!!」
「ん?なんだ、欠席する方法でも思い付いたか?」
「違います、私、この年になっても結婚相手がいないですわ!!!」

どこが問題なのかというと、大抵の上位貴族令嬢は幼少の頃から婚約者がいる。
そして、その結婚的年齢は十八歳。
そう、多くの令嬢は学園卒業後に婚約者と結婚するのである。

前世じゃ諦めていたからすっかり忘れていた。
私っていきおくれじゃん!?

特に貴族ってのは出会ってから結婚までいくのに最低でも一年はかかる。
形式を重んじる貴族はいかなる理由でも軽々しく結婚したりはしない。
まぁ、側妻なら話は別だが。

「……分かりましたわお父様。その勝負、受けてたちます!!!」
「一生領地にいてほしいのだけど……」
「問答無用!私は絶対に素敵なお相手を見つけて、結婚してみせますわ!」
「だから、王子たちの婚約者だってば。……聞いてないなこれは」

心のなかで新たな目標に燃える私に、お父様は深くため息をついた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...