西洋少女と仮面卿の恋愛

ごーぐる

文字の大きさ
3 / 3

2話

しおりを挟む
 とある洗礼された明国朝廷の一室。雷卿と人々に恐れられる少保の浩宇は目の前の少女に困り果てていた。
「働かせて」
 そう言う少女は浩宇の仕事机に顔だけを覗かせている。朝会から帰ってきてからずっとこうだ。浩宇は戯れ言だと無視していたが、もうすぐ日が上りきり真上を通りすぎようとしている。そろそろ給仕の女官が食事を持ってくる、それまでにこの状況をどうにかしたかった。
「はぁ………。朝廷ではお前のような孤児に居場所はない。帰れ」
 浩宇がそう言っても少女は動かずじっと浩宇を見つめていた。始めのうちはそのうち飽きるだろうと無視していた浩宇も遂に鬱陶しくなり筆を置き、茶を一口飲んだ。
「………お前は何が出来る」
「ーーーいいの?」
 少女は嬉しそうに破顔一笑する。そして自分の出来ることを順序だてて言い表す。
「文字読める。掃除、家事、あと計算とか」
 浩宇は徐に机の上の紙束から一枚の紙を少女に手渡す。すると少女は少し考えてからその内容をすらすらと話し始めた。
「ちゃんと喋ることが出来るのではないか。なぜしっかりとした口調で話さない」
「この国の敬語文化は面倒、向こうみたく簡潔じゃない。でもここでは貴方は偉い人。必要なら使うけど」
 浩宇ははぁと溜め息をついた。少女は静かに書類を机に戻す。そして部屋を見渡した。
「人手が足りてるとは思えない。なんなら、裏切られたら殺されても良いって誓約書書いてもいいよ」
「いや、いい。そうだな………、とりあえずそこの束の計算が合っているか見てくれ」
 少女は指示された書類を持ち上げ、デスク隣の長椅子に座る。紙を捲る音を聞き、浩宇は茶を置いてまた仕事に戻るのであった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

逆ハーエンドということは。

竹 美津
恋愛
乙女ゲームの逆ハーレムエンドの、真のエンディングはこれだ!と思いました。 攻略対象者の家族が黙ってないよね、って。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

婚約破棄短編集

由香
恋愛
更新週3投稿の午前10時。(火・木・土) 12/23 一時更新停止 「異世界×貴族×婚約破棄×傍観者」 をテーマにした短編集です。 それぞれ一話完結。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

処理中です...