気まぐれの遼 二年A組

hakusuya

文字の大きさ
7 / 30

マンションへの引っ越し

しおりを挟む
 そうして四月を終えた。連休中に香月かづき家はすることがあった。引っ越しだ。
 父親は四月の異動で海外勤務となった。母親が遅れてついていくことになり、香月家は社宅を離れることにし、マンションを購入した。
 りょうせいだけが住むための、時々両親が帰ってきたときの宿泊所として、相模原市の新築高層マンションを手に入れたのだ。ひと月遅れて母親が父親のところへ行くタイミングで遼と星もマンションへ引っ越すことになった。
 家財はかなり処分した。三LDKのマンションが狭くならないよう可能な限り家具は絞り込んだ。母親を含めた三人で引っ越しを済ませた。中層階の東向の部屋だった。
「結構眺め良いじゃん」星は嬉しそうだった。
 母親も満足している。数日で子供二人を残して父親のところへ行くのだが、この子たちなら大丈夫と子供二人を信頼していた。
「二人で仲良くね」
「それは遼に言ってよ」星は笑う。
「星もこれを機に家事をこなせるようになりなさい」
「はあい」星が適当に返事をするのは日常だった。
 そして母親も旅立ち、遼と星の二人暮らしが始まった。
 連休明けからマンションからの登校となった。通学時間は三十分程度だ。
 マンションの住人と顔を合わすことは滅多にない。エレベーターで乗り合わせない限りひとの姿を見ることはなかった。
 同じ階の住人の顔を見かけるまでに数日を要した。だからどういう人間が暮らしているのか遼は知らなかったし、興味もなかった。そういう情報は星の方が集めてきた。
「双子の小学生に会ったわ。私たちと同じ兄妹、二年生だって。とても可愛いの」
「ふうん」
 夕食は二人で食べる。料理をするのは遼のことが多かった。遼の方が料理ができるし、マンションに帰ってくるのも早いからだ。
 星は相変わらず「助っ人団」とかいう得体の知れない部活をしていたし、友だちと寄り道するのが当たり前になっていた。
「それから、D組担任の水沢先生にも会った」
「古文の先生だよな?」
「そうよ。先生によると学校関係者が結構多いみたいよ、このマンション」
「通勤通学に手頃なところにあるしな。オレたちもそういう理由でここにしたのだし」
 朝は一緒にマンションを出て登校、帰りは別々になることが多い、という兄妹だけの生活が始まった。
 休日は周囲の散策を兼ねて二人で出かけた。星が部活をしていない日に限っての兄妹デートだった。
 一学期中間試験の中休みにあたる日曜日、二人は自宅で試験勉強をしていた。といっても、遼が星の勉強をみるスタイルだった。
 星は暗記は得意だったがロジカルに考える能力が欠けていた。計算もできるが式を作るのが苦手で、文章問題や文で回答する形式の問題になるとからっきし駄目になるのだ。
「何をやっているのかイメージがわかないよ」星は嘆いた。
「これは学習障害の一種だからな、お前は努力もしているし、よくやっているよ」
「遼の慰めも聞きあきたよ。その頭の半分でも私にくれたら良かったのに。神様は不公平だ」
「オレはお前のコミュニケーション能力が羨ましいけどな」
「そんなの、能力ってほどのものじゃないでしょ、遼のはただ単に他人に興味がないだけ」
 何度も同じ話をしている。昼下がりになったので、気分転換を兼ねてランチは外食にした。
 マンションの中は人影はない。しかし外へ出てみると休日の人混みはそれなりにあった。
「今日はどこにするか?」
「あっちのファミレスが良いよ」
「どこにでもあるチェーン店だぞ」
「それが良いんじゃない、気軽で。ひとりで入ることもあるかもしれないし」
「お前がひとりで外食するなんて想像もできないけどな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...