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学園編
116 驚き
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「……それで、会うのを躊躇ってたの?」
「ーーーうん……」
クロが弱々しく頷くのに、私はため息が出そうだった。
この数年は一体なんだったのか。
「怒ってる?」
「怒ってますわ、凄くね」
クロは私の言葉に驚いた。
「……そこは、嘘でも怒ってないよって言うところなんじゃないの?」
「……」
なんていうか、クロって時々乙女チックになるわよね……。
「はぁ、まあ友達だから許してあげるわよ。でも会わなかった数年分、一緒にしたかったこと拓さんするわよ!とりあえず、まずはお話からね」
「うん!」
私は気を使ってくれたローズに感謝して、クロが知らない学園生活のことや、妖精たち、家族のことについて喋り倒した。
ローズはちょうど私が喋り終わったところで、既に夕食とも言える時間帯に昼食を運んできた。
『サーモンの香草焼きとトマトのカルパッチョです』
『ありがとう』
少量だが、多くの種類の料理がテーブルに並んだ。
「何が好みなのか分からなかったから、いろいろ用意させた。好きなものを選んで食べてくれ」
「あら、ありがとう」
贅沢な料理たちは、きらきらとしていて違いがわからない。
私はどれでもいいかと香草焼きに手を伸ばした。
クロのわくわくとした視線が刺さる。
「……あのね、クロ」
「なに?」
「そんなに見られると、落ち着かないわ」
「え!?そうなの?」
そうか……、クロは王だから見られながら食べるのなんてしょっちゅうなのか。
しかし、私は違う。
一応公爵家令嬢だが、うちは基本おひとり様食事で、付き添いは専属メイドのみだ。
みんなで食べるときも、執事以外は大体下がる。
しかも食べている最中は目を閉じていてくれるので、視線はない。
前世でもボッチ飯というか、仕事の片手間に完全栄養食品を食べるという感じだったので、慣れない視線だ。
「そうよ、見るなとは言わないけれど見つめ続けるのはやめて」
「なんで?」
クロは首を傾けて疑問符を頭上に浮かばせた。
その目はまっすぐで、純粋にわかっていないのだと理解する。
「ええっと……、そうねぇ……、もしお忍びで街に出かけるとするじゃない?誰にも内緒で。その時に後ろからローズとか従者が尾行してきたらどう思う?」
「―――嫌だ。せっかく黙って外に遊びに行けたんなら、自由にしたい!」
「そう!それよ。ずっと見られていると、監視されているみたいで不快なの」
本当は少し違うけど、他に思い付かなかったのでそう言った。
クロは納得したようで、頷いている。
「じゃあ、ずっとは見ないから時々見てもいい?」
「いいけれど……、見ていて何かいいことがあるの?」
もしかして、他人と食事を共にするのが初めてとか?
いや、王様なら会食とかするだろうしなぁ……。
「うん。楽しいよ、サラの喜んでいる顔が見れたら嬉しいし!」
そう言った、クロの染まらない黒い瞳から目が離せなくなった。
―――いかん、孫を見ている気分だわ……。
その姿は犬のようで、私は尻尾と耳が生えているんじゃなかろうかと思う。
いや、尻尾なら生えているが。
表面がうろこでおおわれているその尻尾はトカゲに似ている。
角も生えているし、クロはドラゴンかなにかなのだろうか?
まあどうでもいいかと、私は目の前の食事に集中した。
食事を終えて日も暮れてきたので、私は城を出ようと席を立つ。
「もう帰っちゃうの?」
「ええ、日が暮れるとただでさえ暗いのに、真っ暗で何にも見えなくなっちゃうでしょ?それに、ここ寒いし」
魔界が人間界より冷えることを確認した私は、早く出るべきと判断し、愚図るクロを無視して帰りの支度をした。
「……寂しいな」
「あら、明日も来るわよ?」
「えっ!?」
私は魔法でうさ耳と尻尾を生やした。
参考にしたのは毎日うさ耳で過ごす、全身タイツの従者である。
「私、しばらく学園を休んで、魔界に居座ることにしたから」
「えぇぇぇぇ!!!???」
私は想像以上に驚く魔王な友人にくすくすと笑みをこぼしたのであった。
「ーーーうん……」
クロが弱々しく頷くのに、私はため息が出そうだった。
この数年は一体なんだったのか。
「怒ってる?」
「怒ってますわ、凄くね」
クロは私の言葉に驚いた。
「……そこは、嘘でも怒ってないよって言うところなんじゃないの?」
「……」
なんていうか、クロって時々乙女チックになるわよね……。
「はぁ、まあ友達だから許してあげるわよ。でも会わなかった数年分、一緒にしたかったこと拓さんするわよ!とりあえず、まずはお話からね」
「うん!」
私は気を使ってくれたローズに感謝して、クロが知らない学園生活のことや、妖精たち、家族のことについて喋り倒した。
ローズはちょうど私が喋り終わったところで、既に夕食とも言える時間帯に昼食を運んできた。
『サーモンの香草焼きとトマトのカルパッチョです』
『ありがとう』
少量だが、多くの種類の料理がテーブルに並んだ。
「何が好みなのか分からなかったから、いろいろ用意させた。好きなものを選んで食べてくれ」
「あら、ありがとう」
贅沢な料理たちは、きらきらとしていて違いがわからない。
私はどれでもいいかと香草焼きに手を伸ばした。
クロのわくわくとした視線が刺さる。
「……あのね、クロ」
「なに?」
「そんなに見られると、落ち着かないわ」
「え!?そうなの?」
そうか……、クロは王だから見られながら食べるのなんてしょっちゅうなのか。
しかし、私は違う。
一応公爵家令嬢だが、うちは基本おひとり様食事で、付き添いは専属メイドのみだ。
みんなで食べるときも、執事以外は大体下がる。
しかも食べている最中は目を閉じていてくれるので、視線はない。
前世でもボッチ飯というか、仕事の片手間に完全栄養食品を食べるという感じだったので、慣れない視線だ。
「そうよ、見るなとは言わないけれど見つめ続けるのはやめて」
「なんで?」
クロは首を傾けて疑問符を頭上に浮かばせた。
その目はまっすぐで、純粋にわかっていないのだと理解する。
「ええっと……、そうねぇ……、もしお忍びで街に出かけるとするじゃない?誰にも内緒で。その時に後ろからローズとか従者が尾行してきたらどう思う?」
「―――嫌だ。せっかく黙って外に遊びに行けたんなら、自由にしたい!」
「そう!それよ。ずっと見られていると、監視されているみたいで不快なの」
本当は少し違うけど、他に思い付かなかったのでそう言った。
クロは納得したようで、頷いている。
「じゃあ、ずっとは見ないから時々見てもいい?」
「いいけれど……、見ていて何かいいことがあるの?」
もしかして、他人と食事を共にするのが初めてとか?
いや、王様なら会食とかするだろうしなぁ……。
「うん。楽しいよ、サラの喜んでいる顔が見れたら嬉しいし!」
そう言った、クロの染まらない黒い瞳から目が離せなくなった。
―――いかん、孫を見ている気分だわ……。
その姿は犬のようで、私は尻尾と耳が生えているんじゃなかろうかと思う。
いや、尻尾なら生えているが。
表面がうろこでおおわれているその尻尾はトカゲに似ている。
角も生えているし、クロはドラゴンかなにかなのだろうか?
まあどうでもいいかと、私は目の前の食事に集中した。
食事を終えて日も暮れてきたので、私は城を出ようと席を立つ。
「もう帰っちゃうの?」
「ええ、日が暮れるとただでさえ暗いのに、真っ暗で何にも見えなくなっちゃうでしょ?それに、ここ寒いし」
魔界が人間界より冷えることを確認した私は、早く出るべきと判断し、愚図るクロを無視して帰りの支度をした。
「……寂しいな」
「あら、明日も来るわよ?」
「えっ!?」
私は魔法でうさ耳と尻尾を生やした。
参考にしたのは毎日うさ耳で過ごす、全身タイツの従者である。
「私、しばらく学園を休んで、魔界に居座ることにしたから」
「えぇぇぇぇ!!!???」
私は想像以上に驚く魔王な友人にくすくすと笑みをこぼしたのであった。
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