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王子様の未来
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日曜日――
都内のホテルレストランにて両家の顔合わせが行われた。由比家は織人さんのご両親、大月家は私の両親と姉が出席した。
小雪舞う寒い日ではあるが、初めての対面となる食事会は終始和やかに、あたたかな雰囲気のなか行われた。
食事のあとは庭園が眺められるラウンジへと移動し、あらためて両家が向き合う。その頃にはもう、かなり打ち解けた空気となり、特に父親同士の会話が弾んでいた。
そんな様子を見て、織人さんがそっと話しかけてきた。
「奈々子のお父さんはコミュ力半端ないな。警戒心の強い親父が、えらくリラックスしてるぞ」
「ご両親との対面をものすごく楽しみにしてたみたいで。はりきりすぎて変なことを言ったらどうしようって、私はハラハラしてます」
「そうなのか? 奈々子らしいな、ププッ……」
ちょうど会話が途切れたところで織人さんが噴き出したため、家族が一斉に注目する。
お義父さんがじろりと睨んだ。
「なにが可笑しいんだ、織人?」
「いえ、別に。お父さんたちが楽しそうで良かったなと、思っただけです」
「まったく、落ち着きのないやつめ」
ふうっと息をつくと、父に向き直り苦笑を浮かべて見せた。
「このとおり、いつまでも大人になりきれないところがありまして。それに、皆さんもご覧になったでしょう? 例の動画を」
一瞬、私の家族が戸惑った様子になる。
その件については、食事中も一切話題に出ることがなかった。キングの動画は由比家のトップシークレットにして、「恥」だから。
尤も、「恥」と感じでいるのは織人さんの両親であり、それを理解しているので、大月家からも話題に出さずにいたのだ。
そもそも私の家族は、あれを重く受け止めていない。織人さんのちょっと変わった趣味に過ぎないという認識であり、気にしていないのだ。
なので、いきなり動画という言葉が出て、家族のほうが動揺したのである。
「大体、あんな子供じみた真似をいつまで続けるつもりだ。私は前からやめろと……」
「あなた、その話はいいじゃありませんか」
さらに言及しようとする義父に、隣に座る義母がそっと口を挟む。
織人さんのお母様だ。
目鼻立ちの整った美しい容姿と、華やかな雰囲気。織人さんはお母様に似たのだと、ひと目で分かった。
ただ性格は優しく、おっとりとした方だと聞いている。夫ほどではないが、動画に反対の立場であることも。
「いいや、この件に関しては大月さんにもきちんと認識していただきたい。義理の息子となった織人が、どんな男なのか」
「わかりました。でも、あまり興奮なさらないでくださいよ。血圧が上がりますから」
やんわりとたしなめる義母に「うむ」とうなずき、義父が語った。
いくら世間に評価されようと、親から見た織人はまだまだ子供であり、いまだに夢見がちで、動画はその表れだ――と。
「図体ばかり大きくて、中身が伴っておらん。まったく、やることなすこと心臓に悪いわ」
織人さんはつまらなそうに横を向いている。
せっかく私の家族には「CEO」としての体裁を保っていたのに、お父様が実情をばらしてしまったから。
だけど私の家族は、大体見抜いているようだ。姉が言うには、かなり早い段階で――
「子どもの頃に見た映画の影響ですよ。なんだったかな……ドラゴンとかいうアクションスターの」
「タイガー•ウォン。80年代に活躍してハリウッドにも進出した、香港出身の大スターだよ」
父親の間違いをムキになって修正する。
義父もムッとして、
「どっちでもいい。とにかく、俳優だのスターだの、夢見るのはやめろ。お前は由比家の一人息子で、三保グループの後継者。生まれた時から未来は決まっているんだからな」
強い口調で言い聞かせた。
不穏なムードが漂い、皆が緊張する。なんだか、親子喧嘩の様相を呈してきた。
都内のホテルレストランにて両家の顔合わせが行われた。由比家は織人さんのご両親、大月家は私の両親と姉が出席した。
小雪舞う寒い日ではあるが、初めての対面となる食事会は終始和やかに、あたたかな雰囲気のなか行われた。
食事のあとは庭園が眺められるラウンジへと移動し、あらためて両家が向き合う。その頃にはもう、かなり打ち解けた空気となり、特に父親同士の会話が弾んでいた。
そんな様子を見て、織人さんがそっと話しかけてきた。
「奈々子のお父さんはコミュ力半端ないな。警戒心の強い親父が、えらくリラックスしてるぞ」
「ご両親との対面をものすごく楽しみにしてたみたいで。はりきりすぎて変なことを言ったらどうしようって、私はハラハラしてます」
「そうなのか? 奈々子らしいな、ププッ……」
ちょうど会話が途切れたところで織人さんが噴き出したため、家族が一斉に注目する。
お義父さんがじろりと睨んだ。
「なにが可笑しいんだ、織人?」
「いえ、別に。お父さんたちが楽しそうで良かったなと、思っただけです」
「まったく、落ち着きのないやつめ」
ふうっと息をつくと、父に向き直り苦笑を浮かべて見せた。
「このとおり、いつまでも大人になりきれないところがありまして。それに、皆さんもご覧になったでしょう? 例の動画を」
一瞬、私の家族が戸惑った様子になる。
その件については、食事中も一切話題に出ることがなかった。キングの動画は由比家のトップシークレットにして、「恥」だから。
尤も、「恥」と感じでいるのは織人さんの両親であり、それを理解しているので、大月家からも話題に出さずにいたのだ。
そもそも私の家族は、あれを重く受け止めていない。織人さんのちょっと変わった趣味に過ぎないという認識であり、気にしていないのだ。
なので、いきなり動画という言葉が出て、家族のほうが動揺したのである。
「大体、あんな子供じみた真似をいつまで続けるつもりだ。私は前からやめろと……」
「あなた、その話はいいじゃありませんか」
さらに言及しようとする義父に、隣に座る義母がそっと口を挟む。
織人さんのお母様だ。
目鼻立ちの整った美しい容姿と、華やかな雰囲気。織人さんはお母様に似たのだと、ひと目で分かった。
ただ性格は優しく、おっとりとした方だと聞いている。夫ほどではないが、動画に反対の立場であることも。
「いいや、この件に関しては大月さんにもきちんと認識していただきたい。義理の息子となった織人が、どんな男なのか」
「わかりました。でも、あまり興奮なさらないでくださいよ。血圧が上がりますから」
やんわりとたしなめる義母に「うむ」とうなずき、義父が語った。
いくら世間に評価されようと、親から見た織人はまだまだ子供であり、いまだに夢見がちで、動画はその表れだ――と。
「図体ばかり大きくて、中身が伴っておらん。まったく、やることなすこと心臓に悪いわ」
織人さんはつまらなそうに横を向いている。
せっかく私の家族には「CEO」としての体裁を保っていたのに、お父様が実情をばらしてしまったから。
だけど私の家族は、大体見抜いているようだ。姉が言うには、かなり早い段階で――
「子どもの頃に見た映画の影響ですよ。なんだったかな……ドラゴンとかいうアクションスターの」
「タイガー•ウォン。80年代に活躍してハリウッドにも進出した、香港出身の大スターだよ」
父親の間違いをムキになって修正する。
義父もムッとして、
「どっちでもいい。とにかく、俳優だのスターだの、夢見るのはやめろ。お前は由比家の一人息子で、三保グループの後継者。生まれた時から未来は決まっているんだからな」
強い口調で言い聞かせた。
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