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五
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『タチバナ号、射出カタパルトまで前進してください』
「了解した。タチバナ号、射出カタパルトまで前進する」
管制タワーからカタパルトまでの前進指示がでた。
「いよいよ出発だ。下を噛まないようにしておけよ?」
「私はいつでもどうぞ」
「ア、アタシも……い、いつでも……い、良いわよ……」
ミレーヌは済まして返答、対するクロは冷や汗なのか脂汗なのかをびっしょりかいてシートに丸いシミが上塗りされていくような様子。
シャトル「タチバナ号」が射出カタパルトまで前進してローンチバーがカタパルトに固定される。
『ローンチバーのカタパルトへの固定を確認。タチバナ号、ブースター点火用意してください』
管制の指示でアキラがブースター点火位置までダイヤルを回し、ミレーヌがブーフター点火用の燃料バルブの圧力と空気混合圧力の値が正常であることを確認する。
「こちらタチバナ号、ブースター点火準備完了」
アキラが管制へ報告を済ませた時、後ろに座っているクロからゴクリというつばを飲み込んだ音が機内に盛大に響く。思わず吹き出しそうになるミレーヌだったが、クロのギロリという視線を感じて笑いを飲み込んだ。
「そろそろ来るぞ。みんな衝撃に備えておけ」
「了解」
「わ、わかったわ……はやく……す、済ませてちょうだい……」
アキラの声に普通に答えるミレーヌと、引きつった回答をするクロ。
そして……
『タチバナ号、ブースター点火!』
管制からの指示が来て、アキラはブースター点火ボタンを押し込む。途端に後方からの轟音と共にブルブルと震える衝撃が来る。
「タチバナ号、ブースター点火完了!」
『了解。射出まで五秒……』
カウントダウンが開始され機内に緊張が走る。特にクロの緊張は半端ない様子だ。
『三……ニ……一……射出!』
管制のカウントダウン終了と同時に後方へ体が押し付けられる重力を感じる。
「つ、つ、つぶれる……!」
クロが涙目で訴えるが、射出されてしまったのだからもうどうすることもできない。
クロだけでなくミレーヌも目を瞑りその重力に耐えている。
射出から数秒後、高度一〇〇〇〇〇を超えたところでブースターが閉鎖される。小型シャトルのブースターは切り離さないタイプが多い。理由は「経費削減」である。多分に漏れることなく、たちばな号もブースターは切り離さないタイプだ。
高度一六〇〇〇〇に達したのでKIRKOに機種を向ける。
この作業も慎重に行わないと重力の壁に跳ね返されて墜落してしまう。船舶操縦免許の取得率がなかなか上がらないのはこのためでもある。逆に言えば、それだけ空の旅はかなり安全であるとも言えるのだ。
KIRKOを抜けてしばらくするとそれまで感じていた重力がフッと軽くなった。それが大気圏から脱出できた合図だ。
「ニャニャッ!」
後ろで髭を逆立たせているクロが手も足も動かせない煩わしさからか何やら訴えている。
いや、そういう時こそ人語で話すべきだろうクロよ――
大気圏脱出から数分後、目の前にBステーションのライトが見えてきた。
そして――
『こちらダリアBステーション、トランスポンダー〇二四六八五の貴船の船名と目的を返答せよ』
とBステーションから無線が入った。つまりBステーションの監視区域に入ったということである。
「こちらトランスポンダー〇二四六八五、船名『タチバナ号』。目的は運搬船ソフィア号への乗り換えとマカヴォイトランスポーツ経由での輸出運搬」
『船名、目的及び音声の照合完了。お疲れ様ですアキラ・タチバナ。貴船の入港を許可します。十二番ゲートからの入稿を許可します』
「入港許可ありがとう。十二番ゲートへ向かいます」
無線通信が終わると誘導レーザーが照射され、その誘導に沿って機首を十二番ゲートに合わせる。
シャトルが誘導ポイントにのったところで再び無線が入る。
『誘導ポイント通過。ゲート侵入までこちらで誘導を行います。もし誘導に従わない場合はダリア宇宙航行法に基づき貴船を拿捕しますのでご注意を』
「了解、誘導お願いします」
『誘導ロックまで三、ニ、一、ロック』
NDに「LCK」と表示された事で誘導ロックされたことがわかる。
アキラは操縦桿から手を離し、レーザー誘導に身を任せる。
「何度経験してもこの誘導には馴染めないわ」
「何もしてないクロがそれを言うのか」
「まぁクロだから」
コックピットの二人が笑つが、その後ろで納得行かない表情のクロ。
「でもさ、普段はオレオレな話し方のアキラなのに、管制にだけは敬語なんだよね」
「そりゃお前、天下の管制様だからな。管制様に目をつけられないようにおとなしく猫かぶってなきゃ」
クロの指摘にアキラがそう返すと、クロはケラケラ笑って、
「アキラが猫かぶったら速攻で襲ってあげるわ」
と、固定された前足の爪を出すクロ。しかも獲物をロックオンした表情。
「クロ、その表情は怖いわよ……」
「怖い顔してんだもの当たり前じゃない」
平常運転中のクロであった。
『タチバナ号、着艦脚を展開せよ』
「こちらタチバナ号、脚を展開します」
シャトルがゲートをくぐったところで、管制から指示が来たので、アキラはミレーヌに着艦脚の展開の指示を出し、展開を確認しその旨を伝えると、下から少し押されるような軽いショックを感じた。六角形の台の真ん中にシャトルが着陸した形になっていて、また各角からの電磁ワイヤーが脚の電磁フックに固定されたのである。
『このまま駐機ポートまで誘導する。エンジンを停止せよ』
「こちらタチバナ号、了解」
管制の指示に従い、アキラがエンジンへの燃料をカットして、ミレーヌと一緒に、計器とにらめっこしてエンジンが停止したのを確認する。
「管制、こちらタチバナ号。エンジン停止完了」
『タチバナ号、エンジン停止を確認。これより駐機ポートまで誘導を開始する。そのまま待機せよ』
「こちらタチバナ号、了解」
無線のやり取りの後、ガクンという衝撃とともにシャトルが誘導で移動を開始する。
目の前でシャトルを載せた複数の六角形の台が上に下に右に左にとそれぞれ移動している。そんな中、タチバナ号は七九五番駐機ポートに台が嵌まり動きが停止する。
『タチバナ号、誘導完了』
「こちらタチバナ号、誘導ありがとう」
『どういたしまして。では良い旅を』
「ありがとう」
無線通信の後、アキラ達一行は荷物とフィーの店からテイクアウトしてきたスイーツと料理の入った冷蔵庫のキャスターを出して冷蔵庫ごと下船しハッチを閉めると、アキラがマスターカードキーを挿して手の静脈と目の網膜でマスターロックをかけ、ステーションへの通用門へと向かった。
「アキラさん、まずは荷物をソフィア号に乗せてから行きましょうよ」
「ああ、そうしよう。その前に税関を通らないとな」
「あ、そうでした……」
「相変わらずのボケっぷりね、ミレーヌ」
「クロひどいよー!」
頭の上でツッコミを入れてくるクロを見上げながら抗議するミレーヌ。
平常運転状態な二人と一匹なのであった。
「了解した。タチバナ号、射出カタパルトまで前進する」
管制タワーからカタパルトまでの前進指示がでた。
「いよいよ出発だ。下を噛まないようにしておけよ?」
「私はいつでもどうぞ」
「ア、アタシも……い、いつでも……い、良いわよ……」
ミレーヌは済まして返答、対するクロは冷や汗なのか脂汗なのかをびっしょりかいてシートに丸いシミが上塗りされていくような様子。
シャトル「タチバナ号」が射出カタパルトまで前進してローンチバーがカタパルトに固定される。
『ローンチバーのカタパルトへの固定を確認。タチバナ号、ブースター点火用意してください』
管制の指示でアキラがブースター点火位置までダイヤルを回し、ミレーヌがブーフター点火用の燃料バルブの圧力と空気混合圧力の値が正常であることを確認する。
「こちらタチバナ号、ブースター点火準備完了」
アキラが管制へ報告を済ませた時、後ろに座っているクロからゴクリというつばを飲み込んだ音が機内に盛大に響く。思わず吹き出しそうになるミレーヌだったが、クロのギロリという視線を感じて笑いを飲み込んだ。
「そろそろ来るぞ。みんな衝撃に備えておけ」
「了解」
「わ、わかったわ……はやく……す、済ませてちょうだい……」
アキラの声に普通に答えるミレーヌと、引きつった回答をするクロ。
そして……
『タチバナ号、ブースター点火!』
管制からの指示が来て、アキラはブースター点火ボタンを押し込む。途端に後方からの轟音と共にブルブルと震える衝撃が来る。
「タチバナ号、ブースター点火完了!」
『了解。射出まで五秒……』
カウントダウンが開始され機内に緊張が走る。特にクロの緊張は半端ない様子だ。
『三……ニ……一……射出!』
管制のカウントダウン終了と同時に後方へ体が押し付けられる重力を感じる。
「つ、つ、つぶれる……!」
クロが涙目で訴えるが、射出されてしまったのだからもうどうすることもできない。
クロだけでなくミレーヌも目を瞑りその重力に耐えている。
射出から数秒後、高度一〇〇〇〇〇を超えたところでブースターが閉鎖される。小型シャトルのブースターは切り離さないタイプが多い。理由は「経費削減」である。多分に漏れることなく、たちばな号もブースターは切り離さないタイプだ。
高度一六〇〇〇〇に達したのでKIRKOに機種を向ける。
この作業も慎重に行わないと重力の壁に跳ね返されて墜落してしまう。船舶操縦免許の取得率がなかなか上がらないのはこのためでもある。逆に言えば、それだけ空の旅はかなり安全であるとも言えるのだ。
KIRKOを抜けてしばらくするとそれまで感じていた重力がフッと軽くなった。それが大気圏から脱出できた合図だ。
「ニャニャッ!」
後ろで髭を逆立たせているクロが手も足も動かせない煩わしさからか何やら訴えている。
いや、そういう時こそ人語で話すべきだろうクロよ――
大気圏脱出から数分後、目の前にBステーションのライトが見えてきた。
そして――
『こちらダリアBステーション、トランスポンダー〇二四六八五の貴船の船名と目的を返答せよ』
とBステーションから無線が入った。つまりBステーションの監視区域に入ったということである。
「こちらトランスポンダー〇二四六八五、船名『タチバナ号』。目的は運搬船ソフィア号への乗り換えとマカヴォイトランスポーツ経由での輸出運搬」
『船名、目的及び音声の照合完了。お疲れ様ですアキラ・タチバナ。貴船の入港を許可します。十二番ゲートからの入稿を許可します』
「入港許可ありがとう。十二番ゲートへ向かいます」
無線通信が終わると誘導レーザーが照射され、その誘導に沿って機首を十二番ゲートに合わせる。
シャトルが誘導ポイントにのったところで再び無線が入る。
『誘導ポイント通過。ゲート侵入までこちらで誘導を行います。もし誘導に従わない場合はダリア宇宙航行法に基づき貴船を拿捕しますのでご注意を』
「了解、誘導お願いします」
『誘導ロックまで三、ニ、一、ロック』
NDに「LCK」と表示された事で誘導ロックされたことがわかる。
アキラは操縦桿から手を離し、レーザー誘導に身を任せる。
「何度経験してもこの誘導には馴染めないわ」
「何もしてないクロがそれを言うのか」
「まぁクロだから」
コックピットの二人が笑つが、その後ろで納得行かない表情のクロ。
「でもさ、普段はオレオレな話し方のアキラなのに、管制にだけは敬語なんだよね」
「そりゃお前、天下の管制様だからな。管制様に目をつけられないようにおとなしく猫かぶってなきゃ」
クロの指摘にアキラがそう返すと、クロはケラケラ笑って、
「アキラが猫かぶったら速攻で襲ってあげるわ」
と、固定された前足の爪を出すクロ。しかも獲物をロックオンした表情。
「クロ、その表情は怖いわよ……」
「怖い顔してんだもの当たり前じゃない」
平常運転中のクロであった。
『タチバナ号、着艦脚を展開せよ』
「こちらタチバナ号、脚を展開します」
シャトルがゲートをくぐったところで、管制から指示が来たので、アキラはミレーヌに着艦脚の展開の指示を出し、展開を確認しその旨を伝えると、下から少し押されるような軽いショックを感じた。六角形の台の真ん中にシャトルが着陸した形になっていて、また各角からの電磁ワイヤーが脚の電磁フックに固定されたのである。
『このまま駐機ポートまで誘導する。エンジンを停止せよ』
「こちらタチバナ号、了解」
管制の指示に従い、アキラがエンジンへの燃料をカットして、ミレーヌと一緒に、計器とにらめっこしてエンジンが停止したのを確認する。
「管制、こちらタチバナ号。エンジン停止完了」
『タチバナ号、エンジン停止を確認。これより駐機ポートまで誘導を開始する。そのまま待機せよ』
「こちらタチバナ号、了解」
無線のやり取りの後、ガクンという衝撃とともにシャトルが誘導で移動を開始する。
目の前でシャトルを載せた複数の六角形の台が上に下に右に左にとそれぞれ移動している。そんな中、タチバナ号は七九五番駐機ポートに台が嵌まり動きが停止する。
『タチバナ号、誘導完了』
「こちらタチバナ号、誘導ありがとう」
『どういたしまして。では良い旅を』
「ありがとう」
無線通信の後、アキラ達一行は荷物とフィーの店からテイクアウトしてきたスイーツと料理の入った冷蔵庫のキャスターを出して冷蔵庫ごと下船しハッチを閉めると、アキラがマスターカードキーを挿して手の静脈と目の網膜でマスターロックをかけ、ステーションへの通用門へと向かった。
「アキラさん、まずは荷物をソフィア号に乗せてから行きましょうよ」
「ああ、そうしよう。その前に税関を通らないとな」
「あ、そうでした……」
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