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封印された記憶
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時は少し戻り、今日の昼間――
ラルフはゴアドアから帰るなり、すべてをミアに話して聞かせた。
自分が何者で、どこから来た人間なのか。なぜ森の番人として生きているのか。
そして、1000年前のできごと、呪い、ティナのこと――
初めのうち、ミアは信じられないという顔で耳を傾けていた。しかし、ラルフの臨場感あふれる語り口から、それが真実であるのを徐々に理解していく。
ラルフは初代ゴアドア王の第一王子だった。生まれたのはトーマ。
ミアの髪を優しく撫でながら、ラルフは教える。銀の髪、緑の瞳。父王が最も愛した女性である乳母のティナを、彼もまた愛していたこと。
そして、ティナというその女性にミアが生き写しであり、彼女の末裔であるのは間違いないと。
ミアは複雑な思いで、それを聞いていた。
「闇の琥珀だ……まさに」
ラルフはミアの胸もとを飾る二つの石を、熱のこもる目で見つめた。
ミアは静かに頷く。ゴアが『闇の琥珀』の異名を持つことを、ミアはぼんやりとだが知っていた。でもそれは、幼い頃に聞いただけで確信が持てずにいたのだ。
「ようやく、すべてを思い出した」
ラルフはミアを連れて物見櫓に上がり、森を見渡した。
樹海を支配していた呪い――霧の魔物は消えた。残された妖魔達も、今はすっかり大人しくしている。森は嘘のように安らかな顔で、二人の前に広がっていた。
暗黒の森を作ったのは父王だった。
この地にゴアドアを建てた彼は、恐ろしい森をも同時に出現させた。そして彼は生きながら、どす黒い欲望を肉体から分離し、霧の魔物として森を支配したのだ。
私は全てを欲する――
何もかも呑み込む――
「黒い霧の魔物は、父の怨念だった。私が制御できたのは、彼が実体を持たなかったからだ。生きている父に、魔力では到底敵わなかったからな」
ラルフは父王に、魔法で呪いをかけられた。ラルフに付き従っていたルズもろとも記憶を封印され、森の番人として生きてきた。
トーマもゴアドアも、ティナのことも忘却して。
忘れることがいかに残酷な仕打ちであるのか。今になってラルフは戦慄を覚える。
「私は、自分が苦しんでいることに気付きもせず、永遠にも等しい日々を過ごしてきたのだ」
ラルフは他にもさまざまな記憶を取り戻していた。
その中には、これからサキ博士が持ち帰るであろう情報に、大きく関わる人物も存在している。
だがそれはまだミアに話さないでおいた。
皆が揃ってからでよい……
それから行動を起こすと、彼は決めていた。
自分がなすべきこと。そしてミアをどうするのかも。
ラルフはゴアドアから帰るなり、すべてをミアに話して聞かせた。
自分が何者で、どこから来た人間なのか。なぜ森の番人として生きているのか。
そして、1000年前のできごと、呪い、ティナのこと――
初めのうち、ミアは信じられないという顔で耳を傾けていた。しかし、ラルフの臨場感あふれる語り口から、それが真実であるのを徐々に理解していく。
ラルフは初代ゴアドア王の第一王子だった。生まれたのはトーマ。
ミアの髪を優しく撫でながら、ラルフは教える。銀の髪、緑の瞳。父王が最も愛した女性である乳母のティナを、彼もまた愛していたこと。
そして、ティナというその女性にミアが生き写しであり、彼女の末裔であるのは間違いないと。
ミアは複雑な思いで、それを聞いていた。
「闇の琥珀だ……まさに」
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ミアは静かに頷く。ゴアが『闇の琥珀』の異名を持つことを、ミアはぼんやりとだが知っていた。でもそれは、幼い頃に聞いただけで確信が持てずにいたのだ。
「ようやく、すべてを思い出した」
ラルフはミアを連れて物見櫓に上がり、森を見渡した。
樹海を支配していた呪い――霧の魔物は消えた。残された妖魔達も、今はすっかり大人しくしている。森は嘘のように安らかな顔で、二人の前に広がっていた。
暗黒の森を作ったのは父王だった。
この地にゴアドアを建てた彼は、恐ろしい森をも同時に出現させた。そして彼は生きながら、どす黒い欲望を肉体から分離し、霧の魔物として森を支配したのだ。
私は全てを欲する――
何もかも呑み込む――
「黒い霧の魔物は、父の怨念だった。私が制御できたのは、彼が実体を持たなかったからだ。生きている父に、魔力では到底敵わなかったからな」
ラルフは父王に、魔法で呪いをかけられた。ラルフに付き従っていたルズもろとも記憶を封印され、森の番人として生きてきた。
トーマもゴアドアも、ティナのことも忘却して。
忘れることがいかに残酷な仕打ちであるのか。今になってラルフは戦慄を覚える。
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自分がなすべきこと。そしてミアをどうするのかも。
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