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2話
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とある洗礼された明国朝廷の一室。雷卿と人々に恐れられる少保の浩宇は目の前の少女に困り果てていた。
「働かせて」
そう言う少女は浩宇の仕事机に顔だけを覗かせている。朝会から帰ってきてからずっとこうだ。浩宇は戯れ言だと無視していたが、もうすぐ日が上りきり真上を通りすぎようとしている。そろそろ給仕の女官が食事を持ってくる、それまでにこの状況をどうにかしたかった。
「はぁ………。朝廷ではお前のような孤児に居場所はない。帰れ」
浩宇がそう言っても少女は動かずじっと浩宇を見つめていた。始めのうちはそのうち飽きるだろうと無視していた浩宇も遂に鬱陶しくなり筆を置き、茶を一口飲んだ。
「………お前は何が出来る」
「ーーーいいの?」
少女は嬉しそうに破顔一笑する。そして自分の出来ることを順序だてて言い表す。
「文字読める。掃除、家事、あと計算とか」
浩宇は徐に机の上の紙束から一枚の紙を少女に手渡す。すると少女は少し考えてからその内容をすらすらと話し始めた。
「ちゃんと喋ることが出来るのではないか。なぜしっかりとした口調で話さない」
「この国の敬語文化は面倒、向こうみたく簡潔じゃない。でもここでは貴方は偉い人。必要なら使うけど」
浩宇ははぁと溜め息をついた。少女は静かに書類を机に戻す。そして部屋を見渡した。
「人手が足りてるとは思えない。なんなら、裏切られたら殺されても良いって誓約書書いてもいいよ」
「いや、いい。そうだな………、とりあえずそこの束の計算が合っているか見てくれ」
少女は指示された書類を持ち上げ、デスク隣の長椅子に座る。紙を捲る音を聞き、浩宇は茶を置いてまた仕事に戻るのであった。
「働かせて」
そう言う少女は浩宇の仕事机に顔だけを覗かせている。朝会から帰ってきてからずっとこうだ。浩宇は戯れ言だと無視していたが、もうすぐ日が上りきり真上を通りすぎようとしている。そろそろ給仕の女官が食事を持ってくる、それまでにこの状況をどうにかしたかった。
「はぁ………。朝廷ではお前のような孤児に居場所はない。帰れ」
浩宇がそう言っても少女は動かずじっと浩宇を見つめていた。始めのうちはそのうち飽きるだろうと無視していた浩宇も遂に鬱陶しくなり筆を置き、茶を一口飲んだ。
「………お前は何が出来る」
「ーーーいいの?」
少女は嬉しそうに破顔一笑する。そして自分の出来ることを順序だてて言い表す。
「文字読める。掃除、家事、あと計算とか」
浩宇は徐に机の上の紙束から一枚の紙を少女に手渡す。すると少女は少し考えてからその内容をすらすらと話し始めた。
「ちゃんと喋ることが出来るのではないか。なぜしっかりとした口調で話さない」
「この国の敬語文化は面倒、向こうみたく簡潔じゃない。でもここでは貴方は偉い人。必要なら使うけど」
浩宇ははぁと溜め息をついた。少女は静かに書類を机に戻す。そして部屋を見渡した。
「人手が足りてるとは思えない。なんなら、裏切られたら殺されても良いって誓約書書いてもいいよ」
「いや、いい。そうだな………、とりあえずそこの束の計算が合っているか見てくれ」
少女は指示された書類を持ち上げ、デスク隣の長椅子に座る。紙を捲る音を聞き、浩宇は茶を置いてまた仕事に戻るのであった。
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