【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧

文字の大きさ
40 / 62

40話 夜会に招待されましたわ!②


 その日もいつものようにクリストファー殿下にビシバシと厳しい言葉を浴びせていたが、まったく挫ける気配がない。

 ランチタイムをいつものように食堂で過ごしていたが、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
 こうなった原因がわかれば対処方法が見つかるかもしれない。

「クリストファー殿下。なぜ小国の伯爵令嬢でしかなないわたくしに、ここまで固執するのですか?」
「ああ、言っていなかったか? 初めて会ったあの海辺で、お前の強気な態度と他人のために怒りを露わにする姿に惚れたんだ」
「え?」
「これでも第二皇子だから、声をかければ擦り寄ってくる女ばかりだった。婚約者がいても恋人がいても、そんなのはいなかったように媚びてくる。だから本気で愛することはなかった」
「…………」

 なんということだろう。
 それが本心なら、今までわたくしが取ってきた行動は、物珍しさに拍車をかけただけなのでは?

「一途に婚約者を想うお前を見て、俺もこんなふうに愛してほしいと思った。だから俺はお前をなんとしても手に入れたい」

 その言葉にクリストファー殿下の本心が垣間見えた。

 自分を愛してほしい——その気持ちは痛いほどよくわかる。わたくしもずっとそう思ってきた。

 でもそれは横から奪っても手に入れられるものではない。自分で築き上げていくものだ。

 ライル様は態度こそ冷たかったけれど、行動には優しさがあふれていた。今ではそれが当時のライル様の精一杯だったと理解できる。そして、それがあったからわたくしはあきらめずに努力し続けられた。

 わたくしがあきらめなかったから、呪いにかかった時に想いを打ち明けられたのだと思う。

 どちらかだけの努力では、愛は続かない。互いに与え合うから育まれていくのだ。

「クリストファー殿下、わたくしはライル様だから一途に愛せるのです」
「だから、その婚約者がいなくなれば、俺を愛せるだろう?」
「そうではなくて——」
「ごきげんよう、クリストファー殿下、ハーミリアさん」

 突然割り込んできたのは、マリアン様だ。
 その手には王家の封蝋が施された手紙を持っている。

「ごきげんよう、マリアン様」
「なんだ、俺とハーミリアの時間に無粋だな」
「まあ、それは申し訳ございません。ですが、こちらの招待状をどうしてもおふたり一緒の時にお渡ししたかったのです。どうぞこの場でご覧いただけますか?」

 そうして差し出されたのは、夜会の招待状だった。王家主催のもので、重大発表があるから招待状を受け取った貴族は絶対参加と書かれている。これはわたくし個人宛となっていた。

「ハーミリアさんのご家族にも同様のものが届いているはずですわ。私はこの場で渡したのは、ライオネル様がいらっしゃらないから、エスコート役をクリストファー殿下にお願いできないかと思ったのです」
「そういうことか! もちろん俺がハーミリアをスコートしよう」
「ありがとうございます、クリストファー殿下。私はお兄様のパートナーとして参加しますので、当日お会いできるのを楽しみにしてますわ」

 わたくしの意見などまったく聞かずに話が進んでしまう。
 このままではいけないと、不敬を覚悟で口を開いた。

「恐れ入りますが、マリアン様。わたくしは婚約者がいる身ですので、クリストファー殿下のエスコートを受けるわけにはまいりません」
「あら、それは問題ないわ。ライオネル様がご不在なのは王家でも把握してますから、これだけで不義だと追求しません。それよりも帝国の第二皇子であるクリストファー殿下が、おひとりで参加される方が問題でしょう? クリストファー殿下の世話役でもある貴女が適任よ」
「…………」
「では当日、よろしくお願いしますわ」

 わたくしがうまく反論できずにいると、マリアン様がニヤリと口角を歪めてこれで終わりだと押し切った。

 この夜会でクリストファー殿下のエスコートを受けたら、わたくしにとって嬉しくない状況になるのはわかりきっているのに、断る術がなかった。


感想 56

あなたにおすすめの小説

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」  ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。 「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」  いえ! 慕っていません!  このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。  どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。  しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……  *設定は緩いです  

世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない

こもど
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」 その“正義”が、王国を崩しかけた。 王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、 婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。 だが―― たとえそれが事実であったとしても、 それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。 貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。 それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。 「世界は、残酷で不平等なのです」 その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、 王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。 婚約破棄は恋愛劇では終わらない。 それは、国家が牙を剥く瞬間だ。 本作は、 「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」 「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」 そんな現実を、徹底して描く。 ――これは、ざまぁではない。 誰も救われない、残酷な現実の物語である。 ※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。  学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、  権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。 ---

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!! 男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。 そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢! そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。 どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの? ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます! しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、 物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど…… 2022.4.7 予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン) 《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます! とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。 ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。 よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

私の婚約者と駆け落ちした妹の代わりに死神卿へ嫁ぎます

あねもね
恋愛
本日、パストゥール辺境伯に嫁ぐはずの双子の妹が、結婚式を放り出して私の婚約者と駆け落ちした。だから私が代わりに冷酷無慈悲な死神卿と噂されるアレクシス・パストゥール様に嫁ぎましょう。――妹が連れ戻されるその時まで! ※一日複数話、投稿することがあります。 ※2022年2月13日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。