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少女編
ライト村
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森の外は平原で、太陽がポカポカとしていて気持ちがいい。
平面だから走りやすいし、今日の目的地であるライト村にも容易に着いてしまった。
四時間のジョギングを行ったものの、太陽はまだ、頂点にまで達しておらず、暇になってしまった。
村唯一の旅籠屋にチェックインを済ませ、何もすることが無くなってしまったため、フラフラとギルドへと向かう。
一軒家のようなギルドは狭く、人数も少ない。
冒険者のほとんどが村人のようで、二十歳ほどの若者の男性ばかり。
そんな中、突然現れた十歳の少女に村人たちは戸惑った。
「嬢ちゃん、ここはギルドだ。危ないからお外で遊んでおいで」
親切心なんだろうか、少し年老いた男性が優しい口調で外を指差す。
「いえ、結構です。ちょっと暇なのでクエストを受けに来ました。私は冒険者ですよ、こう見えて」
腰にぶら下げている愛用の剣を取って見せて、暗に「ここは子供の来る場所じゃない」と言ってくるおじさんににこやかに返す。
お髭がジャリジャリとしてそうな、厳つい顔のおじさんは、私の口調に違和感があるらしく眉を潜めた。
「ーーーいや、すまなかった。どうやら検討違いのようだ。失礼だとは思うが、いくつか聞いても?」
「十歳です。ですが、腕には自信がありますよ、戦ってみますか?」
魔力をじわりと少し滲ませれば、笑っていたおじさんの顔も少し青くなる。
「お断りするよ、勝てそうじゃない。老体は無理するべきじゃないからな」
老体って、五十代に見えるんだけど。
しかし、この世界での死亡平均は六十ほど。
そう考えると、老体かもしれない。
「おいおい、じいさん。こんなガキ相手になに言ってんだ?追い返すべきだろ」
比較的若い者がおじさんに反撃する。
「なぁ、嬢ちゃん。ここは遊び場じゃないんだぜ?とっとと家に帰りな」
この人にはさっきの魔力圧がわからなかったようだ、きっと今でも彼の目では私は保護するべき子供なのだろう。
おじさんは、なにか言いたげに困った視線を若者に向ける。
「………生憎ながら、私は今日来たばかりのよそ者です。帰る家はありません」
その言葉に若者は絶句した。
この村はそれなりに豊かで治安がとてもいいらしい。
「そうか、外から来たのか。にして、どのくらい滞在する気なのだ?」
穏やかに、おじさんは聞いてくる。
顔に反して優しい人みたいだ。
「いえ、明日には出ます。滞在する気はありません」
「ーーーりょ、両親は居ないのか?………」
若者はまだわかっていないようだ。
おじさんが鎮めようとするのをあえて止めて、話を続ける。
「いません、じゃなきゃここにはいないでしょ?私の両親は四年前に亡くなっています」
あくまで、他人事のように。
そうでもしなきゃ、この人が可哀想だから。
「…そ、その………。すまなかった…………」
謝るくらいなら、聞かないでくれ。
若者は手を固く結んでいる。
「だがっ!君のような子がここに居るのは………」
その先を言おうとしたのを私は殺気を出して強制的にやめさせる。
「勝手に私の居場所を、あなたの我で取らないでください」
はっとしたように若者は顔を上げる。
そしてしゅんと項垂れた。
辺りがしーんと静まり返り、一気に居心地が悪くなる。
私は気にせずクエストボードを見に行く。
採取系のクエストは少なく、討伐系は多い。
これは村に討伐クエストを受けられるような人がいないのだろう。
ホーンラビットや、ワードッグのようなD級モンスターはいいものの、ゴブリンやオーガといったC級モンスターは倒せないらしい。
C級とD級の違いは理性にあり、C級以上は戦いの上で策を練ることが出来るくらいの知性があることがみられる。
彼らは武器を持つことも容易にするので、対処が大変になる。
そのため、個体としてはワードッグよりも弱いゴブリンはC級なのだ。
しかし、困ったことに討伐依頼を受けたくても正式に冒険者登録をしていないため不可能。
採取のほうも良さげなのがなく、クエストボードから離れた。
そのまま流れるようにギルドを立ち去り、森がある方面へと足を運んだ。
平面だから走りやすいし、今日の目的地であるライト村にも容易に着いてしまった。
四時間のジョギングを行ったものの、太陽はまだ、頂点にまで達しておらず、暇になってしまった。
村唯一の旅籠屋にチェックインを済ませ、何もすることが無くなってしまったため、フラフラとギルドへと向かう。
一軒家のようなギルドは狭く、人数も少ない。
冒険者のほとんどが村人のようで、二十歳ほどの若者の男性ばかり。
そんな中、突然現れた十歳の少女に村人たちは戸惑った。
「嬢ちゃん、ここはギルドだ。危ないからお外で遊んでおいで」
親切心なんだろうか、少し年老いた男性が優しい口調で外を指差す。
「いえ、結構です。ちょっと暇なのでクエストを受けに来ました。私は冒険者ですよ、こう見えて」
腰にぶら下げている愛用の剣を取って見せて、暗に「ここは子供の来る場所じゃない」と言ってくるおじさんににこやかに返す。
お髭がジャリジャリとしてそうな、厳つい顔のおじさんは、私の口調に違和感があるらしく眉を潜めた。
「ーーーいや、すまなかった。どうやら検討違いのようだ。失礼だとは思うが、いくつか聞いても?」
「十歳です。ですが、腕には自信がありますよ、戦ってみますか?」
魔力をじわりと少し滲ませれば、笑っていたおじさんの顔も少し青くなる。
「お断りするよ、勝てそうじゃない。老体は無理するべきじゃないからな」
老体って、五十代に見えるんだけど。
しかし、この世界での死亡平均は六十ほど。
そう考えると、老体かもしれない。
「おいおい、じいさん。こんなガキ相手になに言ってんだ?追い返すべきだろ」
比較的若い者がおじさんに反撃する。
「なぁ、嬢ちゃん。ここは遊び場じゃないんだぜ?とっとと家に帰りな」
この人にはさっきの魔力圧がわからなかったようだ、きっと今でも彼の目では私は保護するべき子供なのだろう。
おじさんは、なにか言いたげに困った視線を若者に向ける。
「………生憎ながら、私は今日来たばかりのよそ者です。帰る家はありません」
その言葉に若者は絶句した。
この村はそれなりに豊かで治安がとてもいいらしい。
「そうか、外から来たのか。にして、どのくらい滞在する気なのだ?」
穏やかに、おじさんは聞いてくる。
顔に反して優しい人みたいだ。
「いえ、明日には出ます。滞在する気はありません」
「ーーーりょ、両親は居ないのか?………」
若者はまだわかっていないようだ。
おじさんが鎮めようとするのをあえて止めて、話を続ける。
「いません、じゃなきゃここにはいないでしょ?私の両親は四年前に亡くなっています」
あくまで、他人事のように。
そうでもしなきゃ、この人が可哀想だから。
「…そ、その………。すまなかった…………」
謝るくらいなら、聞かないでくれ。
若者は手を固く結んでいる。
「だがっ!君のような子がここに居るのは………」
その先を言おうとしたのを私は殺気を出して強制的にやめさせる。
「勝手に私の居場所を、あなたの我で取らないでください」
はっとしたように若者は顔を上げる。
そしてしゅんと項垂れた。
辺りがしーんと静まり返り、一気に居心地が悪くなる。
私は気にせずクエストボードを見に行く。
採取系のクエストは少なく、討伐系は多い。
これは村に討伐クエストを受けられるような人がいないのだろう。
ホーンラビットや、ワードッグのようなD級モンスターはいいものの、ゴブリンやオーガといったC級モンスターは倒せないらしい。
C級とD級の違いは理性にあり、C級以上は戦いの上で策を練ることが出来るくらいの知性があることがみられる。
彼らは武器を持つことも容易にするので、対処が大変になる。
そのため、個体としてはワードッグよりも弱いゴブリンはC級なのだ。
しかし、困ったことに討伐依頼を受けたくても正式に冒険者登録をしていないため不可能。
採取のほうも良さげなのがなく、クエストボードから離れた。
そのまま流れるようにギルドを立ち去り、森がある方面へと足を運んだ。
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