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幼少期
ルキ
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そして私の「人生初の友達を作ろう作戦~ルキと話せるようになろう編~」が幕を開けたのであった。
私はその日作戦を決行することにし、朝早くに目覚めた。
作戦その1 とりあえず意味もなく話しかけてみる
ルキは毎日誰よりも朝早くに起き、掃除等の当番制の家事、又は川で自主練をしている。
今日は前日に確認を取ってもらって(オヴギガから、もちろん喜んで手伝ってくれた。)家事当番ではないことが分かっているので、川にいるはずだった。
私はそさくさと川に向かう。
外に出るとまだあたりは白く鈍い光をまとっており、肌寒い風が身震いをさせた頃だった。
草木が茂る獣道を抜けるとシャッシャッと風を切る音とともにゆったりと流れる細く浅い川が見えてくる。
探していた当人はそんな川の隣で剣を持ち一心に振っていた。
その真剣な面差しからは彼が努力家であることを表していた。
見っけ!今日は剣か…。
ここ数日、彼を観察してこの朝の自習が剣と魔法、交互に行われていることを私は知っていた。
キュリアスの弟子たちは大抵、剣士か魔法使いのどちらかであることが多い。
そもそも魔法剣士の素質を持ちながら冒険者として活動することができるレベルの者も数が少ないため、いくらキュリアスが魔法剣士でもその弟子たちすべてが魔法剣士ではない。
その中でルキは魔法剣士としての素質があるらしく、そのせいものあって私とパートナーを組まされてもいる。
私はいつもの体で木の陰に身を潜めた。
すっかり観察ストーカーの癖がついてしまっていることに本人は気が付いていなかった。
ど、どのタイミングで行けばいいんだろう…。
私は一生懸命剣を振っているルキを見て、なんだか話しかけづらいなと思った。
こんな時はどうすればよかったんだっけ…。
私にとって今一番頼りにできるものは前世の記憶だった。
何となく読んだ本………確か「これで君も友達ゲッチュ」という明らかにふざけてる題名の本を思い出してみる。
えーっと、こういう時は一緒にやろうよと相手と同じことをして、共通の話題を生み出すだったかな?
って、生み出すもなにも私たちは同じ師の元で修行しているパートナーだった。
「……ええええええっとぉぉ…ひゅっ、ひゅきひゃんっぅ!」
しまった、心の準備を忘れていた、動揺してかみかみじゃないか。
そう思ったのもすでに遅く会話(一方的)は進んでいく。
ルキは上ずったユリカの声などものともせず「なに?」と問うように剣を振る手を止め、こちらに振り向く。
「えっと…、一緒に剣の鍛練しても良いですか?」
パートナーなのだからと、自分に言い聞かせおそるおそる聞いてみる。
「………」
あれ、返事がないぞ…。
つかの間沈黙があると、ルキは突然持っていた剣を構えて川の向こうを睨んだ。
「来る…。」
「ふぇ?…しゃ…しゃべっ…!?」
やったと歓声を挙げる暇もなく私はルキの言った言葉の意味を瞬間的に理解した。
そう、来るのだ、何かが。
剣を構えるルキを横目に自分も愛剣を構える。
「戦うのですか?これは強いですよ、師匠たちに報告するべきです。」
今の状況で一番の最善策はそれだ、なのにも関わらずルキは動こうとしない。
「………」
何を考えているのか…、でもルキが戦うつもりならば1人にさせておく訳にもいかず…。
「しょうがないですね、わかりました。私も戦います、良いですよね?」
「………だ」
「良いですよね?私たち仮にもパートナーですしね?!」
ちょっと大袈裟に、食い気味で言うとなにも言わなくなった。
あ、やった、勝った。
などとなにと勝負しているのかもわからないまま私は上機嫌で敵を迎えた。
ざわざわと前から来る風で揺れる草木たちと、慌てたようにここから離れていく動物たちを見ると、いまから来るであろうものはとんでもないやつであるということが分かる。
俺は俺で前から来る魔力に押されて冷や汗をかいている。
ーーー俺、なんでこんなことしてるんだろうな…。
おい込められる気持ちがするからか、急にそんな風な考えが頭をよぎる。
俺は、強くなりたかった。
お腹を痛めて俺をこの世に誕生させてくれた親であった人たちは、物心つく前に俺を捨てていった。
別に親であっただろう人たちが憎いわけでもない、会ったこともないような人物たちを憎む趣味なんて持ち合わせていない。
ただ、生きたくて、生きていたくて。
小さすぎてよく覚えてはいないが、スリ、万引き、人殺し、いろいろやったと思う。
この中で俺は強くなれば生きていけるのだと知った。
ひたすらに剣を降って、鍛練して。
いつしか魔法が使えるようにもなっていた。
それからはとても生きやすくなったものだ。
魔法は素晴らしいくらいに俺の力になってくれた。
そうやって悪いことばかりしていたら、ある日突然俺は負けた。
そして剣を突きつけられて言われた。
「お前、生きたいか?」と。
俺はもちろんと言う様に睨み付けた。
「いいね、その目。来い、お前にお似合いの職業があるから。」
その人は…、キュリアスは俺を血生臭い場所から連れ出し、剣と魔法を教えてくれている。
なのになんでなのか、ちっとも楽しくなんてなかった。
生きていられさえすれば良い、強くなれれば良い、そう思っていたのに。
不思議と最近は満たされない感じがしてイライラとした。
そんな風に日々を退屈に過ごしていたら、キュリアスが勝手に俺にパートナーをつけた。
ちびなガキで幸せそうにニコニコと笑うものだから、なにがそんなに面白いのだろうかと気がつけば目を追っていた。
そうしていたらイライラしてるのが少しましになった気もしたし、退屈しのぎになった。
話しかけられてもなんと返したら良いかもわからない、今まで仕事などで必要最低限の会話以外したことないものだから。
俺は俺の気持ちが分からなくなる。
自分は何がしたいのだろうか。
今朝もそうだ、朝の自主練中に敵が襲いかかってくると分かると否や、急に戦ってみたくなった。
前はそんな命知らずなことしようなんて思わなかったのに。
ほんと、俺、どうしたんだろうな…。
私はその日作戦を決行することにし、朝早くに目覚めた。
作戦その1 とりあえず意味もなく話しかけてみる
ルキは毎日誰よりも朝早くに起き、掃除等の当番制の家事、又は川で自主練をしている。
今日は前日に確認を取ってもらって(オヴギガから、もちろん喜んで手伝ってくれた。)家事当番ではないことが分かっているので、川にいるはずだった。
私はそさくさと川に向かう。
外に出るとまだあたりは白く鈍い光をまとっており、肌寒い風が身震いをさせた頃だった。
草木が茂る獣道を抜けるとシャッシャッと風を切る音とともにゆったりと流れる細く浅い川が見えてくる。
探していた当人はそんな川の隣で剣を持ち一心に振っていた。
その真剣な面差しからは彼が努力家であることを表していた。
見っけ!今日は剣か…。
ここ数日、彼を観察してこの朝の自習が剣と魔法、交互に行われていることを私は知っていた。
キュリアスの弟子たちは大抵、剣士か魔法使いのどちらかであることが多い。
そもそも魔法剣士の素質を持ちながら冒険者として活動することができるレベルの者も数が少ないため、いくらキュリアスが魔法剣士でもその弟子たちすべてが魔法剣士ではない。
その中でルキは魔法剣士としての素質があるらしく、そのせいものあって私とパートナーを組まされてもいる。
私はいつもの体で木の陰に身を潜めた。
すっかり観察ストーカーの癖がついてしまっていることに本人は気が付いていなかった。
ど、どのタイミングで行けばいいんだろう…。
私は一生懸命剣を振っているルキを見て、なんだか話しかけづらいなと思った。
こんな時はどうすればよかったんだっけ…。
私にとって今一番頼りにできるものは前世の記憶だった。
何となく読んだ本………確か「これで君も友達ゲッチュ」という明らかにふざけてる題名の本を思い出してみる。
えーっと、こういう時は一緒にやろうよと相手と同じことをして、共通の話題を生み出すだったかな?
って、生み出すもなにも私たちは同じ師の元で修行しているパートナーだった。
「……ええええええっとぉぉ…ひゅっ、ひゅきひゃんっぅ!」
しまった、心の準備を忘れていた、動揺してかみかみじゃないか。
そう思ったのもすでに遅く会話(一方的)は進んでいく。
ルキは上ずったユリカの声などものともせず「なに?」と問うように剣を振る手を止め、こちらに振り向く。
「えっと…、一緒に剣の鍛練しても良いですか?」
パートナーなのだからと、自分に言い聞かせおそるおそる聞いてみる。
「………」
あれ、返事がないぞ…。
つかの間沈黙があると、ルキは突然持っていた剣を構えて川の向こうを睨んだ。
「来る…。」
「ふぇ?…しゃ…しゃべっ…!?」
やったと歓声を挙げる暇もなく私はルキの言った言葉の意味を瞬間的に理解した。
そう、来るのだ、何かが。
剣を構えるルキを横目に自分も愛剣を構える。
「戦うのですか?これは強いですよ、師匠たちに報告するべきです。」
今の状況で一番の最善策はそれだ、なのにも関わらずルキは動こうとしない。
「………」
何を考えているのか…、でもルキが戦うつもりならば1人にさせておく訳にもいかず…。
「しょうがないですね、わかりました。私も戦います、良いですよね?」
「………だ」
「良いですよね?私たち仮にもパートナーですしね?!」
ちょっと大袈裟に、食い気味で言うとなにも言わなくなった。
あ、やった、勝った。
などとなにと勝負しているのかもわからないまま私は上機嫌で敵を迎えた。
ざわざわと前から来る風で揺れる草木たちと、慌てたようにここから離れていく動物たちを見ると、いまから来るであろうものはとんでもないやつであるということが分かる。
俺は俺で前から来る魔力に押されて冷や汗をかいている。
ーーー俺、なんでこんなことしてるんだろうな…。
おい込められる気持ちがするからか、急にそんな風な考えが頭をよぎる。
俺は、強くなりたかった。
お腹を痛めて俺をこの世に誕生させてくれた親であった人たちは、物心つく前に俺を捨てていった。
別に親であっただろう人たちが憎いわけでもない、会ったこともないような人物たちを憎む趣味なんて持ち合わせていない。
ただ、生きたくて、生きていたくて。
小さすぎてよく覚えてはいないが、スリ、万引き、人殺し、いろいろやったと思う。
この中で俺は強くなれば生きていけるのだと知った。
ひたすらに剣を降って、鍛練して。
いつしか魔法が使えるようにもなっていた。
それからはとても生きやすくなったものだ。
魔法は素晴らしいくらいに俺の力になってくれた。
そうやって悪いことばかりしていたら、ある日突然俺は負けた。
そして剣を突きつけられて言われた。
「お前、生きたいか?」と。
俺はもちろんと言う様に睨み付けた。
「いいね、その目。来い、お前にお似合いの職業があるから。」
その人は…、キュリアスは俺を血生臭い場所から連れ出し、剣と魔法を教えてくれている。
なのになんでなのか、ちっとも楽しくなんてなかった。
生きていられさえすれば良い、強くなれれば良い、そう思っていたのに。
不思議と最近は満たされない感じがしてイライラとした。
そんな風に日々を退屈に過ごしていたら、キュリアスが勝手に俺にパートナーをつけた。
ちびなガキで幸せそうにニコニコと笑うものだから、なにがそんなに面白いのだろうかと気がつけば目を追っていた。
そうしていたらイライラしてるのが少しましになった気もしたし、退屈しのぎになった。
話しかけられてもなんと返したら良いかもわからない、今まで仕事などで必要最低限の会話以外したことないものだから。
俺は俺の気持ちが分からなくなる。
自分は何がしたいのだろうか。
今朝もそうだ、朝の自主練中に敵が襲いかかってくると分かると否や、急に戦ってみたくなった。
前はそんな命知らずなことしようなんて思わなかったのに。
ほんと、俺、どうしたんだろうな…。
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