のほほん真勇者録 アルファポリス版

ごーぐる

文字の大きさ
9 / 33
幼少期

初めてのクエスト4

しおりを挟む
一方そのころのリズ達は。
押し寄せてくる魔物たちの相手をしていて完全にユリカを見失っていた。
「あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!!邪魔!!退け!!そこ退け!ユリカぁぁぁ!!!」
「うるさいよリズ。ユリカにばれたらどうするのさ。」
とびかかってくるジャックウルフを盾で押しのけながら冷静に突っ込意を入れるタロー。
それを聞いてリズははっとしたような表情になる。
「そうであった、ユリカは大丈夫か?心配。」
そしてタローが押しのけたジャックウルフに雷の矢をぶつけて戦闘不能にする。
雷魔法はリズの得意分野の一つだった。
他にも火魔法が得意だったりする。
この二つは詠唱なしでも発動することが可能だった。
「うーん、一概には言えないなあ。もしかしたらウルフがまだ奥にいるかもしれないし。でもウルフくらいならたぶん対処できると思うよ。もし数が多くても俺たちが向かうまで倒されることはないと思う。」
リズはムムウと考え込む。
「でも心配。もしなんかあったら、早くこいつら片づける。」
「うん、そうだね。その方がいい。しっかし、すごく強くなったと思わないか?ユリカ。」
「当たり前、魔法はリズが先生だし。剣はジェド、Aランク。すごい強い。」
しゃべりながらでも二人の連携が崩れることはなく、あっという間に数は半分になってしまった。
「うーん、確かにそうなんだけどさあ。あの子だぶん5、6歳くらいだろ?その年で魔法を使えるのもすごいのに剣まで魔物と戦えるレベルでたぶんCランク簡単に超えるんじゃないか?」
「確かに、ユリカすごい。妖精にも好かれてる。でもそれはいつもユリカが頑張ってるから。」
「それもすごいんだよ。あのくらいの子供って普通遊びが生活の中心みたいな感じだろう。1、2時間ならまだしも一日中鍛錬、勉強だ。俺があのくらいなら3日もせずにやめるよ。元もいいし、このままいけば絶対Aランクになれる。」
タローは微妙な顔になる。
それに反面、リズは興奮したようだった。
「考えてみたらすごかった。ずっと近くにいるからわからなかったけど、確かに伸び具合半端ないかも。」
タローは「だろ?」と相槌をする。
「まぁ、負けられないわな。俺たちも一応冒険者だし、剣士としてもな。…まさか子供相手にライバル宣言する日が来るとは思わなかったよ。」
「ははは、でも強い。頑張らないと負ける相手、燃え…。」
とリズがしゃべりかけた途中で奥から叫び声が聞こえてくる。
「ぎゃゃゃあ”あぁぁぁ!!!!」
「今の、ユリカ!?大変!急ぐ!」
最後の一匹をようやく倒したタローは剣に付いた血糊を振り払う。
「あぁ、そうだな。急ごう!」
二人は駆けるぬけるようにユリカのところへと走った。

近づいてくるものは敵。
私は視界にとらえてすらいないものを確実に感じ取っていた。
これは毎日の修行の賜物なのだろうが、前からかなりのスピードでやってくるものが敵であると迷わずにいうことができる。
やがて足音が大きくなってきて、少し驚いた。
足音は地を轟かすがごとく、揺れを伴ってやってくるのだから。
――――かなり大きい?
足音だけなら象が走ってやってくるのではないかと思ってしまうほどだ。
象ほどの大きさであればこの森の中という状況は極めていいものだった。
草木が生い茂る森ならば大きな相手は身動きがとりづらいだろうから。
だがしかし、ここは異世界。
私が持っている知識などあてにはできない自然環境であるので期待はできない。
しばらくもしないうちに足音の主が姿を現す。
それは、馬に乗った鎧の騎士だった。
「え?人間!?」
そう思ったのも無理はなく、明らかに人間のフォルムをしたものであった。
なんだか大きさ的にタローに似ているので既視感を覚えて仕方ない。
しかし、騎士は止まることなく猛スピードで突進してくるつもりのようだ。
「これ、戦っていいんだよね?てか、戦わないといけないんだよね?」
何が何だかわからないがとりあえず、このままではひき殺されるだけなのでタイミングを見計らって横に飛び、木の陰に隠れる。
「禍々しい魔力…、間違いなく魔物なんだろうけど。人型の魔物なんていたのか…。なんか戦いにくいな…。」
騎士は当たっていないことを確認したのか急に馬を止めてこちら側に方向転換する。
「うーん、隠れても無駄っぽいな。目か鼻がいいのか、それとも魔力でばれているのか。どちらにせよ、あの突進から避ける方法考えないとな。」
火魔法―――は森の中じゃ使えないし、水魔法だと鎧があるので威力が足りる気がしない。
「もう、素直に正面突破が一番かな?」
私は全身と剣に強化魔法と、結界を張って剣を構えた。
馬の目は異常なほどまでに狂気したものになっており、馬が動くたびにカタカタと動く鎧。
その鎧は頭と銅が離れているタイプの鎧だった。
だったら生物として、狙うところは一つ。
しばらく似たら見合っていたが、時が満ちたのかはたまたその時に魔物が耐えられなくなったのか魔物がまた突進してきた。
私はそれがチャンスに見えてまっすぐ突進してくる馬に向かって、わざわざぶつかりに行くように走った。
そのままぶつからないように大きくジャンプし、
「やぁ!!!」
掛け声とともに騎士の魔物の首を切った。
私はピタリと止まった魔物に対して「倒した?」と錯覚して思わず後ろを振り返った。
そしてこれまでの人生の中で一番大きな声で叫んでしまった。
「ぎゃゃゃあ”あぁぁぁ!!!!な……生首がぁ!!!う、動いて…?!」
それはぴょんぴょことリズムよく弾むさっき切ったばかりの生首だった。
「え、なに、トカゲみたいな感じなの!?そういう分類!?切り離し可能なんですか!」
などと驚きのあまり意味の分からない言葉が口からあふれてくる。
その間にも離れ離れにされた鎧たちは、無事再会を果たせたようで、よいしょという風に銅と頭をぐりぐりとくっつけている。
ユリカははっとした。
自分が驚いている合間にさっきの攻撃がなかったことにされたのだから。
「あ、と。驚いている暇はないんだった…。とりあえず、さっきみたいに銅と生首切り離せばいいよね…?」
人間は一回で学習ができるので同じ手を続けざま2回使うことなんでしないが、魔物は普通の動物よりちょっと頭がいい程度なので2回くらいなら大丈夫だろと思い、同じように切り落とすことにした。
本当に学習していないらしくさっきと同じように突進してきて同じように切られたのにはちょっと驚いたけど。
「うーん、ここまでやってどうしたらいいんだろう…。とりあえずこの生首を捕まえておけばいいのかな?」
初めての敵でよくわからないし、見たことない魔物で対処の仕方に困ったユリカは、なんとなく逃げる生首を捕まえた。
この生首、跳ねることしかできないらしくじたばたともがきながらも手の中から逃れることはなかった。
この生首を持っていると銅の方はなんだかあたふたしだして突進してこなくなった。
「なんか、かわいそうなんだけど。どうしたらいいのこれ…。」
その様子に思わずあきれるような声が出る。
生首を持ちながら悩んでいると後方から聞きなれた声が聞こえてきた。
「ユリカーーーー!!!」
それは紛れもなくジャックウルフを倒し終え、追いついたリズとタローだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...