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コボルト
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地上コボルトと地下一階のコボルトはほぼ同じ強さだ。少し前傾姿勢でたまに両手(前脚?)を地面に着いてダッシュしたり噛み付いたりしてくることもある。
地下二階のコボルトは少し体つきががっしりして、剣士、または拳士のような戦い方をするようになる。まだ少し前傾姿勢で、それが熟練の剣士(拳士)のように見えなくもない。
そして地下三階になるとコボルトナイトが現れる。背筋が伸びたせいだけでなく、実際に二回り以上体が大きくなって、その背の高さは二メートル近くになる。犬顔も少し精悍になったように感じるし、持っている剣も身に着けている鎧も随分としっかりしたものになっている。
まるで別人……まったく別の魔物だ。
でも、サイコキネシス版ストーンバレットや、普通の魔法ロックバレットでもまだ倒せる相手だから、僕にとっては命を脅かすほどの相手ではないけど。
オークに比べたら全然弱いし。
というわけで、再び大根掘りにやってきた僕は、新たなルートで地下三階まで降りてきて(ボスモグラとその仲間たちはファイアボールとウインドアローの乱射で突破した)、コボルトナイトや強化された木の根っこ、蝉の幼虫(?)などと戦いながら探索を続けていた。
今日はミスリルスタッフも使っているし、一人なので魔法も超能力も使いたいように使っている。
だから、戦闘自体は楽だ。
さて、では接近戦はどうか。
僕はコボルトナイトと 一対一で戦ってみた。
ミスリルスタッフを部屋に送り返して、まずは鉄棍で戦ってみる。
やらなければよかった。
なんと、鉄棍が折られてしまったのだ。
いや、僕が下手だから折られたのか。
オークの怪力に比べたら、コボルトナイトの方が力が弱いはずなのだけど、技術的なものもあるんだろうか。途中で短剣と盾に持ち替えた。相手の剣を丁寧に盾で受け流して、短剣で手足を傷付けていき、喉、腹を切り裂いてようやっと勝てた。
魔法と超能力が万能過ぎて、武器を使った戦いはダメダメに感じてしまう。やはり、僕はサイキッカーというクラスなんだなと痛感することになった。
まあ、実際、僕はサイキッカーなんだから接近戦は弱くても仕方ない。だから、その「弱い」ことを考慮して、強い武器や防具で補いつつ、自分ももっと動けるようにやっていくしかないだろう。
ただ、本当は魔法使い、という話もなんとなく受け入れられたっぽいし、もしも誰かと行動する時があっても後衛として扱ってもらえそうだけどね。
いや、この間は鉄棍でも戦えるところを見せてしまってるから、ギフのところと活動する時は前衛としての働きも要求されるかも知れないけど。
僕は折れてしまった鉄棍を部屋にアスポートで送り、アポートでミスリルスタッフを手元に呼び寄せた。
そしてそのまま地下三階を進む。
地下三階は地下二階よりも更に広いようで、なかなかボスエリアが見つからない。
時計(街の時計)を確認すると、既にもう、夜七時くらいになっている。
今日はまた、ここで一晩を過ごすことになりそうだ。
通路の行き止まりを見つけ、そこで少し休むことにする。
そして、桃色の袋の携帯食を食べることにする。赤いのは辛かった。前に食べた黄色いのはカレーに似て非なる物でちょっと不味かった。この桃色はどうだろうか。
なかなか美味しい……でもかなり甘い。
美味しいには美味しいんだけど……なんだろう、前に会社で賞味期限が近くなった緊急時用保存食の配布でもらったような、お湯か水を入れるとチャーハンとかピラフとかドライカレーが出来上がる奴が恋しくなってきた。ああいう携帯食が欲しい。ご飯を食べた感が欲しい。特にこんな風に現場で肉体労働とかしてると尚更にそう思う。
無い物ねだりをしても仕方ないのは分かってるんだけど。
パシッ、と両手で両頬を挟むように叩く。
気持ちを入れ替える。
目を閉じて、クレアボヤンスの画面に集中する。
目を閉じても見え続けているのは、通路の少し先を見る警戒用画面と、ボスエリアを探す画面の二画面だ。
クレアボヤンスは薄暗いダンジョンの広い通路をゆっくりと進む。
そして、コボルトナイトの集団をいくつか抜けた先に、ようやっとボスエリアと思われる空洞を発見した。
そこには、大剣を地面に突き立て、両手で柄を握ったまま微動だにしない、三メートル近い背の高さの犬顔の魔物がいた。
その両隣にはコボルトナイトが二匹いる。
この三匹だけとは思えないので、他の魔物が出てくる可能性は高いと思う。
他の何かが出てくればまずはそれを倒して、次にコボルトナイト、最後にコボルトキングだね。キングが最後まで待っててくれれば、だけど。
もう、地下三階に入ってから八時間以上が過ぎている。
少し疲れた。もう少しだけ休んでから動くことにしよう。
やっぱり、こういう時は一人だと不便さを感じるな。寝たくても見張り役がいないから寝ることができない。
お金に余裕ができたらセイクリッドサークルのスクロールを買わないと。ダンジョン攻略ギルドにストックないのかな。ギフとかが安く譲ってくれたらいいんだけど……
地下二階のコボルトは少し体つきががっしりして、剣士、または拳士のような戦い方をするようになる。まだ少し前傾姿勢で、それが熟練の剣士(拳士)のように見えなくもない。
そして地下三階になるとコボルトナイトが現れる。背筋が伸びたせいだけでなく、実際に二回り以上体が大きくなって、その背の高さは二メートル近くになる。犬顔も少し精悍になったように感じるし、持っている剣も身に着けている鎧も随分としっかりしたものになっている。
まるで別人……まったく別の魔物だ。
でも、サイコキネシス版ストーンバレットや、普通の魔法ロックバレットでもまだ倒せる相手だから、僕にとっては命を脅かすほどの相手ではないけど。
オークに比べたら全然弱いし。
というわけで、再び大根掘りにやってきた僕は、新たなルートで地下三階まで降りてきて(ボスモグラとその仲間たちはファイアボールとウインドアローの乱射で突破した)、コボルトナイトや強化された木の根っこ、蝉の幼虫(?)などと戦いながら探索を続けていた。
今日はミスリルスタッフも使っているし、一人なので魔法も超能力も使いたいように使っている。
だから、戦闘自体は楽だ。
さて、では接近戦はどうか。
僕はコボルトナイトと 一対一で戦ってみた。
ミスリルスタッフを部屋に送り返して、まずは鉄棍で戦ってみる。
やらなければよかった。
なんと、鉄棍が折られてしまったのだ。
いや、僕が下手だから折られたのか。
オークの怪力に比べたら、コボルトナイトの方が力が弱いはずなのだけど、技術的なものもあるんだろうか。途中で短剣と盾に持ち替えた。相手の剣を丁寧に盾で受け流して、短剣で手足を傷付けていき、喉、腹を切り裂いてようやっと勝てた。
魔法と超能力が万能過ぎて、武器を使った戦いはダメダメに感じてしまう。やはり、僕はサイキッカーというクラスなんだなと痛感することになった。
まあ、実際、僕はサイキッカーなんだから接近戦は弱くても仕方ない。だから、その「弱い」ことを考慮して、強い武器や防具で補いつつ、自分ももっと動けるようにやっていくしかないだろう。
ただ、本当は魔法使い、という話もなんとなく受け入れられたっぽいし、もしも誰かと行動する時があっても後衛として扱ってもらえそうだけどね。
いや、この間は鉄棍でも戦えるところを見せてしまってるから、ギフのところと活動する時は前衛としての働きも要求されるかも知れないけど。
僕は折れてしまった鉄棍を部屋にアスポートで送り、アポートでミスリルスタッフを手元に呼び寄せた。
そしてそのまま地下三階を進む。
地下三階は地下二階よりも更に広いようで、なかなかボスエリアが見つからない。
時計(街の時計)を確認すると、既にもう、夜七時くらいになっている。
今日はまた、ここで一晩を過ごすことになりそうだ。
通路の行き止まりを見つけ、そこで少し休むことにする。
そして、桃色の袋の携帯食を食べることにする。赤いのは辛かった。前に食べた黄色いのはカレーに似て非なる物でちょっと不味かった。この桃色はどうだろうか。
なかなか美味しい……でもかなり甘い。
美味しいには美味しいんだけど……なんだろう、前に会社で賞味期限が近くなった緊急時用保存食の配布でもらったような、お湯か水を入れるとチャーハンとかピラフとかドライカレーが出来上がる奴が恋しくなってきた。ああいう携帯食が欲しい。ご飯を食べた感が欲しい。特にこんな風に現場で肉体労働とかしてると尚更にそう思う。
無い物ねだりをしても仕方ないのは分かってるんだけど。
パシッ、と両手で両頬を挟むように叩く。
気持ちを入れ替える。
目を閉じて、クレアボヤンスの画面に集中する。
目を閉じても見え続けているのは、通路の少し先を見る警戒用画面と、ボスエリアを探す画面の二画面だ。
クレアボヤンスは薄暗いダンジョンの広い通路をゆっくりと進む。
そして、コボルトナイトの集団をいくつか抜けた先に、ようやっとボスエリアと思われる空洞を発見した。
そこには、大剣を地面に突き立て、両手で柄を握ったまま微動だにしない、三メートル近い背の高さの犬顔の魔物がいた。
その両隣にはコボルトナイトが二匹いる。
この三匹だけとは思えないので、他の魔物が出てくる可能性は高いと思う。
他の何かが出てくればまずはそれを倒して、次にコボルトナイト、最後にコボルトキングだね。キングが最後まで待っててくれれば、だけど。
もう、地下三階に入ってから八時間以上が過ぎている。
少し疲れた。もう少しだけ休んでから動くことにしよう。
やっぱり、こういう時は一人だと不便さを感じるな。寝たくても見張り役がいないから寝ることができない。
お金に余裕ができたらセイクリッドサークルのスクロールを買わないと。ダンジョン攻略ギルドにストックないのかな。ギフとかが安く譲ってくれたらいいんだけど……
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