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「よーっし授業始めるぞー!」
起立、礼。で始まったのは古典の授業だった。
「宿題の解答を黒板に書いて行ってくれ。じゃあこの列!」
指名されたのは駿介の列だった。しかも駿介は席が一番後ろなので最後の一番難しい問題である。
「神様お願いします!」
そう言ってバッグを勢いよく開けた。勿論期待なんかしていなかった。中には古典の教科書とノートしか入っていなかった。
「ふっ、終わった……」
そう言って机の中から筆箱を引き抜いたとき、ぱたっと何かが床に落ちた。
(ん?)
そこに落ちていたのは駿介の古典のワークである。
昨日確かに解いて持って来るのを忘れたワークが、何故かいじっていない机の中にあった。筆箱はいつも置き勉している。
(どうして?)
駿介の脳裏に無限の疑問が浮かび上がる。
「今日の俺は不幸だったから、神様が?」
とりあえず、結論を出した駿介は黒板に解答を書き写し始めた。
「あれぇ?確かに今日ワークを持って来たのにないなぁ」
隣の席の真面目な女子の佐藤さんから声が漏れた。
優等生の佐藤さんでも忘れ物をすることもあるんだなと駿介は思った。
今度は古典の授業が終わって、トイレに行っている間に筆箱を盗まれたことに気づく。
辺りを探すがどこにも無かった。そうしている間も奴らは駿介の事をずっと笑っていた。あいつらに笑われるのはもう慣れた。だが、周りの女子から笑われるのには心がいくら頑丈でも持たなかった。
仕方なく駿介は彼らに歩み寄り言った。
「おい、筆箱何処だよ」
「はあ?しれねえよ。てかお前誰?」
周囲でどっと笑いが込み上がる。どうしてこんな辱めを受けなければいけないのかと思うと泣きそうになって来るので、駿介は感情を殺した。
「はあ……もういいよ。そんなにいたずらするのが楽しいか」
そう言って駿介は仕方なくその場を立ち去った。
諦めが早いのは今まで粘っていい結果になった事が無いからだ。大抵打ちのめされて、結局は諦める。
駿介は自分の席に座ると耳を塞いで机に伏せた。何処も見たくなかったけど、周りがどういう状況なのかは見ずとも想像できてしまう。どうして自分はこんなにも弱いのかと心に問いかける。
授業が始まった。
勿論僕はノートに何も書けない。授業を聞くことさえも嫌になって、このまま寝てしまおうと思った。でも、なんか負けた様な感じがするから、先生の言っていることでけでも聞くことにした。
「柏木くん?筆箱また盗られちゃったの?」
ヒソヒソ声で話しかけて来たのは隣の席の佐藤さん。彼女は誰にでも優しくできる素晴らしい人かもしれない、でも駿介はそんな人ほど信じれなくなってしまっていた。
「うん、そうだよ。仕方ないよね」
そうやって一方的に会話を打ち切ろうとするが。
「じゃあ、これ貸して上げる」
そう言って渡された物はシャーペンと消しゴムだった。
「いや、これないと困るだろ……」
「いいんだよ。シャーペンは予備だし、消しゴムはあまり使わないから」
そう言ってくれた佐藤さんはにこっと駿介に笑顔を向けた。その笑顔に駿介は心を奪われそうになるが、そんなことには絶対にならないのである。駿介は感謝し、それらを受け取った。
佐藤さんはすべてが完璧な人だった。性格から顔立ちまで、クラスの女子の憧れであり、男子からも多大な人気を集ている。でも、駿介はそうは思わなかった。いじめを受けて一年も経った駿介に信じられる人はここにはいないのだ。完璧な人などいない、必ず裏があるそう思ってここ最近は佐藤さんと接して来た。
でも、駿介にとって信用できる人はこの学校に一人だけいた。幼稚園からの幼馴染の女の子。高校もクラスは違えど一緒だった。彼女は長い付き合いなため信じることができたのだ。
学校が終わった。教室からは生徒が次々に出て行く。駿介はタイミングを見計らって佐藤さんに借りていた文房具を返した。なんやかんやで、最後まで借りてしまっていた。
「いいのよ全然。困ったときは頼ってね、隣の席のなんだから」
彼女は笑顔でそう言うと、長い黒髪を靡かせ教室を去っていった。
誰も居なくなった教室で駿介は自分の筆箱を探した。前回は教壇の中にあったが今回は無かった。いじめっ子どもの席を片っ端から調べるが全く見つからない。諦めかけたその時だった。
「しゅん?探しものはこれか?」
声の方を振り向くと通学鞄を背負った女の子があった。肩先までかかった黒髪は昔から変わって無い。
「華花……」
「これ、しゅんのでしょ?」
そう言いながら持ち上げたのは駿介の筆箱だった。
「え、どこにあったの?」
「そこのゴミ箱」
「はぁー。そこだったのか」
駿介はとぼとぼと華花の前に近づいて行った。
「ありがとう……」
「うん、まだいじめられてんの?」
「なかなかしぶとい奴らでな……」
「そう……」
少し間が開いて気まずい雰囲気が流れた。
「華花部活は?」
「え?ああ、今日は休みだけど。あ!久しぶりに一緒に帰る?」
輝く瞳は駿介に向けられる。ただ、駿介はその瞳に応えられるかは心配だった。
「やめたほうがいいよ……華花も巻き込みたくないし」
「大丈夫!同じクラスじゃないんだし!さ、帰ろう」
結局駿介は華花と一緒に帰る事になった。
起立、礼。で始まったのは古典の授業だった。
「宿題の解答を黒板に書いて行ってくれ。じゃあこの列!」
指名されたのは駿介の列だった。しかも駿介は席が一番後ろなので最後の一番難しい問題である。
「神様お願いします!」
そう言ってバッグを勢いよく開けた。勿論期待なんかしていなかった。中には古典の教科書とノートしか入っていなかった。
「ふっ、終わった……」
そう言って机の中から筆箱を引き抜いたとき、ぱたっと何かが床に落ちた。
(ん?)
そこに落ちていたのは駿介の古典のワークである。
昨日確かに解いて持って来るのを忘れたワークが、何故かいじっていない机の中にあった。筆箱はいつも置き勉している。
(どうして?)
駿介の脳裏に無限の疑問が浮かび上がる。
「今日の俺は不幸だったから、神様が?」
とりあえず、結論を出した駿介は黒板に解答を書き写し始めた。
「あれぇ?確かに今日ワークを持って来たのにないなぁ」
隣の席の真面目な女子の佐藤さんから声が漏れた。
優等生の佐藤さんでも忘れ物をすることもあるんだなと駿介は思った。
今度は古典の授業が終わって、トイレに行っている間に筆箱を盗まれたことに気づく。
辺りを探すがどこにも無かった。そうしている間も奴らは駿介の事をずっと笑っていた。あいつらに笑われるのはもう慣れた。だが、周りの女子から笑われるのには心がいくら頑丈でも持たなかった。
仕方なく駿介は彼らに歩み寄り言った。
「おい、筆箱何処だよ」
「はあ?しれねえよ。てかお前誰?」
周囲でどっと笑いが込み上がる。どうしてこんな辱めを受けなければいけないのかと思うと泣きそうになって来るので、駿介は感情を殺した。
「はあ……もういいよ。そんなにいたずらするのが楽しいか」
そう言って駿介は仕方なくその場を立ち去った。
諦めが早いのは今まで粘っていい結果になった事が無いからだ。大抵打ちのめされて、結局は諦める。
駿介は自分の席に座ると耳を塞いで机に伏せた。何処も見たくなかったけど、周りがどういう状況なのかは見ずとも想像できてしまう。どうして自分はこんなにも弱いのかと心に問いかける。
授業が始まった。
勿論僕はノートに何も書けない。授業を聞くことさえも嫌になって、このまま寝てしまおうと思った。でも、なんか負けた様な感じがするから、先生の言っていることでけでも聞くことにした。
「柏木くん?筆箱また盗られちゃったの?」
ヒソヒソ声で話しかけて来たのは隣の席の佐藤さん。彼女は誰にでも優しくできる素晴らしい人かもしれない、でも駿介はそんな人ほど信じれなくなってしまっていた。
「うん、そうだよ。仕方ないよね」
そうやって一方的に会話を打ち切ろうとするが。
「じゃあ、これ貸して上げる」
そう言って渡された物はシャーペンと消しゴムだった。
「いや、これないと困るだろ……」
「いいんだよ。シャーペンは予備だし、消しゴムはあまり使わないから」
そう言ってくれた佐藤さんはにこっと駿介に笑顔を向けた。その笑顔に駿介は心を奪われそうになるが、そんなことには絶対にならないのである。駿介は感謝し、それらを受け取った。
佐藤さんはすべてが完璧な人だった。性格から顔立ちまで、クラスの女子の憧れであり、男子からも多大な人気を集ている。でも、駿介はそうは思わなかった。いじめを受けて一年も経った駿介に信じられる人はここにはいないのだ。完璧な人などいない、必ず裏があるそう思ってここ最近は佐藤さんと接して来た。
でも、駿介にとって信用できる人はこの学校に一人だけいた。幼稚園からの幼馴染の女の子。高校もクラスは違えど一緒だった。彼女は長い付き合いなため信じることができたのだ。
学校が終わった。教室からは生徒が次々に出て行く。駿介はタイミングを見計らって佐藤さんに借りていた文房具を返した。なんやかんやで、最後まで借りてしまっていた。
「いいのよ全然。困ったときは頼ってね、隣の席のなんだから」
彼女は笑顔でそう言うと、長い黒髪を靡かせ教室を去っていった。
誰も居なくなった教室で駿介は自分の筆箱を探した。前回は教壇の中にあったが今回は無かった。いじめっ子どもの席を片っ端から調べるが全く見つからない。諦めかけたその時だった。
「しゅん?探しものはこれか?」
声の方を振り向くと通学鞄を背負った女の子があった。肩先までかかった黒髪は昔から変わって無い。
「華花……」
「これ、しゅんのでしょ?」
そう言いながら持ち上げたのは駿介の筆箱だった。
「え、どこにあったの?」
「そこのゴミ箱」
「はぁー。そこだったのか」
駿介はとぼとぼと華花の前に近づいて行った。
「ありがとう……」
「うん、まだいじめられてんの?」
「なかなかしぶとい奴らでな……」
「そう……」
少し間が開いて気まずい雰囲気が流れた。
「華花部活は?」
「え?ああ、今日は休みだけど。あ!久しぶりに一緒に帰る?」
輝く瞳は駿介に向けられる。ただ、駿介はその瞳に応えられるかは心配だった。
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