何でも運びますタチバナ星間運輸

郡山浩輔

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 アキラは社内で仕事する社員たちに手で挨拶しながらマカヴォイトランスポーツを後にしたアキラ達一行は、そのままシャトル駐機場に戻り、二人と一匹でシャトルの安全確認をした後、シャトルのコンピューターを立ち上げてステーションまでのフライトプランをシャトル管制に送った。

『こちら管制です。タチバナ号のフライトプラン受領確認しました。基船のトランスポンダーは〇二四六八五、B12通行路からK通行路を経由して十六番カタパルトへ向かってください。射出後は高度一六〇〇〇〇でKIRKOを経由してBステーションへ向かってください。またカタパルト到着次第、タワーと連絡を取ってください』

 フライトプラン送信後すぐに管制から受諾連絡が入ったので、復唱する。

「こちらタチバナ号、トランスポンダーを〇二四六八五にセット。B12からK経由で十六番カタパルトに向かいます。射出後は高度一六〇〇〇〇でKIRKO経由でBステーションに向かいます」
『復唱合ってます。トランスポンダーも確認できました。良い旅を』
「ありがとう」

 船長としての通信を終えたアキラは管制から伝えられた飛行ルートをコンピューターに登録したフライトプランに挿入しミレーヌと一緒にエンジン点火前まで機体セッティングと確認を進める。クロはというと、アキラが作ったクロ用のシートに座り、ベルトボタンを押して既に準備完了である。

 期待のセッティングを終えたアキラは駐機グランドに連絡をし、シャトルのプッシュバックを求めた。

『こちらグランド。プッシュバックを開始する。パーキングブレーキをオフにして滑走エンジンを点火せよ』
「了解」

 アキラはミレーヌにパーキングブレーキを解除させてその旨をグランドに伝えると、シャトルが動き出した。

「ミレーヌ、滑走エンジン点火」
「はい、滑走エンジン点火」

 滑走エンジンの点火を計器でチェックしてグランドマンにもチェックしてもらい正常点火を確認した。
 プッシュバックが終わると今度は、ブースター油圧確認を行ない、正常であることを確認してカタパルトまでのタキシングを開始した。

「いつものことながら人間の乗り物って大変ね」

 とクロが溜息をつきながら言う。

「その人間のシャトルにただ乗ってるだけなのはお前だろクロ」
「それを言われたらアタシも何も言えないわ」

 アキラとクロの会話を聞きながらミレーヌは吹き出す。

「あ、ミレーヌ、今アタシを笑ったでしょ!」
「そんなことないわよ。いつものことながら面白い会話だなと……」
「あーやっぱり笑ってるじゃない!覚えておきなさい、アンタのベッドにネズミ仕込んどくんだから」
「それはヤメテ!」

 いつもの二人と一匹の会話だ。これもルーティンと言えなくもないかもしれない。

 さて、シャトル「タチバナ号」はカタパルト付近まで来たのだが、この時間混み合っているのか射出待ちが五機もいた。

「こりゃ十分くらいの待ちかなー」
「そうかもしれないわね」
「ニャー……」
「仕方ない、空くまでなんかないか?」
「アキラ、あなたそうやっていつも丸投げよね」
「ニャー!」

 一人と一匹からクレームをつけられるアキラ。

「だってさ、俺は操縦に集中しなきゃなんねーだろ?」
「苦しい言い訳ニャー」
「ならしりとりでもしない?」
「しりとりかぁ……」
「いいんじゃない?」
「じゃあ私、クロ、アキラの順でいい?」
「いいわよ」
「なんかしりとりにならない気もするが……まぁいいだろ」

 ということで待ち時間をしりとりで過ごすことになったのだか――

「じゃあね、アキラ」
「ランドハルにゃー」
「ルービス」
「アキラ、ニャーまでだからね」

 と、せっかく答えたのにクロからダメ出しが入る。

「なら……あ、あ、あ、アンドラ」
「ラパス」
「スパニャー」
「もしかしてこれもニャーまでか?」
「「もちろん!」」

 アキラの問いにミレーヌとクロがハモる。

「マジか………あ、あ、アデル」
「ルート」
「トークニャー」
「またニャーかよ……あ、あ、あ……」

 アキラが「あ」から始まる言葉を探してるところにミレーヌとクロがカウントダウンを始める。――そして、

「「ゼロー!」」
「アキラの負けね」
「ニャ!」
「クロのニャーはズルいぞ!」
「だって猫だもん」

 と何食わぬ顔して言うクロ。
 それが正しいだけにアキラは何も言えないのだった――。

 そうこうしている内に前はだいぶ履けていき、次がタチバナ号射出。前にいるのは大型旅客機。緑と白のツートンカラーを基調としたマヤ星系のマヤスペースラインのラカマダ社製RM899‐700という機体だ。
 このシャトルはブースターエンジンが最大十基ついており、大気圏離脱にそれだけ多くのトルクを必要とする機体であることがわかる。
 因みに旅客機のブースターは使い捨てではなく、燃焼終了し分離されたらそのまま宇宙港南方にある各会社用のブースター回収施設まで自動帰還するように設計されている。この技術があるからこそ、ステーションからではなく地上からの大気圏離脱を可能としているのだ。
 また、シャトルの中では「対Gキャンセラー」というものがついていて、射出時の強烈な重力を乗客に感じさせないような装置までついていたりする。

 マヤスペースラインのシャトル後方のカタパルトに熱防護シールドが展開され、ブースターが点火される。それから数秒後、轟音とともに大型シャトルが空中に打ち上げられ、あっという間に見えなくなってしまう。

「毎回見るたびに思うけど、人間のやることってすごいと思うわ」

 と、クロが溜息混じりにそう言う。

「確かになー。俺が修学旅行でラオ星系に行ったときにあのクラスの旅客機に乗ったけど、全くと言っていいほどに揺れないし体も押し付けられないしで、すげぇと思ったもんだよ」
「それなら、このシャトルにも揺れない装置をつけたらアタシもラクになるのに……」
「無茶言うな。そもそもこんな小型シャトルそんなにGかかってないだろ」
「人間には良くても猫にはキツいのよ!」
「そりゃ人間様の乗るものだからなー」
「アンタ、後で覚えときなさいよ!」

 アキラとクロのやり取りをミレーヌが笑いながら聞いている。

「なによ、ミレーヌ!アンタまでアタシを舐める気?」

 クロのストレスの矛先がミレーヌに向く。

「いやいや、クロを舐めるなんて……」
「そう?私は舐めるわよ。物理的に」
「ア、アハハ……」

 クロが口の周りを舌なめずりする仕草を見て、ミレーヌは顔を引きつらせるのだった。
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