気まぐれの遼 二年A組

hakusuya

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帰りの女子会に付き合う

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 せいたちの練習が終わり、下校したのは六時前だった。
 星が同じクラスの女子三人と談笑しながら歩く後ろをりょうはひとりで歩いた。
「遼、夕食食べて帰らない?」星が振り返って言った。「今から食事の用意するのも大変でしょ?」
「ああ、そうだな」
 妹がそう言うのは自分に気を遣っているからだと遼は思った。
 しかし自宅近くで外食するのかと思ったら、学校最寄駅近くで食べるらしい。しかも友人と一緒にだ。
 それにはコミュニケーションに難のある遼は一瞬躊躇したが、さすがに星を困らせるわけにもいかないのでひきつった笑みをどうにか浮かべて了解した。
 かくして、おそらく星たちが行きつけているファミレスに五人で入ることになった。それは例の小早川明音こばやかわあかねがバイトしているのと同じチェーン店だった。
 もっと違うところを探せば良いのにと遼は思うが口には出せない。
 女子たちはとにかくお喋りができる店ならどこでも良いのだ。行きつけの店の方が安心もできるのだろう。
 六人掛けのテーブルが用意され、そこに遼と星が横並びに、星のクラスメイト女子三人が対面に座った。
 その女子三人は何となく見覚えはあるものの名前も知らない者たちだった。名前を覚えられない遼にとっては珍しくないことだ。
「市川です」
「船橋です」
「松戸です」
 三人は自己紹介した。
「ごめん、人の名前覚えられない。今から謝っておくよ」
「えええ、覚えやすいじゃん」星が呆れた。
 どこが覚えやすいのか遼にはわからなかった。
 三人とも高等部入学生らしい。H組は高等部入学生の方が明るく、元気が良いとのことだ。
「中高一貫生とも仲良くやってるよ」言い訳するわけでもなく星は笑った。
「お前はだいたいにおいて、誰とでも仲良くなるしな」遼は言った。
「ところで、フットサル、参考になった?」
「ああ、少しはね」
「ゴレイロ以外は女子四人にした方が得点力は上がるよ」
「男子は一度に二名までしか出られないと制限をかけるから二名出したくなるが、シュートでゴールインしても得点として認められないなら意味ないな」
「うちは星川ほしかわくんがゴレイロの時に鮫島さめじまくんがフィクソで出ることがあるけど、たいてい守備固めだよね」
「それって、女子がみなよく動けるからできるんだよな」
「誰かがリーダーシップを発揮してちゃんと教えればできるよ」
「少なくともA組フットサルチームに適任者はいないな」
「遼はコミュ障だものね」遼は黙って頷いた。
 二人のやりとりを女子三人が見ている。
「H組は星川くんとかいるからさ、ね」と女子の一人に同意を求めた。
「まあ、説明はわかりやすくて、うまいよね」
「本音が見えないのが不気味だけど」
「え、何か裏があるって言うの?」星はキョトンとした目を向けた。
「星川くん、いつも芝居がかっているし」
「よく喋るのは逆に正体を明かさないためのような気がする」
「そうなのかあ」星は感心していた。
「友だちに恵まれているな」
 三人の女子は名前が覚えられなかったが、一人ずつ特徴が違っていた。
 ひとりは話題を提供する女子。リーダー格。
 別のひとりは冷静に見る女子。参謀格。
 そして三人目は人懐こい女子。明るさを提供する。
 見事に役割分担されていて、星にとっては三銃士のようだと遼は思った。
「そういえば連休中に引っ越しをしたのでしょ?」リーダー格が話題を変えた。
「え、行ってみたい♡ 高層マンションなんでしょ?」明るく人懐こい女子がテンションを上げる。
「行きたい気はするけれど迷惑にはならないかしら?」冷静女子が気を遣った。
「うん、来て来て」星は大歓迎だ。「いいよね? 遼」
「あ、ああ」遼はあやふやに答えた。「何ならオレはどこか図書館にでも行っているし」
「ええ! せっかく美女三人が来るのに手料理をふるまってくれないの?」
「え、いいの?」
「食べたい……、兄上の手料理」
「ほんとうに迷惑じゃないかしら……」
「そんな手のこんだものは作れないけどな」仕方ない作るかという態度を遼は見せた。
 こうしていつも星のペースに巻き込まれる。それもまたありなのかな、と遼は思うようにしている。
 女四人は姦しく日程調整をしていた。
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