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悪夢
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「どうしよう。あ、とりあえず智哉さんに連絡しなくちゃ」
自分のスマートフォンに持ち替えた。
本町に戻る前に、メゾン城田の公園に寄らなければ。土屋さんがまだ待っていたら大変だ。雨で体が冷えてしまう。
体調が悪いはずなのに、なぜ出歩いたりするのだろう。
「あ、もしもし。智哉さん、私です」
『ハル、今終わったのか』
智哉さんはすぐに電話に出てくれた。
「うん。でもちょっと、用事ができてしまって」
『用事?』
土屋さんからメールがきたことを話した。すると、智哉さんは即座に、
『行かなくていいよ。相手にするな』
「えっ……」
『こんな時間に呼び出すなんて、おかしなメールじゃないか。しかもどうして、あの公園なんだ。君がもうメゾン城田に住んでいないことは、古池から聞いてるはずだ』
「う、うん。そうなんだけど」
確かに変なメールだ。言われてみれば、何か、良くない感じがする。
『放っておけばいい。ハルは優しいから、彼女の体が心配なんだろうが、わがままに付き合うことはない。電話に出ないのは、君の優しさにつけ込んでるんだ。心配して、来てくれると思って』
「そっか……そうよね」
土屋さんなら、あり得る話だ。
『あの手の女は、絶対にリスクを負わない。体が冷える前に、さっさと家に帰るだろうから、安心していいよ。公園に行っても空振りだ』
辛辣な言い方だが、的を射ている。なぜ彼女の行動がそこまで読めるのか、少し不思議なくらい。
(もしかして、土屋さんみたいな女性と付き合った経験があるとか?)
『ハル、聞いてるか』
「あ、うん。ごめんなさい」
何を考えているのだ、私は。智哉さんが過去に誰と付き合おうと、今の私達には関係ない。
気を取り直して、彼の声に耳を傾ける。
『とにかく君は、僕のところにまっすぐ帰ること。本町駅には何時頃に着く?』
智哉さんが話を戻してしまった。土屋さんの件はもう終わりなのだ。
まっすぐに帰ると約束して、通話を切った。
「うーん……」
改札を通る前に、もう一度土屋さんに電話をかけたが、やはり応答しない。ショートメールを送ってみるが、まったく反応なしである。
「しょうがないよね」
急行電車が出たばかりのホームで、何となく時刻表を見ていたら、普通電車のほうが先に本町駅に着くと気付いた。次の急行が出るのは十五分も後だ。それに、普通電車は空いているので、たぶん座ることができる。
急いでホームを移動して、発車ギリギリの電車に乗った。案の定乗客が少なく、二人掛けの座席に一人で座れた。
「すごい雨……」
もやもやしながら、外を眺める。車窓を叩く雨が、ますます激しくなってきた。風が強く吹いて、まるで嵐のよう。
鳥宮優一朗が死んだのも、どしゃ降りの雨の中だった。指紋も足跡も洗い流してしまうような、雨風が吹き荒れていたのだ。
ちょうど、こんな風に――
「土屋さん、ホントにもう家に帰ったのかな」
彼女は今、不安定な状態だ。何をするか分からない。もしも今夜、万が一のことがあれば、私は一生後悔するだろう。
車内アナウンスが、間もなく緑大学前駅に到着すると告げた。
私は智哉さんに素早くメールを送り、折り畳み傘を握りしめる。電車を降りる直前、着信音が鳴るが、あえて無視した。
《 智哉さん、ごめんなさい。やっぱり少しだけ様子を見にいきます》
智哉さんの呆れ顔が目に浮かぶ。
それでも私は、土屋さんに呼び出された公園へと、雨の中を走り出した。
自分のスマートフォンに持ち替えた。
本町に戻る前に、メゾン城田の公園に寄らなければ。土屋さんがまだ待っていたら大変だ。雨で体が冷えてしまう。
体調が悪いはずなのに、なぜ出歩いたりするのだろう。
「あ、もしもし。智哉さん、私です」
『ハル、今終わったのか』
智哉さんはすぐに電話に出てくれた。
「うん。でもちょっと、用事ができてしまって」
『用事?』
土屋さんからメールがきたことを話した。すると、智哉さんは即座に、
『行かなくていいよ。相手にするな』
「えっ……」
『こんな時間に呼び出すなんて、おかしなメールじゃないか。しかもどうして、あの公園なんだ。君がもうメゾン城田に住んでいないことは、古池から聞いてるはずだ』
「う、うん。そうなんだけど」
確かに変なメールだ。言われてみれば、何か、良くない感じがする。
『放っておけばいい。ハルは優しいから、彼女の体が心配なんだろうが、わがままに付き合うことはない。電話に出ないのは、君の優しさにつけ込んでるんだ。心配して、来てくれると思って』
「そっか……そうよね」
土屋さんなら、あり得る話だ。
『あの手の女は、絶対にリスクを負わない。体が冷える前に、さっさと家に帰るだろうから、安心していいよ。公園に行っても空振りだ』
辛辣な言い方だが、的を射ている。なぜ彼女の行動がそこまで読めるのか、少し不思議なくらい。
(もしかして、土屋さんみたいな女性と付き合った経験があるとか?)
『ハル、聞いてるか』
「あ、うん。ごめんなさい」
何を考えているのだ、私は。智哉さんが過去に誰と付き合おうと、今の私達には関係ない。
気を取り直して、彼の声に耳を傾ける。
『とにかく君は、僕のところにまっすぐ帰ること。本町駅には何時頃に着く?』
智哉さんが話を戻してしまった。土屋さんの件はもう終わりなのだ。
まっすぐに帰ると約束して、通話を切った。
「うーん……」
改札を通る前に、もう一度土屋さんに電話をかけたが、やはり応答しない。ショートメールを送ってみるが、まったく反応なしである。
「しょうがないよね」
急行電車が出たばかりのホームで、何となく時刻表を見ていたら、普通電車のほうが先に本町駅に着くと気付いた。次の急行が出るのは十五分も後だ。それに、普通電車は空いているので、たぶん座ることができる。
急いでホームを移動して、発車ギリギリの電車に乗った。案の定乗客が少なく、二人掛けの座席に一人で座れた。
「すごい雨……」
もやもやしながら、外を眺める。車窓を叩く雨が、ますます激しくなってきた。風が強く吹いて、まるで嵐のよう。
鳥宮優一朗が死んだのも、どしゃ降りの雨の中だった。指紋も足跡も洗い流してしまうような、雨風が吹き荒れていたのだ。
ちょうど、こんな風に――
「土屋さん、ホントにもう家に帰ったのかな」
彼女は今、不安定な状態だ。何をするか分からない。もしも今夜、万が一のことがあれば、私は一生後悔するだろう。
車内アナウンスが、間もなく緑大学前駅に到着すると告げた。
私は智哉さんに素早くメールを送り、折り畳み傘を握りしめる。電車を降りる直前、着信音が鳴るが、あえて無視した。
《 智哉さん、ごめんなさい。やっぱり少しだけ様子を見にいきます》
智哉さんの呆れ顔が目に浮かぶ。
それでも私は、土屋さんに呼び出された公園へと、雨の中を走り出した。
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