54 / 104
54話 本気でブチ切れました
しおりを挟む「カイト!! 助けてっ!!!!」
その瞬間、ドゴォォォォ————ンという轟音とともに扉が吹っ飛び、私の上に乗っていた男の顔にクリーンヒットした。
男はそのまま扉と一緒に壁に叩きつけられて、気を失っている。
「悪い、遅くなった」
艶のある黒いサラサラの髪と漆黒の瞳。いつも羽織っている濃紺のマント。私の唯一のパーティーメンバー。
「カイト……来てくれた……うっ、ぎでぐれ……ううっ!」
カイトの姿を見て安心した私は、ボロボロと流れおちる涙を止められなかった。
「大丈夫か? ケガは? その、イヤなことされて……ないか?」
カイトは泣きじゃくる私に駆け寄り、優しく声かけてくれる。私を縛り付けていたロープを解いて、魔力封じの腕輪も外してくれた。思わずカイトに抱きついてしまう。震えていた手は、その温もりに落ち着いていった。
優しく抱きしめてくれたカイトは「もう大丈夫だからな」といいながら、頭をなでつづけてくれている。
そして、もうひとりの男にむけて青い稲妻を放って、聞いたことないような低い声で「動くな」と命令した。あ、これは、ものすごーく怒ってる。私の涙もピタリと止まった。
多分、私でも止められないヤツだ。えーと、犯人たち大丈夫かな……?
「……リナ、悪いけど騎士団に通報してくれるか? こいつらを引き渡さないといけないから」
「え……いいけど。カイト、怪我させちゃダメだよ……?」
ムダかもしれないけど、止めてみる。
「大丈夫、そんなことしないよ。ちょっと聞きたいことがあるだけだ」
「わかった、それなら行ってくるね」
カイトは男たちを睨んでいて、私には視線をむけなかった。少し気になったけど騎士団へと通報するために走った。
***
【……お前、オレの質問に正直に話せ】
オレは王者の素質を発揮しながら、意識のある男に命令をする。リナが騎士団を連れてくるまでに、聞き出したいことがある。
「は……はい」
(何だ……? コイツの話に逆らえない……もし逆らったら、殺される!!)
「リナの誘拐の依頼人を見たか?」
「はい、この小屋まで依頼に来ましたから……」
「どんな見た目だ?」
「えぇと……背は170後半くらいで、赤毛の男です。目の色は薄茶だったと……思います」
「ひとりで来たのか?」
「女も一緒でした。そっちはオレンジの髪と眼で……あと、胸がデカかったです」
やっぱりな、ミリオンとティーンだ。見た目も一致するし、ここにも残り香があるからな。なんでこんなにすぐ足のつく真似をするんだ?
アイツら本当にアホだな。
【今オレに話したことを、騎士団にも話せ】
今はまだ、騎士団に犯人を教えるつもりはない。この街の住人じゃないから、調べるまで時間がかかるだろう。明日の決闘を邪魔されたくないからな。
ミリオンパーティー……あいつらはオレの手でぶっ倒す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,670
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる