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幼少期
前世での記憶 前半
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目を開けると見慣れた白い壁とカーテン。
私は重い体をベッドから起き上がらせ、夜以外は開きっぱなしの扉を見る。
どこを見渡しても白くて、見慣れた光景でも少しうんざりしてくる。
今日も元気にパタパタと動き回っている看護師さんたちに目を向け、次に今は何時かと机の上に置かれている時計に目を向ける。
―――――時計には12のところに短い針があった。
(寝すぎた…)
最近どうも眠くてたまらない。
………わかってはいる、そろそろ時間なんだ。
私は小児がんにかかっていた。
そのため私は小学生のころから寝たきりになっていた。
今年で18になる。
私は懸命な両親のおかげで10年も永らえている。
高いお金を払って私に手術を受けさせてくれる両親は毎日忙しそうに働いている。
しかし、申し訳なさで心はいっぱいではなく、まあ8割くらい。
なぜなら、私が小児がんにかかったのは父親のせいだからだ。
父は昔から煙草が好きだったらしい。
それは私が生まれてからでもで当時生まれたばかりだった私の前でも平然と煙草を吸っていたらしい。
もちろん母はものすごく怒ったらしいが、それでもやめなかったみたいだ。
そして8歳になった私は小児がんにかかったというわけだ。
父はそれを医師から伝えられてすぐに煙草をやめたらしい。
病院の中、私の前で勢いよくゴンッと音を鳴らして土下座した父は今でも忘れられない。
あの時は父の剣幕に同じ階にいた病院中の人から視線があってとても恥ずかしかった。
本当に馬鹿な人だけど、父の中で私は大好きな煙草より大切な存在だったみたいでうれしかった。
毎日深夜遅くまで働いて、少ない休日は毎日来てくれた。
母も毎日毎日やってきては今日は何があっただのと話をしてくれた。
二人に愛されている実感があるから私は痛くつらい毎日を乗り越えられた。
そうやって4年たち、あることが起こった。
その日毎日来ていた母が来なかったのだ。
何かあったのだろうか…私は心配になった。
次の日、母ではなく父が来た。
父はそれはもう幸せそうに私に話してきた。
「喜べ、お前に弟か妹ができるぞ。」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
まるで突然今から隕石が降って地球がなくなるとでも言われたような感覚。
そして言葉の意味をゆっくりながらも理解した私は急に怖くなった。
それと同時に安心もした。
――――あぁ、もう生きなくていいのかと。
私が頑張って生きているのは死ぬのが怖かったり、頑張ってくれている両親や病院の先生方のためでもあったが、何よりも両親が寂しくならないようにと思ってのことだった。
正直、ずっと病院から出られずに時にはベッドからも抜け出せない時だって少なくなかった。
そんなのが毎日毎日、うんざりしたのだ。
生きるのがつらい、なんて思っていたがそんなの失礼だよなって…。
思っていたのに。
(そうだ、もう私は必要ない。)
そう考えてしまったのだ。
(自由なんだ…)
その日から私は早く死にたいなと思い始めた。
そして10か月後、無事に赤ちゃんが生まれたと父から知らされた。
どうやら男の子だったみたいだ。
その子は優ゆうとなずけられ、一週間後両親は生まれたばかりの弟を連れて病室までやってきた。
生まれたばかりの赤ちゃんは全く人間味がなかった。
病院に赤ちゃんはなかなか来ないのでとても珍しかった。
しかし、弟という感じは全くなかった。
「どう?かわいいでしょ?弟だぞ。」
母は嬉しそうに尋ねてくる。
「うーん…、かわいい、かな?どう見てもサルにしか見えないんだけど。」
素直にそう答えると二人とも笑った。
「あなたもそうだったのよ?実はねお父さんもね生まれたばかりのあなたを見て『サルにしか見えん。』って言ったのよ。」
父は照れ臭そうに頬を掻く。
そうだったのか。
私はちゃんと父の子だったらしい。
いや、疑ってなかったけど。
その日からまた母は毎日病院に通うようになった、小さな弟を連れて。
それから3年、がんが転移していた私はまた大きな手術を受けることになった。
手術は成功したが、お金がかかったのだ。
両親はそれを私に必死に隠していたようだが、あいにくにも医術の勉強を少ししていたので金額は知っていた。
昔は優がいなかったから共働きだったが、今は違う。
負担も昔の倍に感じているはずだ。
それに私には将来はあまりないが、優は違う。
3歳になった優は父が禁煙したおかげもあってすくすくと育っていた。
あと3年すれば小学生。
お金がかかる。
それでも母が息子を保育園に預けて仕事に復帰しないのには理由があった。
………私に毎日会いに来れなくなるから。
仕事と優の子育て、それだけでいっぱいなのだ。
だから私は昨日言ってやったのだ。
「私のことはいいから働いてきて」と。
母は、「毎日会いに来られなくなるの嫌っ」とか「仕事したくないっ」とか愚痴っていたが最後にはしぶしぶ了解した。
全く手間のかかる母親だぜ。
…まぁ、一番手間がかかるのは父だけど。
それは私の中での確信だった。
そうして私の死ぬ決心がつかぬままのろのろと月日は流れ、弟も9歳になった。
今日も元気に母と弟は病室にやってくる。
「ねーさーん!!見てこれ!工作でつくったの!!」
それはみんなが一回は作ったことのあろうもの、勾玉だった。
形は少しいびつだがきれいにやすり掛けされていた。
「これを優が?上手だね。」
私は受け取った勾玉を優に返そうとした。
そうしたら優は首を振って受け取らなかった。
「それね、ねーさんにプレゼントするの。」
まるで他人行儀みたいに言うがまだ9歳なので日本語をちゃんと使えていないのだ。
私は嬉しくなった。
「本当?ありがとう、嬉しいな。」
まさか弟からプレゼントをもらえる日が来るとは。
大きくなったものだ。
優は「えへへ」と照れてごまかし笑いをする。
母はそんな優の頭をなでなでしている。
――――うん、大丈夫そうだ。
そう思った、心から。
私は重い体をベッドから起き上がらせ、夜以外は開きっぱなしの扉を見る。
どこを見渡しても白くて、見慣れた光景でも少しうんざりしてくる。
今日も元気にパタパタと動き回っている看護師さんたちに目を向け、次に今は何時かと机の上に置かれている時計に目を向ける。
―――――時計には12のところに短い針があった。
(寝すぎた…)
最近どうも眠くてたまらない。
………わかってはいる、そろそろ時間なんだ。
私は小児がんにかかっていた。
そのため私は小学生のころから寝たきりになっていた。
今年で18になる。
私は懸命な両親のおかげで10年も永らえている。
高いお金を払って私に手術を受けさせてくれる両親は毎日忙しそうに働いている。
しかし、申し訳なさで心はいっぱいではなく、まあ8割くらい。
なぜなら、私が小児がんにかかったのは父親のせいだからだ。
父は昔から煙草が好きだったらしい。
それは私が生まれてからでもで当時生まれたばかりだった私の前でも平然と煙草を吸っていたらしい。
もちろん母はものすごく怒ったらしいが、それでもやめなかったみたいだ。
そして8歳になった私は小児がんにかかったというわけだ。
父はそれを医師から伝えられてすぐに煙草をやめたらしい。
病院の中、私の前で勢いよくゴンッと音を鳴らして土下座した父は今でも忘れられない。
あの時は父の剣幕に同じ階にいた病院中の人から視線があってとても恥ずかしかった。
本当に馬鹿な人だけど、父の中で私は大好きな煙草より大切な存在だったみたいでうれしかった。
毎日深夜遅くまで働いて、少ない休日は毎日来てくれた。
母も毎日毎日やってきては今日は何があっただのと話をしてくれた。
二人に愛されている実感があるから私は痛くつらい毎日を乗り越えられた。
そうやって4年たち、あることが起こった。
その日毎日来ていた母が来なかったのだ。
何かあったのだろうか…私は心配になった。
次の日、母ではなく父が来た。
父はそれはもう幸せそうに私に話してきた。
「喜べ、お前に弟か妹ができるぞ。」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
まるで突然今から隕石が降って地球がなくなるとでも言われたような感覚。
そして言葉の意味をゆっくりながらも理解した私は急に怖くなった。
それと同時に安心もした。
――――あぁ、もう生きなくていいのかと。
私が頑張って生きているのは死ぬのが怖かったり、頑張ってくれている両親や病院の先生方のためでもあったが、何よりも両親が寂しくならないようにと思ってのことだった。
正直、ずっと病院から出られずに時にはベッドからも抜け出せない時だって少なくなかった。
そんなのが毎日毎日、うんざりしたのだ。
生きるのがつらい、なんて思っていたがそんなの失礼だよなって…。
思っていたのに。
(そうだ、もう私は必要ない。)
そう考えてしまったのだ。
(自由なんだ…)
その日から私は早く死にたいなと思い始めた。
そして10か月後、無事に赤ちゃんが生まれたと父から知らされた。
どうやら男の子だったみたいだ。
その子は優ゆうとなずけられ、一週間後両親は生まれたばかりの弟を連れて病室までやってきた。
生まれたばかりの赤ちゃんは全く人間味がなかった。
病院に赤ちゃんはなかなか来ないのでとても珍しかった。
しかし、弟という感じは全くなかった。
「どう?かわいいでしょ?弟だぞ。」
母は嬉しそうに尋ねてくる。
「うーん…、かわいい、かな?どう見てもサルにしか見えないんだけど。」
素直にそう答えると二人とも笑った。
「あなたもそうだったのよ?実はねお父さんもね生まれたばかりのあなたを見て『サルにしか見えん。』って言ったのよ。」
父は照れ臭そうに頬を掻く。
そうだったのか。
私はちゃんと父の子だったらしい。
いや、疑ってなかったけど。
その日からまた母は毎日病院に通うようになった、小さな弟を連れて。
それから3年、がんが転移していた私はまた大きな手術を受けることになった。
手術は成功したが、お金がかかったのだ。
両親はそれを私に必死に隠していたようだが、あいにくにも医術の勉強を少ししていたので金額は知っていた。
昔は優がいなかったから共働きだったが、今は違う。
負担も昔の倍に感じているはずだ。
それに私には将来はあまりないが、優は違う。
3歳になった優は父が禁煙したおかげもあってすくすくと育っていた。
あと3年すれば小学生。
お金がかかる。
それでも母が息子を保育園に預けて仕事に復帰しないのには理由があった。
………私に毎日会いに来れなくなるから。
仕事と優の子育て、それだけでいっぱいなのだ。
だから私は昨日言ってやったのだ。
「私のことはいいから働いてきて」と。
母は、「毎日会いに来られなくなるの嫌っ」とか「仕事したくないっ」とか愚痴っていたが最後にはしぶしぶ了解した。
全く手間のかかる母親だぜ。
…まぁ、一番手間がかかるのは父だけど。
それは私の中での確信だった。
そうして私の死ぬ決心がつかぬままのろのろと月日は流れ、弟も9歳になった。
今日も元気に母と弟は病室にやってくる。
「ねーさーん!!見てこれ!工作でつくったの!!」
それはみんなが一回は作ったことのあろうもの、勾玉だった。
形は少しいびつだがきれいにやすり掛けされていた。
「これを優が?上手だね。」
私は受け取った勾玉を優に返そうとした。
そうしたら優は首を振って受け取らなかった。
「それね、ねーさんにプレゼントするの。」
まるで他人行儀みたいに言うがまだ9歳なので日本語をちゃんと使えていないのだ。
私は嬉しくなった。
「本当?ありがとう、嬉しいな。」
まさか弟からプレゼントをもらえる日が来るとは。
大きくなったものだ。
優は「えへへ」と照れてごまかし笑いをする。
母はそんな優の頭をなでなでしている。
――――うん、大丈夫そうだ。
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