132 / 165
学園編
101 出立
しおりを挟む
太陽はまだ上りかけ、霜が辺りを白く凍らせている朝。今日から遠征合宿が始まる。
「サァラ、おはよう!」
「おはようございま……にいに、今日は朝の会議があるのではないのですか?」
相変わらず、いつでも勝手に妹の部屋に入ってくる。
これでは呆れるなと言う方が無理な話だ。
「ん?そんな面倒なものはエドに投げてきた」
可哀想にエドモント様。
絶対、命令形で脅して無理矢理やらせたのだろう。
兄のシスコンはなかなか終わりを迎えてくれない。
「そんなことより、遠征まで時間もあるし少し遊ぼうよ」
お兄様は手に持っていたチェスを机に置く。
「あら、負けませんわよ?」
私は強気ににこりと笑って見せた。
チェスは私の完敗に終わり、お兄様に絶対にいつか勝つと宣戦布告をして登校した。
くぅ、なぜ負けるのだろうか?
なぜか私はボードゲームの類いが苦手だ。
ポーカーとか軍戯は出来るのになぜ?!
次は運ゲームにしてもらおうと思い直して、目の前の魔方陣の説明を受ける。
五百年前に作られたもので、解読は不可能とされ、そのままの状態で残っているらしい。
魔法を作った人が死んでも、魔力を送り続ければ動きはすると。
この世界特有のファンタジーで解決できるやつだ。
ちなみに、その転移魔法は私が使う滅茶苦茶魔法と似ていて、構造が不要なものばかりのやつだ。
ふむ、これは一生解読できませんなぁ。
しかも、これ。
なんと魔石を使って魔力を補給しているらしい。
その魔石は物凄く大きくて、世界でひとつ、自動で魔力を補充することが出来る。
道理で学園内は自然魔力が薄いはずだよ。
先生の説明は聞くに値しないと判断して、黙々と考えを広げていると、ふと魔方陣の縁に小さく見慣れた文字があることに気がついた。
ーーー日本語!?
いやまさかと、まじまじと見直すが間違いなく日本語である。
「ーーーそれでは今から魔方陣に乗って移動してもらう。順に並んで一人ずつ上に乗れ」
先生が移動を促したことで、それから意識が外れる。
私はもやもやとした気持ちで魔方陣の上に乗った。
遠征一日目。
今日は宿でそのまま自由行動となる。
皆疲れているだろうとのこと、いや、移動しかしてないがな。
しかし、私にとっては都合がいい。
連れてきたチェニーに紅茶を入れさせて、一人考え込む。
あの縁に書いてあった文字。
内容はーーー
学園長室の禁止庫の日記
そう、記されていた。
日本語はとても達筆で書道を習っていたものの字であった。
つまり、あれを書いたのは日本人で間違いない。
ーーー私以外に転生者がいた?
可能性はある。
私が妖精王たちと初めて会った日。
妖精王たちは私のことを「迷い人」と呼んでいた。
あれが異世界から来た者のことを指しているとしたら?
妖精王たちは迷い人について知っているようだった。
その迷い人が私と同じ日本人である確率は、ないとは言えない。
あの魔方陣は五百年前のもの、五百年前に私と同じ日本人があそこにいた。
その人が学園長室になにかがあると言っている。
そこまで考えて私は顔をしかめる。
ーーー知ってどうする?
私はあの世界に帰りたいわけじゃない。
いや、できるなら帰ってはみたいが、それはここでの生活を手放すのと比べられないのだ。
あの世界での私の人生はとうに終わりを迎えている。
両親はもういないし、弟妹は結婚して子供まで生まれている。
やり残したことなんてない、充実した人生だったと、私は満足したのだ。
あの世界に未練はない。
今さら繋がりたいと思わない。
私は魔方陣の角に書かれていた文字を紙に書いてみる。
しかし、なにかが引っ掛かる。
きっとそれだけじゃないとどこかで思うのだ。
戦場で培ったその勘は簡単に否定できるものじゃない。
ーーー危ない橋は渡りたくない主義なんだけど。
私の答えは決まった。
学園に帰ったら学園長に申し入れようと。
……それがもう手遅れだとは知らずに。
「サァラ、おはよう!」
「おはようございま……にいに、今日は朝の会議があるのではないのですか?」
相変わらず、いつでも勝手に妹の部屋に入ってくる。
これでは呆れるなと言う方が無理な話だ。
「ん?そんな面倒なものはエドに投げてきた」
可哀想にエドモント様。
絶対、命令形で脅して無理矢理やらせたのだろう。
兄のシスコンはなかなか終わりを迎えてくれない。
「そんなことより、遠征まで時間もあるし少し遊ぼうよ」
お兄様は手に持っていたチェスを机に置く。
「あら、負けませんわよ?」
私は強気ににこりと笑って見せた。
チェスは私の完敗に終わり、お兄様に絶対にいつか勝つと宣戦布告をして登校した。
くぅ、なぜ負けるのだろうか?
なぜか私はボードゲームの類いが苦手だ。
ポーカーとか軍戯は出来るのになぜ?!
次は運ゲームにしてもらおうと思い直して、目の前の魔方陣の説明を受ける。
五百年前に作られたもので、解読は不可能とされ、そのままの状態で残っているらしい。
魔法を作った人が死んでも、魔力を送り続ければ動きはすると。
この世界特有のファンタジーで解決できるやつだ。
ちなみに、その転移魔法は私が使う滅茶苦茶魔法と似ていて、構造が不要なものばかりのやつだ。
ふむ、これは一生解読できませんなぁ。
しかも、これ。
なんと魔石を使って魔力を補給しているらしい。
その魔石は物凄く大きくて、世界でひとつ、自動で魔力を補充することが出来る。
道理で学園内は自然魔力が薄いはずだよ。
先生の説明は聞くに値しないと判断して、黙々と考えを広げていると、ふと魔方陣の縁に小さく見慣れた文字があることに気がついた。
ーーー日本語!?
いやまさかと、まじまじと見直すが間違いなく日本語である。
「ーーーそれでは今から魔方陣に乗って移動してもらう。順に並んで一人ずつ上に乗れ」
先生が移動を促したことで、それから意識が外れる。
私はもやもやとした気持ちで魔方陣の上に乗った。
遠征一日目。
今日は宿でそのまま自由行動となる。
皆疲れているだろうとのこと、いや、移動しかしてないがな。
しかし、私にとっては都合がいい。
連れてきたチェニーに紅茶を入れさせて、一人考え込む。
あの縁に書いてあった文字。
内容はーーー
学園長室の禁止庫の日記
そう、記されていた。
日本語はとても達筆で書道を習っていたものの字であった。
つまり、あれを書いたのは日本人で間違いない。
ーーー私以外に転生者がいた?
可能性はある。
私が妖精王たちと初めて会った日。
妖精王たちは私のことを「迷い人」と呼んでいた。
あれが異世界から来た者のことを指しているとしたら?
妖精王たちは迷い人について知っているようだった。
その迷い人が私と同じ日本人である確率は、ないとは言えない。
あの魔方陣は五百年前のもの、五百年前に私と同じ日本人があそこにいた。
その人が学園長室になにかがあると言っている。
そこまで考えて私は顔をしかめる。
ーーー知ってどうする?
私はあの世界に帰りたいわけじゃない。
いや、できるなら帰ってはみたいが、それはここでの生活を手放すのと比べられないのだ。
あの世界での私の人生はとうに終わりを迎えている。
両親はもういないし、弟妹は結婚して子供まで生まれている。
やり残したことなんてない、充実した人生だったと、私は満足したのだ。
あの世界に未練はない。
今さら繋がりたいと思わない。
私は魔方陣の角に書かれていた文字を紙に書いてみる。
しかし、なにかが引っ掛かる。
きっとそれだけじゃないとどこかで思うのだ。
戦場で培ったその勘は簡単に否定できるものじゃない。
ーーー危ない橋は渡りたくない主義なんだけど。
私の答えは決まった。
学園に帰ったら学園長に申し入れようと。
……それがもう手遅れだとは知らずに。
10
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる