3 / 4
3
しおりを挟む
夢の中で神様が出てきた。
「あなたは一体誰なんです?」
「わし?そんなもの見て分かるだろう。神じゃ」
「何で神?ここはどこですか?」
「知りたがり屋さんじゃのお。まあそんな事はどうでもいい。お主のか通学鞄の外ポケットに入っているお守りは、願った不幸を無いものにできる。お前はもう不幸に十分耐えた。もう楽になって良い」
夢は一瞬。駿介は目覚めると、お守りがあるか確るが、昨日自分が確かに入れた鞄の外ポケットにきちんと入っていた。
「不幸を無いものに……か」
駿介はそう呟くと身支度を始めた。
自転車に漕ぎながら駿介は考えた。忘れたはずの古典のワークが何故か机の中にあったのは、自分が無意識のうちにお守りに願い事をしていたからではないだろうか。
夢のせいもあって早く朝を向かえた駿介はいつもより早く学校に着いていた。
靴箱を見た感じ、朝練の人以外はまだ来てないようだった。
駿介はゆったりとした気持ちで教室のドアを開けた。すると、誰も居ないはずの教室に人がいた。しかも駿介の席で何かをやっていた。
「佐藤さん?」
駿介はその名を呼んで、自分の席に歩み寄る。
「か、柏木くん?!」
彼女は顔を真っ赤にして、びっくりしたように飛び上がった。
「僕の席で一体何を──」
自分の席の惨状を目の当たりにした駿介はすべてを悟った。
「ご、ごめんね。ほっとく訳にもいかなくって、何もしないってのもあれだったし……」
彼女は悪事がバレてしまったかのような弁明をしたが、実際はそうでは無かった。
駿介の机には数々の暴言がチョークでくっきりと書かれていた。それを佐藤さんは消そうとしてくれていたのだ。
こんな事、アニメや漫画の話だけの話だと思っていた。でもそうじゃ無かった……
「佐藤さん。ありがとう」
しばらく沈黙が続いてから駿介は口を開いた。
こんな酷い惨状に気づいた。それよりも自分の日常を守ろうとしてくれた人がいた事の方が駿介を動かした。
「いつから?いつからこんな事やってたの?」
「二ヶ月まえ……」
「ありがとう。もうこんな事しなくていい。気づけなくてごめん」
「でも……」
自分が虐められている事で迷惑しているのは自分だけだと思っていた。でも違った。周りにこんなにも優しい人がいて、その人にも迷惑がかかっていることに怒りを覚えた。
「今度からは自分で早く来てやるよ」
今日もそれとなくいじめを受けいざ帰宅しようとするとことだった。
「柏木くーん、ちょっとだけ付いて来てくれる?」
そう言って駿介の肩にそっと冷たい手を乗せる。彼は僕をいじめ始めた最初の人物で、その周辺のリーダーだ。
「わ、分かった」
連れて来られた場所はやはり体育館裏だった。
「よーっし皆主役のご登場だぞ!」
そう言って駿介を皆に見せびらかすように歓迎する。
いつものメンバー五人と隣のクラスの人が二人いた。
「えーっとね、取引をしたいんだ。君が僕に二千。二千円だけでいいんだよ。それだけくれればもういじめ止めてあげる」
そう言いながら駿介の顔を覗き込む。
気持ち悪いほど歪んでしまっているその顔に駿介は寒気を覚える。
これはいじめにある典型的な例だった。なぜ今までされてなかったのかも分からない。これに断わっても、はたまた受け入れても結果は同じだと分かっていた。でも、僕の手は勝手に動いてしまっていた。
気づけば財布を取り出し、彼に震える手を抑えて二千円を手渡した。
「うわぁ!ありがとうねー!もう決していじめなんかしないから!」
そう言って野球部で鍛えられた握力で駿介の肩を笑顔で掴んで壁に突き飛ばした。
「──っ」
「じゃあ。お前ら行くぞー」
甲高い笑い声を響かせながら彼らはこの場を去って行った。
駿介は自分の無力さを恨んだ。自分が強かったらあいつらに目にものを見せれたのに……と。
しばらく壁に凭れて蹲って絶望に浸っていると、体育館の開いていた出入り口から、バスケットボールが正面の塀にぶつかってこっちに転がって来た。
「あっ、すみませーんって、あ」
バスケットボールのユニフォーム姿の彼女を駿介は知っていた。
「華花……」
震える様な小さな声で呟いた自分の声を聞いて、自分が泣いている事に気づいて、顔を伏せる。
「しゅん……大丈夫?今度は何されたの?」
駆け寄って来て華花は駿介の隣に座った。
部活に励んでいたせいか、彼女からほんのり熱を感じる。
「ごめんね。何もしてあげられなくて、でも悲しくなったら言ってね。私はしゅんの味方だから」
あれから一週間が経った。駿介の心は冷たく凍ってしまっていた。いじめられるために学校に行き、学校から帰る。一日学校に居ても誰とも喋らず帰ることさえあった。
駿介は鞄の外ポケットから古くなっているお守りを取り出した。そして、何日か前に神様にあった夢を思い出した。
「これを使えば今の生活から……」
そう呟くと、駿介は無意識のうちに祈っていた。
これからずっといじめられませんように
「あなたは一体誰なんです?」
「わし?そんなもの見て分かるだろう。神じゃ」
「何で神?ここはどこですか?」
「知りたがり屋さんじゃのお。まあそんな事はどうでもいい。お主のか通学鞄の外ポケットに入っているお守りは、願った不幸を無いものにできる。お前はもう不幸に十分耐えた。もう楽になって良い」
夢は一瞬。駿介は目覚めると、お守りがあるか確るが、昨日自分が確かに入れた鞄の外ポケットにきちんと入っていた。
「不幸を無いものに……か」
駿介はそう呟くと身支度を始めた。
自転車に漕ぎながら駿介は考えた。忘れたはずの古典のワークが何故か机の中にあったのは、自分が無意識のうちにお守りに願い事をしていたからではないだろうか。
夢のせいもあって早く朝を向かえた駿介はいつもより早く学校に着いていた。
靴箱を見た感じ、朝練の人以外はまだ来てないようだった。
駿介はゆったりとした気持ちで教室のドアを開けた。すると、誰も居ないはずの教室に人がいた。しかも駿介の席で何かをやっていた。
「佐藤さん?」
駿介はその名を呼んで、自分の席に歩み寄る。
「か、柏木くん?!」
彼女は顔を真っ赤にして、びっくりしたように飛び上がった。
「僕の席で一体何を──」
自分の席の惨状を目の当たりにした駿介はすべてを悟った。
「ご、ごめんね。ほっとく訳にもいかなくって、何もしないってのもあれだったし……」
彼女は悪事がバレてしまったかのような弁明をしたが、実際はそうでは無かった。
駿介の机には数々の暴言がチョークでくっきりと書かれていた。それを佐藤さんは消そうとしてくれていたのだ。
こんな事、アニメや漫画の話だけの話だと思っていた。でもそうじゃ無かった……
「佐藤さん。ありがとう」
しばらく沈黙が続いてから駿介は口を開いた。
こんな酷い惨状に気づいた。それよりも自分の日常を守ろうとしてくれた人がいた事の方が駿介を動かした。
「いつから?いつからこんな事やってたの?」
「二ヶ月まえ……」
「ありがとう。もうこんな事しなくていい。気づけなくてごめん」
「でも……」
自分が虐められている事で迷惑しているのは自分だけだと思っていた。でも違った。周りにこんなにも優しい人がいて、その人にも迷惑がかかっていることに怒りを覚えた。
「今度からは自分で早く来てやるよ」
今日もそれとなくいじめを受けいざ帰宅しようとするとことだった。
「柏木くーん、ちょっとだけ付いて来てくれる?」
そう言って駿介の肩にそっと冷たい手を乗せる。彼は僕をいじめ始めた最初の人物で、その周辺のリーダーだ。
「わ、分かった」
連れて来られた場所はやはり体育館裏だった。
「よーっし皆主役のご登場だぞ!」
そう言って駿介を皆に見せびらかすように歓迎する。
いつものメンバー五人と隣のクラスの人が二人いた。
「えーっとね、取引をしたいんだ。君が僕に二千。二千円だけでいいんだよ。それだけくれればもういじめ止めてあげる」
そう言いながら駿介の顔を覗き込む。
気持ち悪いほど歪んでしまっているその顔に駿介は寒気を覚える。
これはいじめにある典型的な例だった。なぜ今までされてなかったのかも分からない。これに断わっても、はたまた受け入れても結果は同じだと分かっていた。でも、僕の手は勝手に動いてしまっていた。
気づけば財布を取り出し、彼に震える手を抑えて二千円を手渡した。
「うわぁ!ありがとうねー!もう決していじめなんかしないから!」
そう言って野球部で鍛えられた握力で駿介の肩を笑顔で掴んで壁に突き飛ばした。
「──っ」
「じゃあ。お前ら行くぞー」
甲高い笑い声を響かせながら彼らはこの場を去って行った。
駿介は自分の無力さを恨んだ。自分が強かったらあいつらに目にものを見せれたのに……と。
しばらく壁に凭れて蹲って絶望に浸っていると、体育館の開いていた出入り口から、バスケットボールが正面の塀にぶつかってこっちに転がって来た。
「あっ、すみませーんって、あ」
バスケットボールのユニフォーム姿の彼女を駿介は知っていた。
「華花……」
震える様な小さな声で呟いた自分の声を聞いて、自分が泣いている事に気づいて、顔を伏せる。
「しゅん……大丈夫?今度は何されたの?」
駆け寄って来て華花は駿介の隣に座った。
部活に励んでいたせいか、彼女からほんのり熱を感じる。
「ごめんね。何もしてあげられなくて、でも悲しくなったら言ってね。私はしゅんの味方だから」
あれから一週間が経った。駿介の心は冷たく凍ってしまっていた。いじめられるために学校に行き、学校から帰る。一日学校に居ても誰とも喋らず帰ることさえあった。
駿介は鞄の外ポケットから古くなっているお守りを取り出した。そして、何日か前に神様にあった夢を思い出した。
「これを使えば今の生活から……」
そう呟くと、駿介は無意識のうちに祈っていた。
これからずっといじめられませんように
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/20:『にんぎょう』の章を追加。2025/12/27の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/19:『ひるさがり』の章を追加。2025/12/26の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/18:『いるみねーしょん』の章を追加。2025/12/25の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/17:『まく』の章を追加。2025/12/24の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/16:『よってくる』の章を追加。2025/12/23の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/15:『ちいさなむし』の章を追加。2025/12/22の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる