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レザーソール
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(それにしても、本当に挨拶抜きで良かったのかな)
先ほどの、ドアを施錠する音が耳に残っている。
私は入居の際、隣人に挨拶するつもりだったが、不動産屋の担当者は不要だと言った。近頃は、あえて挨拶しない人が増えているとのこと。
例えば私のように女性の一人暮らしの場合、それをわざわざ知らせることは、トラブルや犯罪に巻き込まれるリスクがあるという。
学生時代は寮に住んでいた。就職して住み始めた前のアパートは、会社が借り上げた物件なので、住民のほとんどが社員だった。
挨拶必須の環境だったので、今回の引っ越しで、少し戸惑っている。
不動産屋は、メゾン城田の五階は空き部屋が三つあると言っていた。その内の一部屋に私が入ったので、残りの空き部屋は二つ。
「私の部屋は507号室。確か、501と502が空いてたのよね。五階に住むのは私を入れて五人ってことか」
性別も年齢も不明の、見知らぬ住人達だ。
この辺りには同じような物件が多く、どのアパートも入れ替わりが頻繁だと聞いている。というのも、近くに大学があるため、学生向けのワンルームがほとんどだそうだ。
そのため、古くても利便性が高く、特に騒音対策はばっちりだと、不動産屋は太鼓判を押していた。
「騒音か……一番多い隣人トラブルは騒音問題っていうものね」
壁が厚ければその点安心だ。
隣にどんな人が住んでいようと、気にせず暮らせば良い。
不動産屋の情報どおり、徒歩五分で最寄駅の緑大学前駅に着いた。
私はふと後ろを振り向き、まっすぐに伸びた歩道や、緑豊かな街並みを眺める。
「今日から私は、この町の住人。良い思い出がたくさんできますように」
前に向き直ると、駅構内へと小走りした。
引っ越したばかりなので、小さなことが引っかかったりする。
柄にもなく神経質になっている自分に苦笑しつつ、パスケースをバッグから取り出し、改札を潜った。
各駅停車の電車に乗り、三つ目の駅で降りた。
ほんの十分ほどの距離であるが、その短い時間で市の中心部に辿り着く。ここは、商業施設やオフィスビルが立ち並ぶ、発展したエリアである。
「えっと……どこでランチしようかな」
駅ビルの九階に冬月書店本町駅店があり、十階が催事場、最上階の十一階がレストラン街だ。
(せっかくだから店の様子をそっと覗いてみて、その後レストラン街でお昼を食べよう)
そう決めると、早速エレベーターホールに向かった。
冬月書店本町駅店は街中の店だけあって、まあまあの客入りだ。
新しい副店長の顔は店長以外知らないはず。私は客としてぶらぶらしつつ、社員やアルバイトの接客ぶりをそれとなく窺った。
「いらっしゃいませ!」
「今日発売の新刊ですね。こちらにございます」
本部から聞いたとおり、若いスタッフが多い。
棚がきちんとしているし、接客態度もマル。各人がきびきびと働く様子を見て、胸をなでおろした。
「工夫しだいで、この店はもっと伸びる。よし、明日から私も頑張ろう」
やる気が湧いたところで、お腹がぐうと鳴る。空腹を思い出した私は、レストラン街に移動した。
日曜日のためかレストラン街はこんでいた。
「何を食べよう。とんかつとか、ステーキとか……がっつりしたものがいいんだけど」
フロアを一周したが、目当ての店はどこも満席で、順番待ちの人数も多い。仕方ないので、レストラン街はあきらめることにする。
スマートフォンで駅ビルのフロアマップを調べ、他の階にある飲食店を探す。
六階にカフェがあった。
ファッションフロアの奥にひっそりと存在する、小さな店だ。
「ここなら空いてるかも。行ってみよう」
先ほどの、ドアを施錠する音が耳に残っている。
私は入居の際、隣人に挨拶するつもりだったが、不動産屋の担当者は不要だと言った。近頃は、あえて挨拶しない人が増えているとのこと。
例えば私のように女性の一人暮らしの場合、それをわざわざ知らせることは、トラブルや犯罪に巻き込まれるリスクがあるという。
学生時代は寮に住んでいた。就職して住み始めた前のアパートは、会社が借り上げた物件なので、住民のほとんどが社員だった。
挨拶必須の環境だったので、今回の引っ越しで、少し戸惑っている。
不動産屋は、メゾン城田の五階は空き部屋が三つあると言っていた。その内の一部屋に私が入ったので、残りの空き部屋は二つ。
「私の部屋は507号室。確か、501と502が空いてたのよね。五階に住むのは私を入れて五人ってことか」
性別も年齢も不明の、見知らぬ住人達だ。
この辺りには同じような物件が多く、どのアパートも入れ替わりが頻繁だと聞いている。というのも、近くに大学があるため、学生向けのワンルームがほとんどだそうだ。
そのため、古くても利便性が高く、特に騒音対策はばっちりだと、不動産屋は太鼓判を押していた。
「騒音か……一番多い隣人トラブルは騒音問題っていうものね」
壁が厚ければその点安心だ。
隣にどんな人が住んでいようと、気にせず暮らせば良い。
不動産屋の情報どおり、徒歩五分で最寄駅の緑大学前駅に着いた。
私はふと後ろを振り向き、まっすぐに伸びた歩道や、緑豊かな街並みを眺める。
「今日から私は、この町の住人。良い思い出がたくさんできますように」
前に向き直ると、駅構内へと小走りした。
引っ越したばかりなので、小さなことが引っかかったりする。
柄にもなく神経質になっている自分に苦笑しつつ、パスケースをバッグから取り出し、改札を潜った。
各駅停車の電車に乗り、三つ目の駅で降りた。
ほんの十分ほどの距離であるが、その短い時間で市の中心部に辿り着く。ここは、商業施設やオフィスビルが立ち並ぶ、発展したエリアである。
「えっと……どこでランチしようかな」
駅ビルの九階に冬月書店本町駅店があり、十階が催事場、最上階の十一階がレストラン街だ。
(せっかくだから店の様子をそっと覗いてみて、その後レストラン街でお昼を食べよう)
そう決めると、早速エレベーターホールに向かった。
冬月書店本町駅店は街中の店だけあって、まあまあの客入りだ。
新しい副店長の顔は店長以外知らないはず。私は客としてぶらぶらしつつ、社員やアルバイトの接客ぶりをそれとなく窺った。
「いらっしゃいませ!」
「今日発売の新刊ですね。こちらにございます」
本部から聞いたとおり、若いスタッフが多い。
棚がきちんとしているし、接客態度もマル。各人がきびきびと働く様子を見て、胸をなでおろした。
「工夫しだいで、この店はもっと伸びる。よし、明日から私も頑張ろう」
やる気が湧いたところで、お腹がぐうと鳴る。空腹を思い出した私は、レストラン街に移動した。
日曜日のためかレストラン街はこんでいた。
「何を食べよう。とんかつとか、ステーキとか……がっつりしたものがいいんだけど」
フロアを一周したが、目当ての店はどこも満席で、順番待ちの人数も多い。仕方ないので、レストラン街はあきらめることにする。
スマートフォンで駅ビルのフロアマップを調べ、他の階にある飲食店を探す。
六階にカフェがあった。
ファッションフロアの奥にひっそりと存在する、小さな店だ。
「ここなら空いてるかも。行ってみよう」
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