東京の会社を一年で辞め、逃げるように故郷・茅ヶ崎へ戻ってきた森下夏帆、二十三歳。
自信を失い、何をしても失敗する気がしていた彼女は、ラチエン通り沿いの小さなサーフショップ「波音サーフ」で働き始める。
そこで出会ったのは、明るくて優しいサーフィン講師・桐谷蒼。
「落ちてもいいよ。海って、そういう場所だから」
失敗しても笑わず、小さな一歩を見つけてくれる蒼の言葉に、夏帆は少しずつ前を向き始める。
けれど、誰よりも海が似合う蒼にも、かつて諦めた夢と、誰にも見せない痛みがあった。
傷ついた二人は、潮風の吹く茅ヶ崎で、もう一度自分の人生を始められるのか。
そして、波を待つことはできても、恋にだけは臆病な蒼は、夏帆を引き止めることができるのか――。
ラチエン通り、サーフショップ、烏帽子岩の見える海。
ひと夏の湘南を舞台に描く、不器用な二人の再生と恋の物語。
文字数 17,982
最終更新日 2026.07.26
登録日 2026.07.22
七月一日、片瀬東浜。
高校二年生の七瀬夏実は、江ノ島の海の家「夕凪」で、初めての夏バイトを始めた。
潮の匂い、焼きそばの匂い、かき氷、ラムネ、サンオイル。
夏だけの場所で出会ったのは、同じ高校の佐倉陽太。
学校ではほとんど話したことのない彼なのに、海の家では毎日顔を合わせる。
重い氷を運ぶ姿。
さりげなくスポーツドリンクを渡してくれる優しさ。
夕方の西浜で見た横顔。
気づけば夏実の中で、陽太はただの同級生ではなくなっていた。
けれど、好きだとは言えない。
言ってしまえば、この距離が壊れてしまうかもしれないから。
七月一日から八月三十一日まで。
江ノ島の海の家で過ごす、眩しくて、少し切ない、ひと夏の青春恋愛。
夏が終わる前に、私は君に好きと言えるのだろうか。
文字数 25,912
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.07.16
外資系証券会社で働く二十七歳の朝比奈優菜は、童顔に見られないよう銀縁眼鏡で自分を武装し、毎朝、横浜から大手町へ向かう満員電車に乗っていた。
息もできないほど混み合う車内で、ある朝、優菜を人波から守ってくれたのは、キャメル色のコートを着た年上の男性。
名前も知らない。
声もほとんど知らない。
けれど、彼の背中があるだけで、凍える朝の通勤が少しだけ怖くなくなる。
静かに場所を空けてくれること。
倒れそうな時、何も言わず支えてくれること。
熱っぽい朝、温かいお茶を渡してくれること。
それは派手な告白ではなく、ゆっくり心に染みていく、大人の優しさだった。
藤沢の庭に実る冬のレモン。
横浜の満員電車。
キャメルの背中に守られて始まる、年の差じれ恋ロマンス。
文字数 72,843
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.06.28
警察学校を卒業し、交番勤務を始めて二週間。
新人女性警察官の小川芽衣は、落とし物や道案内ばかりの毎日に、どこか物足りなさを感じていた。
そんなある日、交番に一人の女子高生が現れる。
「この近くに、公衆電話はありますか」
翌日は本屋。その次はカフェ。
少女は何度も交番を訪れるのに、本当に聞きたいことだけは決して口にしなかった。
やがて芽衣は、少女が家の話を避けていること、そして袖口の奥に隠された痣に気づく。
「大丈夫なんで」
そう笑う少女に、元捜査一課刑事の巡査部長・久我は告げた。
「“大丈夫”を信じるな。だが、決めつけるな。そして、見逃すな」
その数日後、少女は交番へ来なくなる。
そして夜の繁華街で、芽衣のもとに未成年者保護の無線が入った――。
助けを求める声は、いつも大きいとは限らない。
言葉にならない小さなSOSと、それを見つけようとする交番勤務の警察官たちを描いた、心に明かりをともすヒューマンドラマ。
文字数 9,631
最終更新日 2026.07.21
登録日 2026.07.19
「お疲れさまです」
夜勤明けで限界だった私に、彼はそう言ってくれた。
内科病棟で働く看護師・三上美緒は、患者さんに優しくしたいと思いながらも、忙しさの中で少しずつ心をすり減らしていた。
ちゃんとしたい。
でも、ちゃんとできない。
ナースコールが鳴るたびに、心が先に疲れてしまう。
そんな夜勤明けの朝、美緒は病院近くの小さなカフェ「月とミルク」に立ち寄る。
そこで出会ったのは、黒いエプロンをつけた優しいカフェ店員・榊爽太。
ただ静かに話を聞いてくれる彼の存在が、美緒の張りつめた心を少しずつほどいていく。
夜の病棟で削られていく看護師の私と、朝のカフェでそっと寄り添ってくれる彼。
疲れた心がふっとほどける、優しい再生と小さな恋の物語。
文字数 11,000
最終更新日 2026.07.18
登録日 2026.07.14
総理になれなかった元大臣・遠野紗和子。
地方を切り捨てない国を作りたい。
その一心で政治の世界を駆け上がってきた彼女は、総裁選出馬の前夜、演説原稿の最後の一文を書けないまま倒れてしまう。
次に目覚めた時、彼女は異世界の貧しい農村で、五歳の少女ミリアに転生していた。
そこにあったのは、華やかな王宮でも、魔法で救われる世界でもない。
空腹。
読めない契約書。
奪われる種麦。
弱い者から順に削られていく、冷たい仕組み。
けれどミリアは知っていた。
飢えは、ただの不幸ではない。
必ず、そうなる理由がある。
元大臣としての知識と、農民の娘として知った痛み。
その二つを武器に、ミリアは小さな村から国を変え始める。
やがて彼女は、村を救い、領地を動かし、王都を揺らし、二千年続く王家の中枢へと上り詰めていく。
これは、総理になれなかった女が、
今度こそ「地方を一つの言葉で片づけない国」を作る物語。
文字数 434,256
最終更新日 2026.07.15
登録日 2026.05.16
離婚した夜、明日香がたどり着いたのは、海沿いの寂れた町にある小さなスナックだった。
強い女だと思われ、泣くことも甘えることもできなかった彼女は、友人の店で働きながら、少しずつ息を取り戻していく。
そんな彼女の前に毎晩現れるのは、酒を飲まず、ただウーロン茶だけを頼む不思議な男性・如月颯真。
静かで、強引ではなく、けれど明日香だけをまっすぐ見つめてくる彼に、閉ざしていた心は少しずつ揺れ始める。
けれど彼には、町の未来を動かす大きな秘密があった。
捨てられたと思っていた女が、寂れた町で出会ったのは、人生ごと迎えに来てくれる本気の愛。
地方スナックから始まる、大人の再生シンデレラ・ラブストーリー。
文字数 15,924
最終更新日 2026.07.13
登録日 2026.07.09
本社で炎上の責任を押しつけられ、子会社の町工場へ左遷された広報担当・三浦光莉。
キャリアは終わった。
そう思ってたどり着いた古い工場で出会ったのは、無口で無愛想な職人・瀬川蓮だった。
「うちに、広報なんて必要ですか」
冷たい言葉に傷つきながらも、光莉は彼の作る試作品に心を奪われる。
それは、まだ誰にも届いていない小さな金属プレート。
けれど光莉には、その一枚が人の暮らしを変える光に見えた。
左遷された広報女子と、不器用だけど誠実な職人。
ふたりが町工場の商品を世の中へ届けようとしたとき、止まっていた光莉の人生も、静かに動き出す。
仕事も恋も、もう一度ここから始めたい。
町工場で生まれる、再生ラブストーリー。
文字数 24,470
最終更新日 2026.07.08
登録日 2026.07.04
幼なじみの七瀬遥斗は、テレビで見ない日はない若手人気俳優。
けれど相沢澪にとっては、昔からそばにいた大切な男の子で、
今もずっと忘れられない初恋の人だった。
深夜に部屋へ来て、手料理を食べて、甘えるように眠る。
誰より近い距離にいるのに、遥斗はいつも澪を「親友」と呼ぶ。
恋人にはなれない。
でも離れることもできない。
そんな曖昧な関係に傷つき続けた澪は、
遥斗への恋を終わらせようと決める。
会社の同僚・佐伯に食事へ誘われ、
少しずつ前を向こうとしたその時――
「その男、誰」
澪を“親友”と呼び続けていた遥斗が、
初めて恋人のような顔で嫉妬を見せてきて……。
親友という言葉で隠されてきた両片想いが、
スクープをきっかけに動き出す。
人気俳優×幼なじみ女子の、
じれ甘すれ違い溺愛ラブストーリー。
文字数 19,624
最終更新日 2026.07.03
登録日 2026.06.29
十年前、白石美緒は御曹司の神崎悠真に捨てられた。
「君とは住む世界が違う」
その一言は、美緒の心に深く刺さったままだった。
仕事帰り、七百九十円の安いサンダルを履き、スーパーの袋を下げていた夜。
濃いグリーンの高級輸入車に乗った悠真が、再び美緒の前に現れる。
昔と同じように、彼は美緒の足元を見て笑った。
けれど、その場に現れた瀬名遼介だけは違った。
彼は美緒のサンダルを笑わなかった。
惨めさを責めなかった。
ただ、静かに隣に立ち、こう言った。
「靴で人を見る方には、白石さんの価値はわからないでしょうね」
過去の恋に傷つけられ、自分の価値を疑い続けてきた美緒。
そんな彼女を、遼介は急かさず、見下さず、一人の女性として大切にしていく。
昔、私を捨てた御曹司。
今、安いサンダルの私を笑わない人。
これは、選ばれなかった過去を抱えた女性が、
本当に自分を大切にしてくれる人と出会い、
もう一度恋を信じていく物語。
文字数 31,619
最終更新日 2026.06.27
登録日 2026.06.18
十年前、好きだと言えないまま別れた。
中学三年の春。
雅治は、転校生のさくらと出会った。
放課後の公園で言葉を交わし、少しずつ近づいていく二人。
けれど、想いを伝える前に、さくらは突然この街を去ってしまう。
別れの日、彼女が告げたのは――
「十年後の四月四日、午後三時。この桜の下で会おう」
子どもの口約束。
そう笑い飛ばすには、あまりにもまっすぐな言葉だった。
そして十年後。
大人になった雅治は、約束の桜の下へ向かう。
午後三時。
彼女は来ない。
それでも待ち続けた雅治の前に、春の風が吹く。
十年越しの初恋は、もう一度咲くのか。
桜の下で止まっていた時間が動き出す、再会恋愛短編。
文字数 24,306
最終更新日 2026.06.19
登録日 2026.06.15
森下美月は、高校二年生。
目立つタイプではなく、教室の端で静かに笑っている方が落ち着く普通の女の子。
そんな美月には、ずっと片想いしている相手がいる。
瀬川奏太。
学校中の女子が憧れる、学校一の美形男子。
誰にでも優しくて、笑うと少し目尻が下がる彼に、
美月は「おはよう」と言われるだけで一日が終わってしまうほど恋をしていた。
けれど奏太は人気者で、いつも誰かに囲まれている。
私なんかが好きになっても、きっと届かない。
そう思って、何度もLINEを書いては消していた美月。
でもある日、奏太から届いた一通のメッセージで、
止まっていた片想いが少しずつ動き出す。
「明日、一緒に帰らない?」
私だけが片想いだと思っていた。
でも本当は、彼もずっと前から――。
学校一の美形男子と、普通の女の子。
すれ違いながら近づいていく、甘くてピュアな青春両片想いラブ。
文字数 18,288
最終更新日 2026.06.14
登録日 2026.06.10
クリスマスイブの夜。
三年付き合った恋人と別れて十日、二十八歳の私は、明るすぎる街をひとりで歩いていた。
まっすぐ帰る気になれず向かったのは、大学時代によく通っていた小さな喫茶店「喫茶あかり」。
古いガラス戸。
クリームソーダ。
窓際の席。
そして、昔この店で働いていた湊との再会。
正しい別れだったはずなのに、まだ胸は痛い。
大丈夫と言えるほど強くはない。
それでも、温かい場所で、少し笑って、ちゃんと食べて、昨日より少しだけ前を向く。
失恋した夜に、懐かしい喫茶店で自分を取り戻していく、大人の女性のための静かな再生物語。
文字数 6,741
最終更新日 2026.06.11
登録日 2026.06.11
十年前、私は彼に「行かないで」と言えなかった。
最後のキスは、苦くて、冷たくて、どうしようもなく優しかった。
それきり会えなくなった元恋人・神崎悠真が、ある日、私のカフェに娘を連れて現れる。
七歳の女の子・莉子は、ホットミルクを飲んだあと、私を見つめて言った。
「この人が、ママが言ってた美緒さん?」
悠真には、妻がいた。
そしてその妻は、もうこの世にいない。
忘れられなかった恋。
亡くなった妻が残した手紙。
母を失い、声を出して笑えなくなった女の子。
私は、莉子の母親にはなれない。
奥さんの代わりにもなれない。
それでも――
この子が泣いてもいい場所にだけは、なりたいと思った。
十年越しの恋と、家族になりきれない三人が、ホットミルクの湯気の向こうで少しずつ心をほどいていく、切なくて優しい再会ラブストーリー。
文字数 23,414
最終更新日 2026.06.09
登録日 2026.06.03
閉店後の書店で、彼女は亡き恋人の本を抱いて泣いていた。
小さな出版社で編集者をしている相沢春斗は、神保町の古い書店で働く書店員・水瀬紗良に、密かに惹かれていた。
けれどある夜、春斗は見てしまう。
閉店後の書店の片隅で、紗良が一冊の本を抱きしめ、声を殺して泣いている姿を。
その本の著者は、有森遼。
三年前、春斗が担当していた新人作家。
そして、刊行直前に事故で亡くなった青年だった。
紗良は、遼の恋人だった。
遼が彼女へ遺した未完の原稿。
三年間、それを渡せずにいた春斗の嘘。
「もう書かない」と言いながら、本当はまだ書きたかった紗良の嘘。
亡き恋人を忘れられない彼女と、
その痛みごと待とうとする編集者。
五月の風が知っていた二人の嘘が、
止まっていた恋と物語を、もう一度動かし始める。
切なくて、静かで、優しい。
大人のための再生純愛ストーリー。
文字数 18,273
最終更新日 2026.06.02
登録日 2026.05.29
合鍵を差し出された夜、私は笑って断った。
「重くない?」
本当は嬉しかった。
彼の生活に入れることが、泣きたいほど嬉しかった。
けれど、愛されるほど怖くなる。
大事にされるほど、失う日のことを考えてしまう。
だから私は、平気なふりをした。
重くない女のふりをした。
寂しいとも、会いたいとも言えなかった。
その三日後。
私は彼の転勤を、本人ではなく職場の人から聞く。
大阪へ行く彼。
受け取れなかった合鍵。
言えなかった本音。
このまま物分かりのいい顔で見送れば、きっと彼は本当に遠くなる。
「行かないで」とは言えない。
でも、「別れたくない」は、言わなきゃいけない。
愛されるのが怖かった大人の女性が、
差し出された鍵と想いを、もう一度受け取るまでの
切なくて温かい、すれ違い再生ラブストーリー。
文字数 14,513
最終更新日 2026.05.28
登録日 2026.05.24
かつて、瀬名里帆は実業団ソフトボールのマウンドに立っていた。
背番号は、エースナンバーの「1」。
日本代表候補に手が届きかけていた彼女の夢は、ある日の故障と、チームメイトの沈黙によって奪われた。
それから七年。
ソフトボールから離れ、海沿いの町のスポーツ用品店で働いていた里帆は、かつて自分の背番号をつけた元チームメイト・神崎美羽の講演会ポスターを目にする。
「諦めなかった人だけが、夢の続きを見られる」
その言葉に、里帆の止まっていた時間が再び軋み出す。
そんな彼女をグラウンドへ引き戻したのは、口は悪いが人の痛みに気づく元プロ野球選手・黒瀬蒼真。
そして、マウンドで謝ることしかできなかった一年生投手・朝倉芽衣だった。
逃げ癖のある少女投手。
夢を語る元チームメイト。
過去を捨てきれない元エース。
奪われたマウンドに、もう一度立つことはできなくても。
誰かが逃げずに立てる場所を、今度は自分が作っていく。
傷ついた元エースが、高校女子ソフトボール部と出会い、過去を乗り越えてもう一度夢の続きを見つける、再生の青春スポーツストーリー。
文字数 15,599
最終更新日 2026.05.23
登録日 2026.05.19
十年間、会社に都合よく使われてきた。
資料を作っても、成果は営業担当のもの。
ミスを防いでも、「サポートだから」と評価されない。
誰かのために先回りして働くほど、里帆の仕事は“当たり前”にされていった。
きっかけは、大型案件の提案資料だった。
三か月かけて里帆が作り上げた資料を、営業担当は「僕がほぼ組み立てました」と言い、里帆は案件から外される。
――この会社では、私の仕事は評価されない。
退職した里帆のもとへ、後日、取引先から直接連絡が入る。
求められたのは、会社では雑務扱いされていた「業務整理」と「資料設計」。
里帆が出した見積額は、月額九十万円。
そして、かつて自分を安く扱った元会社から助けを求められたとき、里帆は百二十万円の見積書を送った。
安かったんじゃない。
安く扱われていただけだった。
便利な人を卒業した女性が、自分の名前で働き、自分の値段を取り戻す。
静かな逆転のお仕事ストーリー。
文字数 11,710
最終更新日 2026.05.18
登録日 2026.05.14
三年前、私は婚約者を捨てた。
嫌いになったわけではない。
他に好きな人ができたわけでもない。
ただ、彼の母に言われたのだ。
「あなたは、怜司を幸せにできますか」
その一言に答えられなかった美桜は、医師である婚約者・怜司の未来を壊すことが怖くなり、理由も告げずに東京を離れた。
誰も知らない海沿いの街で、ひとり静かに暮らす三年間。
忘れたかった。
でも、怜司の番号だけは消せなかった。
そしてある夜、かけるつもりのなかった電話が、三年ぶりに彼へつながってしまう。
愛していたから逃げた女と、置き去りにされても待ち続けた男。
発車ベルに消したはずのさよならが、もう一度、二人の時間を動かしはじめる。
切なくて、静かで、やさしい再会の恋愛短編。
文字数 9,955
最終更新日 2026.05.13
登録日 2026.05.09
明日結婚する人のことを、昔の私は「タイプじゃない」と思っていた。
転職したばかりの春。
人間関係にも恋愛にも少し疲れていた美帆は、新しい職場の歓迎会で田辺悠斗と出会う。
穏やかで、地味で、少し不器用。
話しやすいけれど、恋をする相手ではない。
美帆はそう思っていた。
けれど、雨の日に落ち込んだ美帆へアイスを半分くれたこと。
無理をして「大丈夫」と笑う美帆を、本気で叱ってくれたこと。
何でもない帰り道を、少しだけ優しい時間に変えてくれたこと。
悠斗の優しさは、少しずつ美帆の心に積もっていく。
最初から運命だとわかる恋じゃなかった。
でも、だからこそ時間をかけて気づいた。
この人は、私が私のままでいられる場所をくれる人だった。
結婚式前夜、プロフィール文を書きながら、美帆は悠斗との五年間を思い出す。
「タイプじゃなかった人」が、人生でいちばん大切な人になるまでの、やさしい恋の物語。
文字数 21,407
最終更新日 2026.05.08
登録日 2026.05.04