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事のあらまし(黒幕視点)

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私メデスとアマレルス様は、
暴露された翌日には、宝石など貴金属を持ち出し街を出ておりました。
同性の愛は特に禁止ではありませんが、
まだこの国では、そこまで受け入られておりません。
今は、同性愛が浸透している国へ向かっている最中です。
その後の事は、道中で耳に入ってきました。
公爵家は貴族社会からも民衆からもイイ笑いものになり、
本家の方は元より、分家・嫁ぎ先は事後処理に"てんやわんや"。
元の主、セフォネお嬢様と男爵家も、公爵家ほどではないですが、
それなりのダメージを負った様です。
離れた今となっては、
公爵家・男爵家とも、どうなろうとも、関係ありません。
私は、アマレルス様と、一緒にいられるだけで良いのです。
次の町まで、まだ時間がかかるようです、
事の次第を思い返しましょうか――


まず、貴族ヒエラルキー上位の御子息と、
底辺男爵家の使用人とでは、接点があるはずもありません。
アマレルス様の御言葉ではありませんが、
運命の出会いは、劇場でした。
その当時、後援しているリニューアルする劇場の、
調整担当者として劇場に何度も足を運んでいました。
公爵家も大きな後援者の一角です。
余程の事がない限り、御子息様なんかが打ち合わせ程度に、
足を運ぶことなんてありえません。
それが何故、アマレルス様が劇場に足を運んでいるかと云うと、
貴族以前の社会勉強だそうです。
アマレルス様を拝見したのは、それが最初でした。

私には遠いお方ですし、担当者としてのお役目を果たすのみです。
三度目あたりでしょうか、アマレルス様からの視線に気づきましたが、
私になんか用があるはずも無いと考えていましたので、
アマレルス様直々に御言葉をかけてくれようとは、思いもしませんでした。
最初から"誘って"きたりはせず、
当たり障りのない、社交辞令的な会話でその場は終わりました。
それからです、次第に劇場だけではなく他の場所でも逢う様になり、
今思えば、何度か"さぐり"が入ってたようです。
私も若干気づいてはいたのですが、なんせ格上の方でしたので、
巧く断れずに話を合わせた結果、アマレルス様と二人っきりになっていました。
言っておきますが、私には同性愛者ではありませんし、
ましてや異性との恋愛も、恥ずかしながら未経験です。
求められた時は、とうぜん迷いました、否定する事もできましたが、
その瞬間においても、格差を思い、
ひいては男爵家の為と自己犠牲として、アマレルス様に応じました。
もちろん、これだけでは済まず、
その後も"劇場"を口実に逢引を重ねていきました。
もはや、愛に溺れていたのです。

本来であれば、アマレルス様の一言で、
私の身を男爵家から公爵家に移す事は容易い筈です。
しかし、先にも云いましたが"社会勉強中の身"、
そういった権限は取り上げられていました。
そして、劇場のリニューアルも間近、
アマレルス様と逢引の機会が失ってしまう。
恋愛の盲目となった私は必死になって考えました。
思いつきました――
そう、アマレルス様がとフォネお嬢様が交際すれば、
今後も私も一緒に居られると……

劇場での茶番は、私が仕組みました。
本来であれば奥様が行かれるのですが、
わざと日時の報告を怠り、お嬢様が代理となるよう手配し、
その場しのぎですが、"運命の舞台"を整えました。
私と同じく格上のアマレルス様からの舞台上での交際申込は、
お嬢様でも断れないと踏みましたが、まさに思惑通りでした。
お嬢様は、私とアマレルス様を繋ぐ"運命の人"です。

おっと、町に着くようですね――
まだ、話途中ですが少しは知れたかとは思います。
それでは、失礼いたします。


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何故かお気に入り数が増えていたので追記。
感想などありましたら~
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