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絶体絶命
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「しかし綾華さん。そんなやつ一人に20人ってのは確かに大げさな気がしますけどね。しかも俺らはそこらのチンピラと違って、腕に覚えのある格闘家ですよ?」
大男が歩いて来て、キングを見下ろす。頬に刃物で切られたような傷痕があった。やったのは剛田かもしれない。
「由比家ほどの金持ちならボディガードを引き連れて来ると思ったのよ。でも、一人だからって油断しないで。コイツ、見た目は変態だけどあんがい強いから。だって、あんたたちが全く勝てなかった、あのクレイジー・Lがやられたのよ? ナイフを使ったのに」
「……へえ」
大男が真顔になる。背後の男たちも、綾華の言葉を聞いてざわめいた。
「そういやあ、ダメージを受けてねえな。マスクをちょっと切られてはいるが、体はほぼ無傷だ……」
キングをジロジロと眺めまわした。
そしてなぜか、ジッと考え込む。
「ていうか、なんでマスクなんか被ってるんだ。ふざけてんのか?」
「俺は大真面目だ。いつでもな」
「マスクで視界が狭くなる。不利になるだろって言ってんだ」
「そいつはキングって名前のウーチューバーだ! 言いたかねえけど、身体能力は全盛期の兄貴と互角か、それ以上だぜえ!」
ニット帽が叫んだ。いつの間にかダンプの屋根に乗っている。
「ウーチューバー? なんで由比家がそんなやつを雇ってんだよ」
「身内みたいなもんだって言ってたぞ」
「マジかよ、ハハッ。……にしても、全盛期の蓮と互角? コイツが……?」
また考え込んだ。
「マスクを取れ。ハンデ付けてもつまんねえだろ」
「断る」
なぜか分からないが、大男がマスクを気にしている。しかしキングは応じない。
「取れ」
「断る」
「取れ」
「どうでもいいわよ、そんなこと!!」
綾華が割って入った。こめかみに血管が浮き出ている。
「とにかくボコボコにしてやれって言ってんの!! なにグダグダやってんのさ」
綾華は大男に噛みつき、キングには激しく口撃した。
「詰んだわね、このバケ猿。偉そうに説教垂れても、あんたはただの負け犬。こいつらになぶり殺しにされて、地獄に落ちるがいいわ!」
立ち塞がるキングを回り込み、今度は私を指差す。
「あんたもよ、奈々子。こいつの処刑が終わったら、次はあんたの番。私がこの手で解体して、バラバラ死体を由比家に送りつけてやる!!」
「なんてことを……」
正気の沙汰ではない。
綾華は本当に狂っている。
だけど私は、恐怖に呑まれることはなかった。溌剌とした笑い声が、狂気を吹き飛ばしたのだ。
「ハーハッハッ!! そう思い通りにいくかな? 俺様は世界最強の格闘家。無敵のキング様だぜ!?」
綾華も男たちも、そして私すらびっくりして、キングに注目する。
キングはニット帽のカメラに向かい、Vサインを突き出した。
「おい、どうせなら生配信しろ。世界最強の格闘家キングとハッシュタグを付けてな。こっから先は俺様の独壇場だ。各々一発で仕留めてやる!!」
ニット帽があぜんとし、男たちが気色ばむ。今のはとんでもない挑発だ。
「マジでなんなの、このゴリラ野郎。状況わかってんの、あんた!」
綾華がキングに詰め寄った。完全にブチギレている。しかし、挑発に乗ったのは綾華だけではない。
「この野郎。イキってんじゃねえ!」
大男が真っ赤になり、胸の前で拳を打ち鳴らした。指に金属の武器をはめている。
「だってほんとに俺は強いし。ま、やればわかるってもんだ。そうだな、一対一じゃ分が悪いだろうから、いっぺんにかかってこい。俺は構わねーぞ」
「だったら相手になってやるよ。てめーなんざ、俺一人で十分だぜ!」
大男がいきなり飛びかかった。キングは受け流し、ヒョイヒョイと遠ざかる。
「ちょっと、なに勝手に始めてんのさ。その前にあの女を縛り上げて……」
「そんな必要はねえ! こんな変態野郎、5分もかからずのしてやるぜ!」
綾華は私を人質にしたかったようだ。その上でキングをいたぶるつもりが、大男が挑発に乗ってしまった。
すばしこいキングを、大男がムキになって追いかける。
「うらあっ、食らえこの野郎!」
「ノロイノロイ、止まって見えるぜウスノロ!」
大男はキングと一対一の勝負を始めた。
他の男たちが歓声を上げて、彼らをぐるりと取り囲む。まるで闘技場のように。
「チッ、単細胞が!」
綾華が私を睨んだ。
男たちはバトルに夢中で、女たちを気にも留めない。
(織人さん、隙を与えてくれたのね)
そのための挑発だったのだ。でも、どうすればいいの!?
綾華がキョロキョロして、落ちている棒を拾った。よく見るとそれは錆びついたバールで、私を叩く武器にするつもりだ。
「ひ、卑怯だよ、綾華! 素手でやりなさいよ!」
我ながら、何を言っているのか分からない。いきなりの展開に、頭が混乱していた。
「うるさい! どさくさに紛れて逃げようったって、そうはいかないからね!」
綾華はバールを握りしめると、物凄い形相で、思い切り振り下ろしてきた。
大男が歩いて来て、キングを見下ろす。頬に刃物で切られたような傷痕があった。やったのは剛田かもしれない。
「由比家ほどの金持ちならボディガードを引き連れて来ると思ったのよ。でも、一人だからって油断しないで。コイツ、見た目は変態だけどあんがい強いから。だって、あんたたちが全く勝てなかった、あのクレイジー・Lがやられたのよ? ナイフを使ったのに」
「……へえ」
大男が真顔になる。背後の男たちも、綾華の言葉を聞いてざわめいた。
「そういやあ、ダメージを受けてねえな。マスクをちょっと切られてはいるが、体はほぼ無傷だ……」
キングをジロジロと眺めまわした。
そしてなぜか、ジッと考え込む。
「ていうか、なんでマスクなんか被ってるんだ。ふざけてんのか?」
「俺は大真面目だ。いつでもな」
「マスクで視界が狭くなる。不利になるだろって言ってんだ」
「そいつはキングって名前のウーチューバーだ! 言いたかねえけど、身体能力は全盛期の兄貴と互角か、それ以上だぜえ!」
ニット帽が叫んだ。いつの間にかダンプの屋根に乗っている。
「ウーチューバー? なんで由比家がそんなやつを雇ってんだよ」
「身内みたいなもんだって言ってたぞ」
「マジかよ、ハハッ。……にしても、全盛期の蓮と互角? コイツが……?」
また考え込んだ。
「マスクを取れ。ハンデ付けてもつまんねえだろ」
「断る」
なぜか分からないが、大男がマスクを気にしている。しかしキングは応じない。
「取れ」
「断る」
「取れ」
「どうでもいいわよ、そんなこと!!」
綾華が割って入った。こめかみに血管が浮き出ている。
「とにかくボコボコにしてやれって言ってんの!! なにグダグダやってんのさ」
綾華は大男に噛みつき、キングには激しく口撃した。
「詰んだわね、このバケ猿。偉そうに説教垂れても、あんたはただの負け犬。こいつらになぶり殺しにされて、地獄に落ちるがいいわ!」
立ち塞がるキングを回り込み、今度は私を指差す。
「あんたもよ、奈々子。こいつの処刑が終わったら、次はあんたの番。私がこの手で解体して、バラバラ死体を由比家に送りつけてやる!!」
「なんてことを……」
正気の沙汰ではない。
綾華は本当に狂っている。
だけど私は、恐怖に呑まれることはなかった。溌剌とした笑い声が、狂気を吹き飛ばしたのだ。
「ハーハッハッ!! そう思い通りにいくかな? 俺様は世界最強の格闘家。無敵のキング様だぜ!?」
綾華も男たちも、そして私すらびっくりして、キングに注目する。
キングはニット帽のカメラに向かい、Vサインを突き出した。
「おい、どうせなら生配信しろ。世界最強の格闘家キングとハッシュタグを付けてな。こっから先は俺様の独壇場だ。各々一発で仕留めてやる!!」
ニット帽があぜんとし、男たちが気色ばむ。今のはとんでもない挑発だ。
「マジでなんなの、このゴリラ野郎。状況わかってんの、あんた!」
綾華がキングに詰め寄った。完全にブチギレている。しかし、挑発に乗ったのは綾華だけではない。
「この野郎。イキってんじゃねえ!」
大男が真っ赤になり、胸の前で拳を打ち鳴らした。指に金属の武器をはめている。
「だってほんとに俺は強いし。ま、やればわかるってもんだ。そうだな、一対一じゃ分が悪いだろうから、いっぺんにかかってこい。俺は構わねーぞ」
「だったら相手になってやるよ。てめーなんざ、俺一人で十分だぜ!」
大男がいきなり飛びかかった。キングは受け流し、ヒョイヒョイと遠ざかる。
「ちょっと、なに勝手に始めてんのさ。その前にあの女を縛り上げて……」
「そんな必要はねえ! こんな変態野郎、5分もかからずのしてやるぜ!」
綾華は私を人質にしたかったようだ。その上でキングをいたぶるつもりが、大男が挑発に乗ってしまった。
すばしこいキングを、大男がムキになって追いかける。
「うらあっ、食らえこの野郎!」
「ノロイノロイ、止まって見えるぜウスノロ!」
大男はキングと一対一の勝負を始めた。
他の男たちが歓声を上げて、彼らをぐるりと取り囲む。まるで闘技場のように。
「チッ、単細胞が!」
綾華が私を睨んだ。
男たちはバトルに夢中で、女たちを気にも留めない。
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そのための挑発だったのだ。でも、どうすればいいの!?
綾華がキョロキョロして、落ちている棒を拾った。よく見るとそれは錆びついたバールで、私を叩く武器にするつもりだ。
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我ながら、何を言っているのか分からない。いきなりの展開に、頭が混乱していた。
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