琥珀色の花嫁

藤谷 郁

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ミアの夢

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 黒と青のゴアが揃い、合わさる時、どんな望みも叶うだろう 

 太陽と月を支配し、聖なる光を手に入れる 

 偉大なる魔法使いが与えし力を得る者は、書を火にくべる勇気を持て 


「偉大なる魔法使い……」
 密かに呟くと、ラルフは立ち上がってミアを引き寄せた。小さく肩を震わせる彼女は、今はただ可哀想な少女であった。
 ミアを後ろから抱いた格好で、ベッドに腰掛ける。
 青のゴアと、彼女が持つ黒のゴアを、そっと合わせてみた。
 二人は固唾を呑んで見守る。しかし、奇跡は起こらない。太陽と月の輝きを放つ伝説の石は、森を照らし始めた朝陽の光を感じ取り、発光をやめた。

「黒と青のゴアを、お前は手に入れようとした。一族の誰もなそうとしなかった無謀な行いをしてまで、何を願おうとしたのだ」
 ラルフの声は優しかった。彼らを隔てていた秘密はすべて、溶け合っている。
「お花畑です……」
「ん?」
「コスモスやデイジー。可愛らしい花がたくさん咲いたお花畑で、誰にも命令されず、苛められず、隠しごともなく、幸せに暮らしたい。家族と、一緒に」
 ラルフは睫毛を伏せた。ミアを包む腕に力がこもる。
「何という欲のない……ふふっ、呆れる。お前には本当に」
 慎ましやかな、強い娘。
 あれに喰わせるには惜しい。
 先ほどまで屋敷を取り囲んでいた魔物の気配は、夜明けとともに消えていた。

「ミア、新しい朝だ」
「……え?」
 身体をねじり、ミアはラルフに振り向く。
「夜通しお前を抱いて、消耗した。朝食の用意をしてくれよ」
「ラルフ様……」
 彼女の双眸は微笑する彼を映し、やがてじんわりと濡れた。
 しかしラルフは動じない。
 緑の瞳を濡らすのは、哀しみではなかった。

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