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マンションへの引っ越し
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そうして四月を終えた。連休中に香月家はすることがあった。引っ越しだ。
父親は四月の異動で海外勤務となった。母親が遅れてついていくことになり、香月家は社宅を離れることにし、マンションを購入した。
遼と星だけが住むための、時々両親が帰ってきたときの宿泊所として、相模原市の新築高層マンションを手に入れたのだ。ひと月遅れて母親が父親のところへ行くタイミングで遼と星もマンションへ引っ越すことになった。
家財はかなり処分した。三LDKのマンションが狭くならないよう可能な限り家具は絞り込んだ。母親を含めた三人で引っ越しを済ませた。中層階の東向の部屋だった。
「結構眺め良いじゃん」星は嬉しそうだった。
母親も満足している。数日で子供二人を残して父親のところへ行くのだが、この子たちなら大丈夫と子供二人を信頼していた。
「二人で仲良くね」
「それは遼に言ってよ」星は笑う。
「星もこれを機に家事をこなせるようになりなさい」
「はあい」星が適当に返事をするのは日常だった。
そして母親も旅立ち、遼と星の二人暮らしが始まった。
連休明けからマンションからの登校となった。通学時間は三十分程度だ。
マンションの住人と顔を合わすことは滅多にない。エレベーターで乗り合わせない限りひとの姿を見ることはなかった。
同じ階の住人の顔を見かけるまでに数日を要した。だからどういう人間が暮らしているのか遼は知らなかったし、興味もなかった。そういう情報は星の方が集めてきた。
「双子の小学生に会ったわ。私たちと同じ兄妹、二年生だって。とても可愛いの」
「ふうん」
夕食は二人で食べる。料理をするのは遼のことが多かった。遼の方が料理ができるし、マンションに帰ってくるのも早いからだ。
星は相変わらず「助っ人団」とかいう得体の知れない部活をしていたし、友だちと寄り道するのが当たり前になっていた。
「それから、D組担任の水沢先生にも会った」
「古文の先生だよな?」
「そうよ。先生によると学校関係者が結構多いみたいよ、このマンション」
「通勤通学に手頃なところにあるしな。オレたちもそういう理由でここにしたのだし」
朝は一緒にマンションを出て登校、帰りは別々になることが多い、という兄妹だけの生活が始まった。
休日は周囲の散策を兼ねて二人で出かけた。星が部活をしていない日に限っての兄妹デートだった。
一学期中間試験の中休みにあたる日曜日、二人は自宅で試験勉強をしていた。といっても、遼が星の勉強をみるスタイルだった。
星は暗記は得意だったがロジカルに考える能力が欠けていた。計算もできるが式を作るのが苦手で、文章問題や文で回答する形式の問題になるとからっきし駄目になるのだ。
「何をやっているのかイメージがわかないよ」星は嘆いた。
「これは学習障害の一種だからな、お前は努力もしているし、よくやっているよ」
「遼の慰めも聞きあきたよ。その頭の半分でも私にくれたら良かったのに。神様は不公平だ」
「オレはお前のコミュニケーション能力が羨ましいけどな」
「そんなの、能力ってほどのものじゃないでしょ、遼のはただ単に他人に興味がないだけ」
何度も同じ話をしている。昼下がりになったので、気分転換を兼ねてランチは外食にした。
マンションの中は人影はない。しかし外へ出てみると休日の人混みはそれなりにあった。
「今日はどこにするか?」
「あっちのファミレスが良いよ」
「どこにでもあるチェーン店だぞ」
「それが良いんじゃない、気軽で。ひとりで入ることもあるかもしれないし」
「お前がひとりで外食するなんて想像もできないけどな」
父親は四月の異動で海外勤務となった。母親が遅れてついていくことになり、香月家は社宅を離れることにし、マンションを購入した。
遼と星だけが住むための、時々両親が帰ってきたときの宿泊所として、相模原市の新築高層マンションを手に入れたのだ。ひと月遅れて母親が父親のところへ行くタイミングで遼と星もマンションへ引っ越すことになった。
家財はかなり処分した。三LDKのマンションが狭くならないよう可能な限り家具は絞り込んだ。母親を含めた三人で引っ越しを済ませた。中層階の東向の部屋だった。
「結構眺め良いじゃん」星は嬉しそうだった。
母親も満足している。数日で子供二人を残して父親のところへ行くのだが、この子たちなら大丈夫と子供二人を信頼していた。
「二人で仲良くね」
「それは遼に言ってよ」星は笑う。
「星もこれを機に家事をこなせるようになりなさい」
「はあい」星が適当に返事をするのは日常だった。
そして母親も旅立ち、遼と星の二人暮らしが始まった。
連休明けからマンションからの登校となった。通学時間は三十分程度だ。
マンションの住人と顔を合わすことは滅多にない。エレベーターで乗り合わせない限りひとの姿を見ることはなかった。
同じ階の住人の顔を見かけるまでに数日を要した。だからどういう人間が暮らしているのか遼は知らなかったし、興味もなかった。そういう情報は星の方が集めてきた。
「双子の小学生に会ったわ。私たちと同じ兄妹、二年生だって。とても可愛いの」
「ふうん」
夕食は二人で食べる。料理をするのは遼のことが多かった。遼の方が料理ができるし、マンションに帰ってくるのも早いからだ。
星は相変わらず「助っ人団」とかいう得体の知れない部活をしていたし、友だちと寄り道するのが当たり前になっていた。
「それから、D組担任の水沢先生にも会った」
「古文の先生だよな?」
「そうよ。先生によると学校関係者が結構多いみたいよ、このマンション」
「通勤通学に手頃なところにあるしな。オレたちもそういう理由でここにしたのだし」
朝は一緒にマンションを出て登校、帰りは別々になることが多い、という兄妹だけの生活が始まった。
休日は周囲の散策を兼ねて二人で出かけた。星が部活をしていない日に限っての兄妹デートだった。
一学期中間試験の中休みにあたる日曜日、二人は自宅で試験勉強をしていた。といっても、遼が星の勉強をみるスタイルだった。
星は暗記は得意だったがロジカルに考える能力が欠けていた。計算もできるが式を作るのが苦手で、文章問題や文で回答する形式の問題になるとからっきし駄目になるのだ。
「何をやっているのかイメージがわかないよ」星は嘆いた。
「これは学習障害の一種だからな、お前は努力もしているし、よくやっているよ」
「遼の慰めも聞きあきたよ。その頭の半分でも私にくれたら良かったのに。神様は不公平だ」
「オレはお前のコミュニケーション能力が羨ましいけどな」
「そんなの、能力ってほどのものじゃないでしょ、遼のはただ単に他人に興味がないだけ」
何度も同じ話をしている。昼下がりになったので、気分転換を兼ねてランチは外食にした。
マンションの中は人影はない。しかし外へ出てみると休日の人混みはそれなりにあった。
「今日はどこにするか?」
「あっちのファミレスが良いよ」
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