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54話 本気でブチ切れました

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「カイト!! 助けてっ!!!!」



 その瞬間、ドゴォォォォ————ンという轟音とともに扉が吹っ飛び、私の上に乗っていた男の顔にクリーンヒットした。
 男はそのまま扉と一緒に壁に叩きつけられて、気を失っている。


「悪い、遅くなった」


 艶のある黒いサラサラの髪と漆黒の瞳。いつも羽織っている濃紺のマント。私の唯一のパーティーメンバー。

「カイト……来てくれた……うっ、ぎでぐれ……ううっ!」

 カイトの姿を見て安心した私は、ボロボロと流れおちる涙を止められなかった。


「大丈夫か? ケガは? その、イヤなことされて……ないか?」

 カイトは泣きじゃくる私に駆け寄り、優しく声かけてくれる。私を縛り付けていたロープを解いて、魔力封じの腕輪も外してくれた。思わずカイトに抱きついてしまう。震えていた手は、その温もりに落ち着いていった。
 優しく抱きしめてくれたカイトは「もう大丈夫だからな」といいながら、頭をなでつづけてくれている。


 そして、もうひとりの男にむけて青い稲妻を放って、聞いたことないような低い声で「動くな」と命令した。あ、これは、ものすごーく怒ってる。私の涙もピタリと止まった。
 多分、私でも止められないヤツだ。えーと、犯人たち大丈夫かな……?


「……リナ、悪いけど騎士団に通報してくれるか? こいつらを引き渡さないといけないから」

「え……いいけど。カイト、怪我させちゃダメだよ……?」

 ムダかもしれないけど、止めてみる。

「大丈夫、そんなことしないよ。ちょっと聞きたいことがあるだけだ」

「わかった、それなら行ってくるね」

 カイトは男たちを睨んでいて、私には視線をむけなかった。少し気になったけど騎士団へと通報するために走った。



     ***



【……お前、オレの質問に正直に話せ】

 オレは王者の素質を発揮しながら、意識のある男に命令をする。リナが騎士団を連れてくるまでに、聞き出したいことがある。

「は……はい」

(何だ……? コイツの話に逆らえない……もし逆らったら、殺される!!)

「リナの誘拐の依頼人を見たか?」

「はい、この小屋まで依頼に来ましたから……」

「どんな見た目だ?」

「えぇと……背は170後半くらいで、赤毛の男です。目の色は薄茶だったと……思います」

「ひとりで来たのか?」

「女も一緒でした。そっちはオレンジの髪と眼で……あと、胸がデカかったです」


 やっぱりな、ミリオンとティーンだ。見た目も一致するし、ここにも残り香があるからな。なんでこんなにすぐ足のつく真似をするんだ?
 アイツら本当にアホだな。


【今オレに話したことを、騎士団にも話せ】

 今はまだ、騎士団に犯人を教えるつもりはない。この街の住人じゃないから、調べるまで時間がかかるだろう。明日の決闘を邪魔されたくないからな。

 ミリオンパーティー……あいつらはオレの手でぶっ倒す。


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